《推定睡眠時間:30分》
日本だとビデオカセットよりも一回り小さいなんとかカセットに記録する方式のビデオカメラが多かったと思うがビデオカメラの出てくる1990年代あたりが舞台のアメリカ映画を観るにアメリカだとお馴染みのビデオカセットをそのままビデオカメラにぶち込んで記録するスタイルが一般的だったらしい気配がある。『VHS』シリーズの1作目『V/H/S シンドローム』を観た時には「なぜビデオカセットでファウンドフッテージのオムニバス?」と思ったのだが、ビデオカセットつまりVHSテープでホームビデオを撮ることがアメリカでは一般的だったのでファウンドフッテージ=VHSということのようだ。どんな映画にもその映画が作られた場所なり時代なりの文化が必ず刻印されているものである。
てなわけで若手ホラー監督競作ファウンドフッテージ・オムニバス『VHS』シリーズの最新作が待望の日本劇場公開である。なぜ待望かといえばいや俺は別に待望してないからそれはウソなのだがこのシリーズは1作目がそんなに面白くなかったのになぜか大人気シリーズになってしまい今までに続編が5本ぐらい作られているのである。だが、2作目『V/H/S ネクストレベル』以降は日本公開なし、ソフトリリースも配信リリースもなし、ということで『VHS』シリーズのファンはほぞを噛んでいたのだ。こう音沙汰がないともう日本には入って来ないんだろうなこのシリーズ、とおそらく日本中のホラーファンが諦めて自分を納得させていたところでまさかのシリーズ最新作突如として日本劇場公開、併せて限定公開ながらシリーズ3作目『V/H/S 94』まで入ってきた…そんなわけで知らないけどたぶんツイッターのホラー映画ファンとかは欣喜雀躍だとおもいます。
で今回は宇宙人編です。これまで新たなるネタを求めて90年代80年代に遡ったりなんかしていたこのシリーズだがファウンドフッテージの制約もありいよいよネタが尽きてきたのかついに宇宙に進出しました。といっても宇宙人の関係ないエピソードも混ざってるし(犬のやつとか)目玉エピソードと思われる宇宙船に乗り込んだった! の話とかそれはどうやってビデオテープを回収したんだとツッコミを入れざるを得ないのでやはり『VHS』シリーズ、作り込みが甘くなかなかいい加減である。まぁ面白けりゃなんでもいいから整合性とかそういうのは、オムニバスホラーだし…とでも言われればそれはそう。
なるほどたしかに作り込みは甘いが景気は良い映画だった。なにせ最初のエピソードがエイリアンに脳を吸われたゾンビ人間たちのアジトを重武装の警官隊が強襲して片っ端からゾンビ人間を惨殺していくやつである。手垢が付いているにも程があるしなんか前にも同じようなのやってただろこのシリーズおいと思うがアクションは激しくゴア満載、脳みそ吸われゾンビ人間たちのビジュアルも良く工事現場の作業員風のチェーンソーゾンビなんか『処刑軍団ザップ』を思わせてかなりカッコよかった。ぶっちゃけそれだけのエピソードなので見た目は派手でも中身とか無きに等しいが、オムニバスホラーの掴みとしてはオッケーな感じなんじゃないだろうか。
だがその後も出オチのようなエピソードは続く。スカイダイビングに行ったらUFOと遭遇して宇宙人に追われるやつとか半分寝てるが宇宙人から逃げるためにスカイダイビングして地上に降りたら車を乗り継いででも殺人宇宙人を結局は振り切れずみたいな感じだったと思うのでこれもストーリー性に乏しくアクションとジャンプスケアと宇宙人造型だけが見所という感じだ。宇宙船に乗り込んだったエピソードもストーリーに捻りはまったくなく見所はあくまでも宇宙船内の何が映ってるんだかもうノイズまみれでようわからん映像。ゆーて1作目の頃はもう少しストーリー面の面白さも見せようとしていたような気はするのだが、この『ビヨンド』は単なる衝撃映像集の印象強し。ファウンドフッテージと考えればそれでいいのかもしれないが、映画としてはどうなのだろうとはやはり思ってしまう。
まぁ『VHS』シリーズならこんなものか。こんなもの、といってもつまんないわけじゃあなく、ガヤガヤギャーギャーひたすら騒がしいので遊園地の絶叫系アトラクションにでも乗った感じで楽しいのは楽しく、なんかやかましくて爽快感のあるホラーを観たいときにはこういうのもいい。ストーリーがほとんど無いということは頭を使わないで済むということでもあるので、酷暑により脳が機能しない夏にはなかなかピッタリな映画かもしれません。