イカ毒を解毒する映画『キラーカブトガニ』感想文

《推定睡眠時間:15分》

相変わらず『スプラトゥーン3』に激ハマりしていてどのくらいハマっているかというと毎週金曜夜は新作映画を観てから帰るのを8年弱ものあいだ習慣にしていたのに「もうそういうのよくない? 早く家帰ってスプラやらない?」と脳内のイカが囁きかけてきてしまったし脳内イカに思考領域を塗りつぶされる前に無事映画館に辿り着くことはできたものの家に帰ったらとりあえずPC開いて感想を書こうとして挫折してツイッターやるみたいないつものパターンに入る前にSWITCHの電源を入れコントローラーを握りそれが夜のそうねだいたい11時とかなのですがSWITCHスリープ状態にして今これ書き始めたの早朝の4時です。

ダメだ! 立ち直ろう! つーわけでねイカなんかやってる場合じゃないんですよカニですよカニ、時代はカニ。それもカブトガニときましたよ。最近の映画ではさかなクンの伝記映画『さかなのこ』でのん演じるティーンエイジャーさかなクンが一緒にお散歩していたことも記憶に新しいカブトガニ、これは時代がカブトガニを求めていると言わざるを得ない。たぶんスプラの次回作にもカブキモノのカブトガニみたいなキャラが出てくるだろう。

さて映画が始まると浜辺に響く気持ちよさそうな鼻歌、ははぁこれはきっとキラー映画の定番の最初のシーンでキラー生物に殺される人の鼻歌であろうと瞬時に判断したさすがの俺であったがやがて画面に入ってきたのはオールドスクールなラジコンみたいな動きをするカブトガニ、鼻歌を歌っているのは浜辺を平和にお散歩中のカブトガニであった。だがそんなことに驚いている暇はない。次の瞬間、浜辺に建つ原発建屋三棟が突如として火を噴き相次いで爆発してしまったのだ。なるほどねそれで被爆したカブトガニはキラーカブトガニに突然変異してしまったんだってなるかよそんなもん。なるか、映画だし。

原発のエクスプロージョンとかいう殺人カブトガニどころではない歴史的大事件が勃発してしまったアメリカであったが映画評論家・町山智浩の著書に『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』とあるように自分の住む町の外はアメリカとして認識しないアメリカの人たちなのでまるで原発大惨事などなかったかのようにアメリカのどこかの町は平和そのもの。自宅のガレージに手製の小型原発を置いている天才的頭脳の高校生はプロムの晴れ舞台に向けて韓国から極秘エネルギー源を密輸入し対プロム用秘密兵器製造の真っ最中だ。だがそこに忍び寄るキラーカブトガニの群れ。果たして主人公は無事プロムで恋人と踊ることができるのだろうか。そこなんだ、物語のコア。

予告編を観るとカブトガニ形態の殺人カブトガニと二足歩行形態の殺人カブトガニが出てくる映画のようだったのではっはっは本編を観て感想を書くときにはこの監督はポケモンを昔やっていた人でカブトガニをモチーフにしたかせきポケモンのカブト→カブトプスから殺人カブトガニの着想を得たに違いないと小粋なジョークでもかましてやるかなどと思っていたのだが、実際観たら主人公の兄貴がこのスマホ時代にあえてゲームボーイでゲンガー(ポケモン)のようなキャラの出てくるゲームをやっているシーンがあったのでなんかわりと本当にポケモンやって思いついた映画っていうかネタっぽい。

なにやら感慨深いですなぁ。ゲームボーイの初代ポケモンで育った世代が今やバカ映画の監督をやってるんですよあーた。しかもポケモンから着想したかもしれない映画を。なにもそこからこんな映画を思いつかなくてもいいだろという気もしないでもないがインスピレーションを受けたらしいのはポケモンだけではなく、進化後の殺人カブトガニの造形は『ガメラ2 レギオン襲来』のレギオン成体にだいぶ似てる。怪獣映画好きを公言するこの監督のことだからこれは絶対観てるだろう『レギオン襲来』。ポケモンをやって平成ガメラを観て殺人カブトガニの映画を作る。そこまでダイナミックに道を誤っていると逆に正しい道を進んでいるように錯覚してしまう。

ダイナミックに道を誤っているので逆に正しい道を進んでいるように見える映画監督といえば日本が誇る河崎実だが、やはり進んでいる道が似ていると作風も似るのか、河崎実の低予算バカ映画からパロディを抜いて(バカを抜いたとは言ってない)多少の血を加えたような感じというのがこの『キラーカブトガニ』であった。つまりそんな面白い映画ではない。

スプラッターなカブトガニがプロムのフロアを血で塗りたくっていくスプラトーンの映画と思いきや、まぁそういうシーンもあるにはあるがごく慎ましいもので、描かれるのは主人公プラスαの色恋沙汰とあと謎のアホ外国人同級生のバカギャグばかり。シーンとシーンの繋がりが意図的にか単に下手なのかは意図的なC級狙い寄りで不明だがかなり薄く、アァッ! 殺人カブトガニが酒場へ入っていった! やったみんな死ぬ! なんて期待させておいてそのシーンは出てこないみたいなスカされが終盤まで続くので脱力させられる、というあたり実に河崎実の低予算バカ映画っぽいと思う。

別にそういう映画も嫌いじゃないっていうかむしろ好きではあるが『キラーカブトガニ』なる邦題から想像するのは血が! 肉が!! 内臓が!!! みたいなやつだったのでなんか拍子抜けして眠くなってしまった。まぁこんぐらいの湯加減の映画なら何分寝ても損した気分にならないだろうからというわけで一切抵抗することなく映画館のシートに深々頭を沈めスヤスヤと眠りについた俺であったが殺人カブトガニのこれまでとは様子の違った鳴き声にハッと目を覚ますとなんか大変なことになってた。良かったよちゃんと寝て。起きてても面白かっただろうけど終盤の展開の伏線らしきものはたった一言の台詞だけだからそこに至るまでの過程を寝過ごして急にクライマックスに入ってしまったらもうね、それはそれは愉快なズッコケ体験でした。

いや、俺が寝たんじゃないな。これは映画が俺を寝かせたんです。寝て観てくれと。しょせんこんなのしょうもない映画だからと。寝るなり焼くなりなんでもしてストレス解消に役立ててくれと言ってますよこの映画は、いやこのカブトガニたちは。上映時間90分未満。興行はレイトショー中心。そしてそんなに面白くない。こういう映画も人生には必要じゃないですか! 『スプラトゥーン3』みたいな面白すぎるコンテンツはその依存性によって人間の健康を害してしまう。それを大いに実感してる今の俺には非常によい映画でしたねこれは。ここまで書いたところで時刻は朝6時4分。イカに殺される前に、カニを食え!

※殺人カブトガニの声は『アタック・オブ・ザ・キラートマト』のオマージュ風だった。あと殺人カブトガニとの激闘を終えた主人公が出てくる場所、情けなくて笑った。

【ママー!これ買ってー!】


『三大怪獣グルメ』[DVD]
『三大怪獣グルメ』[Amazonビデオ]

河崎実版『大怪獣のあとしまつ』というか逆に『大怪獣のあとしまつ』が三木聡版の『三大怪獣グルメ』。カブトガニもひっくり返して甲羅を器にしたスープにしたら美味しそうだよね。

guest

0 Comments
Inline Feedbacks
View all comments