銃乱射体感映画『ウトヤ島、7月22日』感想文

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《推定睡眠時間:0分》

2011年7月22日に起きたノルウェー連続テロ事件でのウトヤ島の無差別乱射(乱射というより虐殺)は72分間も続いたそうで、厳密に72分になっているかはともかくその乱射の発生から終結までをワンカットで撮り上げたのがこの映画『ウトヤ島、7月22日』。
完全に偶然なのだが30分ものワンカットでゾンビパニックを捉えた『カメラを止めるな!』のテレビ初放送日(しかもワンカット推しでその間はCMなし)と公開日が被ってしまったというのがなんだか…いや、なにかふざけたことを言える映画ではまったくないので自粛しますが。

ところで同事件を題材にしたNetflix映画『7月22日』も昨年配信されており、日本では公開がズレたがこの『ウトヤ島』も昨年に一般公開されているので、なにか競作というか競合というか、製作会社は違ってもこの2作は相互補完的な関係にあるのかもしれない。
Netflix映画の『7月22日』は監督がグリーンブ…いや違った『グリーンゾーン』や『ボーン・スプレマシー』、9.11の際にハイジャックされた旅客機で起きたことを想像で描いた『ユナイテッド93』のポール・グリーングラス。

実は(なにが実はなんだろうか…)『7月22日』を観る前に俺が頭に思い描いていたその内容はまさに『ウトヤ島』のようなアクションサスペンス編だった。
なんせグリーングラスですからね。グリーングラスが史上最悪クラスのスプリーキラーの凶行を描くとなれば『ユナイテッド93』みたいな緊迫感溢れるドキュメンタリータッチのアクション映画をやはり期待してしまう、申し訳ないけれど。

ところが蓋を開けてみれば『7月22日』はそんな映画では全くなく、犯行シーンはせいぜい十数分程度、ランタイム140分前後の長尺映画ですがそのほとんどは人々はどう事件を受け止めたか、どのようにして稀に見る凶悪ローンウルフ型スプリーキラーの思想に立ち向かったか、そして事件の残した深い傷を克服しようとしたか、といった事件後の出来事で占められているのだった。

むろん個人レベルでは様々な異論もあろうけれどもノルウェーが国としてブレイビク事件に突きつけた回答を思えば犯行そのものではなくあくまで冷静な筆致で犯行後の出来事を、こう言ってよろしければ映画として地味な(しかし現実ではそちらの方が明らかに重要な)出来事を綴ることを選んだ『7月22日』は、グリーングラスにしてはと言うと失礼にも程があるがたいへん真摯に事件と向き合った社会派映画なのだった。

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とは言いつつ無責任な観客としてはやっぱ『7月22日』ではあんまり果たされなかったブレイビクの犯行シーンが見てみたいという邪悪な願望もある。
というわけでその願望を叶えてくれた『ウトヤ島』だったのですが、結論から言ってしまうと『ウトヤ島』と『7月22日』のどっちを多くの人に観てもらいたいかといったら圧倒的に『7月22日』で、なにを目的として映画を観るかにもよるとは思うがブレイビク事件を見たかった俺としては『ウトヤ島』に望んだものは見出せなかったし、望まずして得るものというのも少ししかなかった。

件の72分ワンカットがどのようなものかというと、市庁舎前の爆破事件(ブレイビクがウトヤ島を襲撃する前に仕組んだもの)の報を受けたウトヤ島キャンプの若者たちが不安を覚えつつ雑談していると、どこからか銃声のようなものが聞こえてくる。
爆竹? 誰かがそう口に出すや否や、他の参加者たちが猛ダッシュで森を抜けてくる。乱射してる! 逃げろ! で、カメラは若者たちと一緒にわけもわからぬまま72分もの間、狭い島の中を逃げ続けるわけである。

銃声は聞こえるが場所はわからない。情報は錯綜して複数の犯人を見たという話も出てくる(実際はブレイビク単独)。キャンプのある島の中心部は真っ先に狙われたため動く影なく物音一つしないが、森の中は右から左から無言で逃げてくるキャンプ参加者たちでやかましく忙しない。

リアルだと思った。リアルといったところでリアル銃乱射を知らないからなにがリアルかわからないが、登場人物の混乱した行動も含めて、自分がこの場にいてもこんな感じなんだろうなと思わせるところがあった(人間って逃げるときは無言で逃げる、という秋葉原連続殺傷事件に遭遇した人の証言は個人的にとても印象に残っている)

でもそういう「俺がここにいても」の想像を許す普遍性とか抽象性って良し悪しだとも思っていて、これ戦場体験映画としては結構なものですけどブレイビク事件の特殊性はほぼほぼ描かれないわけです。
「俺がここにいても」を観客に強く感じさせるために「俺がここにいても」を阻害する要因を取り除くと究極シミュレーターになっちゃうじゃないですか。だから俺この映画ちょっとゲーム的なルックに見えましたね。TPSのホラー系アドベンチャーみたいだなって。

でもそうなるとこれブレイビク事件でやる必要ある? ってなる。だってこの映画観てもブレイビク事件全然わかんないもん。せいぜい酷いなぁとか悲劇だなぁとか思うぐらいで。
だからこれはこれで体感映画としてそこそこおもしろかったんですけどやっぱ『7月22日』のグリーングラスの判断正しかったなっていうか、こういうのがいかんとは思わないのですがー、表現の自由は尊重されるべきだとおもうのですがー、事件との向き合い方は人それぞれだとはおもうのですがー、ブレイビク事件を描いたものとしてはあんまり褒められたものじゃないんじゃないすかね、こういうのは。

っていう映画でした、俺にとっては。

【ママー!これ買ってー!】


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観客にリアルな体験を与えるってそんなのは今の時代ゲームで腐るほどできるんだから映画作家は自分が解釈した事件の像を出してくりゃいいじゃない。『エレファント』みたいに。

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