映画の感想『アンフレンデッド:ダークウェブ』

《推定睡眠時間:0分》

前作が俺的には全然ヒットしなかったのでどうかと思ったがいやいや前作より全然おもしろいじゃないですか。
心情的には『不思議惑星キン・ザ・ザ』で窃盗癖のある音楽青年を演じていた人が監督した(なんと映画監督になってたんですよ!)前作を推したいがこれはもう段違いでしょ、デジタルスリラーとしての完成度が。

なんせ冒頭から不穏でしたよ。ロックされたアカウント名「?」のMacにパスワードを入力する誰か。何度も間違うので所有者本人ではないとわかる。なんかやばい奴なんじゃないのか。
ところがログインしたその誰かがやることといえばFacebookメッセンジャーで恋人とやりとりしたりSkypeで友人たちとゲームしたり。そのギャップが逆にあやしい。

こいつの正体はすぐにわかるが全編PC画面で展開する都合、シナリオに遊びがなく何を書いてもネタバレ感が出てくるため自重。人物に関する情報がPC画面にしかないのでワンクリックワンカーソル移動がサスペンスに満ちていた、と言うに留めておく。ちなみにワンクリックワンカーソル移動は一挙手一投足の言い換えです。

おもしろポイントはノンストップで加速度的に大事になりつつ設定の粗と思われた部分を伏線として回収していく手際の良いシナリオ、ジャンル映画にしては死んで欲しくならないスカイプ上のフレンドたち、そのドキュメンタリー的な自然体芝居、そして『ゲット・アウト』で恐い顔のメイドだったベッティ・ガブリエルがスカイプ画面に出ずっぱり、など。

エンドロールがソースコードになっててスタッフ・キャストがコメントアウトで表示されるとかも気が利いていたなー。そうしたところでプログラミング言語とか知らないので何が書いてあるのかわからないと思うが、ちょっと巻き戻してコードを読みたくなる。

読みたくなるといえば手話のビデオ通話が結構多めに出てくるが字幕は出ない。オールドスクールなチャットだなぁみたいな台詞を「古い学校みたいな」と訳す余裕のなさだったのでそこまで翻訳に手が回らなかったのかもしれないが、リピートしてググって自分で読解しろということかもしれない。いわゆるインタラクティブ映画ではないけれども、観る側が能動的に遊べる仕掛けが結構ある映画だった。

製作は前作と同じくティムール・ベクマンベトフで、この人が提唱するところの“スクリーン・ライフ”(PCなんかのスクリーンで起ることを通してその操作者のドラマを表現する)を実装した作品といえば『seach/サーチ』の記憶も新しい。
ベクマンベトフが“スクリーン・ライフ”のコンセプトを思い付いたのは『seach/サーチ』のパンフによると2012年だそうだから、2015年に制作された前作『アンフレンデッド』はその第一弾としてまだ色々と試行錯誤の段階にあったんだろうな。

『seach/サーチ』と『ダークウェブ』でひとまず“スクリーン・ライフ”映画の型は完成したように思える。
上二つと同じく2018年の制作でIMDbで見る限りは評判も良いベクマンベトフ製作の“スクリーン・ライフ”最後の1本『Profile』の日本公開も期待したい。

あとちなみにダークなウェブのスリラー映画なのでグロとかエロとかあるのかと思いましたがほぼ0で全然血とかも流れませんでした。
どちらかと言えば想像で怖がらせる系。直接の残酷描写がない分だけそれはそれはおぞましい光景がスクリーンの外に広がるのでした。

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主演のオッサンの表情がいいんですよ、主演のオッサンの表情が。

↓前作


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