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今年一番おもしろい映画はこれに決まっていたのでハロウィンが待ち遠しかったが長い9月の雨期を経てついにハロウィン到来、『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』公開であるが、さっそくチケットを予約しようとしたら吹き替え版とある。というか吹き替え版の上映しかない。吹き替え版で海外映画を観ることもやぶさかではないのだが、それにしてもこの映画で吹き替え版が? と疑問符がぴょんぴょん脳天から飛び出したのは『ひつじのショーン』というのはサイレント喜劇のクレイアニメシリーズ。台詞も一応あるのだがそれらは「おわおわおん! わうわう!」みたいな無意味な言葉、言葉そのものではなく文脈からこういうことを言っているんだなとわかる作りになっているのだから、吹き替えといっても吹き替える台詞なんか無いはずなのである。
実際映画を観てもとくに日本語で話しているところはなかったし挿入歌が日本語になっているとかもなかったので一体吹き替え版とは何だったのか……? と思っていたらエンドロール終了後の吹き替えクレジットで中村倫也とかお笑いの人とかがモブの役でゲスト声優として参加していたらしいことがわかる。なるほどつまりゲスト声優の人たちは「あああ~!」とか「うわんうわんおん!」とか言っていたわけだな。いやそれ吹き替えの必要性あるのか!? まぁプロモーションのための話題作りでしょうな。「あああ~!」とか「うわんうわんおん!」を日本語話者が吹き替えたところで原語版ととくに変わることはないので不満とかは一切無いし、『ひつじのショーン』を多くの人に観てもらうためにこういうプロモーションをしてくれるのはありがたいとさえ思うのだが、それにしてもなんだか笑ってしまうような珍吹き替えであった。
さて今回のショーンはハロウィン編である。ハロウィンに向けてこっそりカボチャを育てていたショーンたちだったがひょんなことからカボチャが台無しになってしまう。この一年だか半年だか知らないがせっかく頑張って育ててきたのに……とみんなの落胆っぷりが半端ないのでショーン一念発起、そこらへんに置いてあった「みんなの科学」なる児童向けの科学実験本を読み込み、カボチャの種を瞬時におとなカボチャに生長させる禁断の薬を発明するのであった。
一方そのころ、牧場主はハゲ頭に悩んでいた。こう見えて実は若い頃パンクロッカーだった牧場主。好意を寄せる馴染みの獣医さんをハロウィンのダンスパーティに誘おうとしていたのだが、もはや若い頃と違って逆立てる髪も無いというのは恥ずかしい、これではダンスパーティに行けないではないか(行けばいいと思うが)。はぁ、どこかに良い毛生え薬がないかなぁ……この先はもうわかりますね! ショーンの開発した禁断の薬にそれと知らず手を出してしまった牧場主は爆発的な毛生えにより怪物化。かくして牧場の動物たちに加えて町の人々まで巻き込んだ大騒動が勃発するのであった。
のっけからマイケル・ジャクソンの「スリラー」MVやら『フランケンシュタイン』やら『吸血鬼ノスフェラトゥ』やら古典モンスターホラーのオマージュで始まって今回もゴキゲンな『ひつじのショーン』だが、これまでの映画版である『バック・トゥ・ザ・ホーム』『UFOフィーバー!』と比べるとテレビスペシャルっぽい印象が少し強め。というのも今回の主人公はショーンというよりも牧場主である。怪物化するのは牧場主だし騒動を巻き起こすのも牧場主、牧場主と獣医さんの恋の行方がドラマの中心なので、ショーンたちは今回自発的に何かをするような感じではなく牧場主の行動に引きずられる従属的なポジションなのだ。
牧場主がどうでもいいということではないがやはり『ひつじのショーン』というタイトルなのだし、しかもその映画版とくれば、ショーンたちが危機に陥るとかどこか遠くへ冒険するとかしてドラマの中心となった方が盛り上がるんじゃないだろうか。ということで映画版ってかテレビスペシャル版ぽい印象があるのが今回の『かぼちゃ畑の怪物!』、映画ドラえもんで言うところの『のび太の結婚前夜』とかに近いというか、ちょっと外伝的な趣のある映画版でしたね。これはこれで面白いとはいえ前作『UFOフィーバー!』がかなりの傑作だったので、それと比べると幾分トーンダウンしているところは否めないかもしれない。
トーンダウンといってもそこは『ひつじのショーン』なので結局今年一番おもしろい(かもしれない)映画には違いない。ショーンがマッドサイエンティストと化して奇怪な発明品を作り出すあたりは同じアードマン・スタジオの『ウォレスとグルミット』を思わせて楽しいし、緊急事態にもかかわらず法定速度を守りサイドミラーをしっかり確認し運転練習中のマークを律儀に貼らないと車を運転できない犬のシーンには犬の杓子定規な性格が滲み出ていてなんとも可笑しい(犬が車を運転することはいいのか犬的には)、初期ティム・バートン風のゴシック・ムードも楽しめて最後はブタをDJにみんなでハロウィン・仮装ダンスパーティということでハッピーな気分、あと今回は裏テーマが動物愛護なのでそれもハッピーな感じですよね。
個人的な好みで言えばやっぱもっとショーンと動物たちに活躍してもらいたいしショーンと犬のバトルも観たいのだが(今回は仲違いなくずっと共闘)、そういうのは次回作にでも期待しておくことにしよう。それではみなさん、ハッピー・ハロウィ~ン🎃