《推定ながら見時間:40分》
お馴染みフェイクドキュメンタリーホラーシリーズTXQ FICTIONの現時点での最新作だがたぶんこのシリーズでいちばんつまんなかったと最初に書いてしまう。いや別に恨みとかないけどほら英語で文章書くときは結論を先に書きなさいとか言うじゃないですか。これは日本語の文章だから何も関係ない気もしますがまぁとにかくそういうことだ。
なんでつまらなかったかってその理由は結構単純である。こういうのむかし普通にテレビでやってた。十数年前に雪山で怪死を遂げた男を取材することになった取材班がやがて現場となった雪山の周辺で他にもどうもUFO絡みではないかと考えられる怪事件が連鎖的に発生していることに気付き云々という展開はディアトロフ峠事件とアーサー・マッケンの『パンの大神』を合わせたようなもので、そのへんを守備範囲とするオカルト革命思想家の武田崇元も本人役で出演していたりとUFO系のオカルト・フェイクドキュメンタリーとして作りはわりあい本格的というかマニア向けっぽい。
だから作品の出来自体はUFOもののくせに衝撃的なウソ目撃映像も少なく多少薄味という点はあれどそう悪いものでもないのだが、これはTXQ FICTIONとして作られ「この番組はフェイクドキュメンタリーです」と視聴者にわかる形で放送されているドラマなのである。仕方が無いこととはいえこれはやはり弱いところだ。そうだなぁ1970年~2005年ぐらいまでですかね、日本のテレビってどう考えてもヤラセのオカルト映像とか心霊写真なんか平気で流してたし、絶対にウソなUFO目撃情報とか謎のUFO有識者の政府の陰謀語りとかを「ドキュメンタリー」としてやってたじゃん。FBI心霊捜査官とかさ。『イシナガキクエを探しています』はそのパロディになってたけど、実際の行方不明事件をネタに持ってきてアメリカから来日したFBI心霊捜査官(誰なんだ)が霊視で行方を捜すとか今だったら猛烈な抗議が殺到して関係者何人かのクビが間違いなく飛ぶ番組を「ノンフィクション」として全然やってたよね。俺もわくわくして見てましたよそういうの。
そういうテレビ番組の面白さは「こんなのヤラセだろ!」と思わせるところにあったんじゃないかと思う。ドキュメンタリーないしノンフィクションと言いつつにわかには実在が信じられない目撃映像やあやしい登場人物が出てくるから、それを家族とか友達とかと一緒に見ながら「こんなのヤラセに決まってんだろ!」ってツッコむわけですよ。一緒に見てなくても翌日の学校とかで。で番組に出てきたあやしい登場人物(FBI心霊捜査官とか中国の気功マスターとか……)の真似して遊んだりね。みんなとは言わないけど、そりゃ中には大真面目にこれは真実なんだと受け止めてしまう人もいたでしょうが、基本的には半信半疑の疑い寄りで見てた人の方が多いと思う。それがこういうオカルト番組の面白さで、要は視聴者がネタにして遊べるものだったんですよ。
そう考えるとさ、『UFO山』は最初から「これはフェイクドキュメンタリーです」って言っちゃってるわけじゃないですか。そしたら取りつく島がないよね。だってウソなんでしょ。番組作ってる側が自分からウソって表明しちゃったら見てるこっちはツッコめないじゃないの。だからこれ昔のテレビでやってたUFOドキュメンタリーと内容的には同じことをやってるんだけど昔のUFOドキュメンタリーみたいに盛り上げれないんだよ。だからTXQ FICTIONの中でいちばんおもしろくなかった。これはもうシリーズのコンセプトに関わることだからどうしようもないことで、まぁ、題材チョイスを誤ったってことじゃないですか。UFOネタとフェイクドキュメンタリーって一見すごく相性がよさそうですけど、実際は逆なんですよ。UFOネタはどんなにウソっぽくても白々しく「ホンモノです!」って言い張ってほしいよね。
TXQ FICTIONといえば毎回考察とやらが盛り上がるシリーズでもありますが前回の『魔法少女山田』に続いて今回も考察の余地なんてないんじゃないだろうか。テーマは明確。一言で言えば、人はつらい現実を受け入れられない時に、UFO幻想に逃避する、ただそれだけのお話である。もちろんそれだけではない不思議な出来事もいくつか起こるが、それらは最初から答えが容易されておらず、単に謎として作られた謎なので、考察する意味はない。ずいぶんこぢんまりとしてるなぁと思いつつそれはそれで悪くなく、ちょっとだけ泣ける系のお話ではあるが、ただそれにしたって『虚空門GATE』というすごいUFO映画があり、こちらの方は『UFO山』と同種のテーマを扱っているのに正真正銘の「ドキュメンタリー」なわけだから、やはり迫力も衝撃力も段違い、そして『虚空門GATE』の方はしっかりと考察のできる映画なのである。
そんなわけで『UFO山』にはUFOネタのドラマとして強みと言える部分がほとんどなかった。ネタ的には嫌いではないしっていうか好きだし、結構ロケとかして丁寧に作られてるなーとは思うけれども、なんだかフェイクドキュメンタリーの限界を感じる作品でもありましたねぇ。