顔ドキュメンタリー『顔たち、ところどころ』睡眠感想

《推定睡眠時間:30分》

変な映画でパリっとしたドキュメンタリーじゃないっていうかそこらへんヌーヴェルヴァーグ的フリーダムと軽やかな遊びの精神みたいな感じだったのでぼくも自由に寝ながら見ましたが冒頭、『幸福』の映画監督アニエス・ヴァルダとストリート写真家(らしい)JR と書いてジェールと読む人の「パン屋でも出逢わなかった…」「バス停でも出逢わなかった…」とかいうそれぞれのモノローグが入る。

モノローグが乗る絵はヴァルダとJRがフランスところどころですれ違うの図。再現映像とかそういうわけでもなくフィクションパートっていうか。
日常生活の中ではついぞ出逢うことのなかった二人だったがJRのアートにヴァルダが興味を抱いて(という体で)アトリエを訪れたことでついに運命の出逢いを果たす。ここはドキュメンタリーのパート。

それから二人はJRのオモチャみたいなお仕事カーに乗ってフランス田舎の旅に出る。このお仕事カーというのは一言で言えば動く証明写真機という感じ。肖像写真の撮影とその拡大印刷がその場でできるようになっていて、行く先々で住民の写真を撮ってはでっかく印刷して壁に貼っていく。
ちなみにでっかくってA1とかそういう次元ではなく一軒家の壁を分割印刷した一枚の肖像写真で覆ったりすることもあるのでめちゃでかい。

このアートプロジェクト、JRのストリートアーティストの肩書きからなにかしらゲリラ的というか即興的なものかと思っていたんですが、そういうのじゃなくて住民と一緒に制作するパブリックアートという感じ。
でそのJRのアートプロジェクトの模様をヴァルダとJRの茶番的フィクションパートで繋ぐとこういう構成。うーん、変。しかし自由でよいなぁ。

思わず茶番とか書いてしまったがこのフィクションパートはどうもヴァルダとゴダールの諸作からの引用というかパロディが随所に仕込まれているっぽい。
ヌーヴェルヴァーグはようわからんのですが、車椅子に乗ったヴァルダをJRがぴょんぴょん跳ねながら駆け足で押していくatルーブルな場面がゴダールの『はなればなれに』のパロディであることぐらいはわかる。何故なら劇中で二人がそう言っていたから(親切な映画)

なんでプロジェクトと全然関係なさそうなパロディ茶番が接ぎ木に。というと映画は段々とヴァルダの記憶を辿る方向にシフトしていくからだった。
そこに住む生きた人の顔を壁に刻印する、また逆に壁の記憶に人々の顔で生を吹き込む、そういうことをやっているうちにヴァルダ自身の記憶が蘇ってくる。具体的にはゴダールについての二、三の事柄。

ヴァルダとゴダールというのはヌーヴェルわからん人からするといまいちイメージが繋がらないのですが、劇中でヴァルダが言うにはたいへん仲がよかったらしい。
常時サングラス着用のJRにヴァルダは昔昔のゴダールの姿を重ねる。俺にはゴダールっていうか線の細さとファッションセンスからペット・ショップ・ボーイズのクリス・ロウに見えたがいやそんなことはどうでもよくてだから、老いらくの追想恋愛映画という感じになってくる。

冒頭の茶番なんなのと思うたらそうか恋愛映画だったのか。アニエス・ヴァルダの超年の差恋愛、『カンフー・マスター!』のセルフ主演姉妹編みたいなものか。
前述ルーブル疾走シーンでヴァルダが急ストップしてガン見するのがアルチンボルドの野菜&植物寄せ絵だったのですが、そんな風にJR撮影の様々な顔が集まってヴァルダの肖像を形作る。

おもしろい趣向の映画でしたね。あとゴダール邸なのかゴダール邸の体なのか不明なゴダール邸にゴダールの好きな菓子パンを持っていくヴァルダにはなんか萌えました(またその下りがヌーヴェルヴァーグ的に捻くれていて…でもババァかわいいからなんでも好きにやってくれって感じにはなる)

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ゴダールとはもう五年も会ってないと寂しげに語るヴァルダだったんですけど老人の五年短くない? あんまりはなればなれになってなくない?

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