ジョークばかりやってないで格闘しろ映画『ストリートファイター』(2026) 感想文

《推定睡眠時間:30分》

よく昔の格ゲー初心者は波動拳が出せないと言ったものだが俺もまた波動拳が出せない一人であって、おそらくあれは↓↙←を流れるように押そうとするのではなく↓と↙と←を一個ずつ順番に押せばちゃんと出るのだろうが、逃げ場もない狭い画面の中で殺意をたぎらせた相手がこちらに向かってくるのだからそんな冷静にボタンを押している余裕もなく、結果、波動拳はぜんぜん出せない。そんなわけで格ゲーというのは今に至るまで何が面白いのかどうもよくわからないというか、俺にとっては遊びこなせないジャンルなので縁遠く、格ゲーというジャンルそのものを作ったのかどうかは知らないが少なくとも格ゲーブームを巻き起こしてジャンルの礎となったことは間違いない『ストリートファイター』シリーズがいよいよ最新技術と最新役者で実写映画化、と聞いても前のジャン=クロード・ヴァン・ダム版『ストリートファイター』も観てないしあんまりピンと来ないのであった。

それでも一応ストⅡ世代の一番下ぐらいにはいたような感じなのでストⅡ自体は友達んちとかでよくやってたんじゃないかと思われキャラクターぐらいはなんとなく知ってる。エドモンド本田でしょ、バルログでしょ、エドモンド本田でしょ、ザンギエフでしょ、エドモンド本田でしょ、それからエドモンド本田と……ケンは俺のクラスではラーメン頭と呼ばれていたと思うがこの映画の中ではケンの相棒にしてライバルであるリュウが過去に犯した過ちを悔いて格闘家を廃業、なんかそこらの路上でソバ屋台をやってたので、もしかしてケン&リュウと麺類というのは何か公式設定で関連があったりするのだろうか? まぁどうでもいい話ではある……。

ゲームの方の『ストリートファイター』にはほとんど思い入れのない俺ではあるがこの映画はピンと来ないなりにわりと楽しみにしてた。『ストリートファイター』シリーズ、というか格ゲーといえばまったく異なるスキルと特徴を持つ世界中の猛者達が一同に介して戦う異種格闘技戦。異種格闘技戦というのはいつだって俺をワクワクさせるものである。それこそ最初の『ストリートファイター』でガイル役だったヴァンダムの監督・主演作『クエスト』とかヴァンダム映画の中でもかなり好きな方で、これはボクサーだの相撲取りだのカンフーかなんかの使い手だのみたいな格闘人種が世界中から集まって戦うというこれが『ストリートファイター』の映画なんじゃないのか……? みたいな内容であった。あと実写版の『鉄拳』とかも良かったな、三島平八がケイリー=ヒロユキ・タガワでハマってた。ケイリー=ヒロユキ・タガワといったらもちろん実写版『モータル・コンバット』(初代)の悪役、いやぁ『モータル・コンバット』(初代)も実に楽しい映画でしたよね、主題歌も最強だし……ということで異種格闘技戦映画に外れなし、ていうか格ゲー映画に外れなしなのだ俺の中では。『DOA デッド・オア・アライブ』もすごく良いB級映画でしたよ、世間的な評価はわからないが。

ていう感じで観に行ったたなんかわりとハシゴを外されてしまった。なんか、あんまり戦わない。戦わないでアメリカっぽいジョークばかりやってる。あといよいよ大会が始まろうというその時に寝てしまって目を覚ましたら大会が終わってたからやべー1時間ぐらい寝ちゃったのかなーもう映画終わりじゃーんとか思ってたらまだまだ全然終わらなかったし後で観た人に聞いたら大会の試合がいろいろ端折られてたらしい。なんだよそれ意味わかんないだろ! か、格ゲーの映画なんですよ!? これは新しい方の『モータルコンバット』を観たときも思ったことなのだがなんで格ゲーの映画なのに異種格闘技戦をちゃんと描こうとしないのか。『モータルコンバット』は大会すら始まらずに映画が終わってしまった(続編ではたぶん大会やってると思う)のだから大会をやってるだけ新『ストリートファイター』はちゃんとしているのかもしれないが、とはいっても異種格闘技戦の面白さを脇に置いてジョークジョークまたジョーク+キャラ萌えのコメディ路線を取るという判断は俺にとっては理解の難しいものだ。いや、だってそれをやりたかったら別に『ストリートファイター』じゃなくてもいいじゃん……。

確かにエドモンド本田がまさかのスーパー頭突きを放つシーンであるとかジャッキー・チェン系統のコミカル・カンフーを基調にしたアクションシーンは面白いけれども、『ストⅡ』準拠でラスボスをベガにしておけば良かったのに豪鬼(英語版だとAKUMAと言うらしい)まで絡めちゃったからストーリーの軸が定まらず盛り上がりが薄いし、ベガを演じるのがデヴィッド・ダストマルチャンというのが象徴的なのだが全体的にキャラの肩幅がゲーム版に比べてだいぶ狭いので格闘技の達人感がなく迫力もない(だから猛者たちが集うワクワク感もない)、更に言うなら元々は140分ぐらいあったのを強引に2時間尺に収めるために納期に追われた新人編集者が下手な編集を雑に施したとしか思えない違和感のあるカット繋ぎの連続で、作品の出来映えはかなりイビツである。

このイビツさを観ていて頭に浮かんだのはゲーム版の『ストリートファイター』というよりも『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』、なんかネオンカラーのギラついた画作りとかキャラの大量投入による渋滞し混乱したシナリオとかやかましいテンションで強引に押し切ろうとする演出とかよく似てる気がするので人間版の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のようなこの『ストリートファイター』だが、それもそのはずと言うべきか、制作は『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』と同じレジェンダリー・ピクチャーズである。そうかーレジェンダリーかー。いつもジョークと派手画面とキャラ萌えの三本柱なんだよなレジェンダリー映画って。どんな原作でもだいたいその三つで料理しちゃうから素材の面白味が生きないのよ。もっともこれはレジェンダリーに限らず最近のハリウッドの流行病とも言えるのだが。

最初からアメコミ映画的フランチャイズとして作ってるから豪鬼とも決着をつけないしベガとは戦いもしないとかそのへんも白けるところ、豪華にもマ・ドンソクがカメオ的に出演しているのだがドンソクの格闘シーンはなしという(わかっちゃいねぇなおめー!)感で、まぁ、別に楽しめはしましたけど、褒めたいところがわりと一個もない映画って感じでしたねぇ。

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