ジョシュ・ハートネット生存確認映画『マイナス21℃』の感想

《推定睡眠時間:10分》

才能はあるが自分本位でチームメンバーとそりが合わない。やがてチームを追われたというか半ば自ら去ったアイスホッケー選手のエリック・ルマルクは自暴自棄になりドラッグに手を出してしまう。ついでに事故を起こして法の裁きを受ける羽目に。
出廷まであと七日。気晴らしにスノボ旅行に出たルマルクは色々あって(この部分は寝ていたのでわからない)雪山で遭難。
ドラッグはやめるつもりだった。法の裁きを受けて出直そうと思っていた。なのにこんな目に遭うなんて理不尽な。と、そんなことを考えながらルマルクの試練の七日間が始まる。

どういう経緯で作られた映画なのか詳しいことは知らないがエンドロールのダサフォントとかセカンドチャンスがどうのと清らかな女声ボーカルが歌い上げる主題歌とかすげぇこう、一般的な娯楽映画っぽくない。
テレフィーチャーっぽくもビデオストレートっぽくもシリアルドラマっぽくもない。一番それっぽい気がするのはクリスチャン映画とか啓発ビデオの類。

流行りの実録災難映画なのでお話は雪山版『127時間』みたいな感じだったがこういう意匠もあるしシングルマザーのルマルクの母親は熱心なクリスチャンの人であるし本人映像を引用しての遭難後日談がやたら長いしなどなど、教訓的メッセージがもうもうと立ちこめるホワイトアウト。
自分の金と意志で観に行っているがなにか無理に見せられたような気分になる。エンドロールのセカンドチャ~ンスを聞いていると俺までドラッグで身を持ち崩したような錯覚が生じてきて居心地が悪かったのでそのへん、『127時間』みたいな純娯楽実録映画とは違っていたように思う。

というのはでも全体としての印象。ここが妙にアンバランスでちょっと可笑しいがいや可笑しくなるような笑える映画ではまったくないのですが、その教訓メッセージを担う回想&エピローグのパートのお仕事感に比してエリック・ルマルクを演じるジョシュ・ハートネットの雪山サバイバルパートに魂入りすぎ。
基本的に白銀の世界を歩き回って寝るだけの遭難七日間(これがまた実際にそうだったとはいえ宗教的含意を帯びて説教感を醸す)だったが、出口の見えぬままただひたすらに歩いて寝るを繰り返す姿は見ていてたいへん息が詰まる。

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壊疽を起こした足をもったいつけて何度も見せるとか嫌がらせかと思うぐらいだ。よせばいいのに一日ごとについ患部に巻いた布をペロってめくっちゃうんですよエリック・ルマルク。
そしたら布、凍って張り付いちゃってるからめっちゃ痛ぇの。で、めくりついでにボロっと落ちた肉片をなんも食うものねぇからつい食っちゃうの、ビーフジャーキーみたいに。

でも腐ってるから雪の中をさまよいながらゲロを吐く。吐くんだけれども胃になにも入ってないからゲロらしいゲロが出てこない。吐くに吐けず痛みにのたうつにもその体力がないから雪の中に倒れ込む。
もうすげぇ嫌じゃんそんなの。ジョシュ・ハートネット大熱演だ。身体の崩壊に歩調を合わせてメンタルも壊れてくるあたりとか。服を乾かすために全裸で吹雪をやり過ごしている時の朦朧状態とか。死に瀕して不思議と顔が生気を帯びてくる感じとか。すげぇ迫真でしたよ。

それはでもリアリティ追求型の特殊メイクが遭難者の生理学的変化みたいのを正確に捉えてるっていうことでもあるんだろうな。
いや正確かどうかは知らないんですけどなんとなくそう見えるっていう。凍って腐ったその先で妙に肌がツルっとしてくるとか実に気持ち悪い感じなんですけどあぁ雪山で死ぬ人ってこんな風かも、みたいな。

いや、だからそこらへんはスーパーよく出来てて怖いは痛いは寒いはで目を逸らしたくなるほどなんですけど例の啓発メッセージが迫真の雪山サバイバルの上に覆い被さっちゃって。
それでなんとなく現実に引き戻されてテンション下がるっていうところがあって…ドラッグはダメとか独りよがりはダメとか家族は大事にしないとダメとか、そういうのは別に回想の中で懇切丁寧に提示しないでも地獄の雪山サバイバルを見てりゃなんとなくわかるんだからあの回想興ざめだよなぁってなる。

実在人物の実録ものなのだし企画した側は雪山サバイバルよりも雪山サバイバルに至るまでの精神の軌跡とか雪山遭難で得た教訓を見せたかったのだろうと思いますが、作る側は『ネイビー・シールズ』(実録ものの方)とか『ニード・フォー・スピード』とか監督したリアルアクション派のスコット・ウォーという人なので、そのあたりで映画の方向性に齟齬が生じてこういう歪な形になったんじゃないかなぁと推測するがどうでしょう。どうでしょうもなにもない。

あとルマルクという人ですがエンドロールに流れる本人映像を見る限りでは映画の中の辛気臭いジョシュ・ハートネットよりだいぶ陽性の象限にキャラが寄ってるっぽい。
あれぐらい前向きなエネルギーのある人じゃないと雪山七日間とかチャレンジできないだろうから、雪山サバイバルの緊張感を出すために実像よりシリアスに描かれていたんじゃないだろうか(そのほうが啓発力も強まりそうだし)

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未知の世界に突如として突き落とされて過酷なサバイバルを余儀なくされがちなジョシュ・ハートネットは現在キャリアの上でサバイバルしている。

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