サイバーキアヌ映画『レプリカズ』感想文

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《推定睡眠時間:10分》

『アイ,ロボット』よりもフレームレートが少ない感じのカクカク挙動ロボットが登場する開始5分の時点でこれはV級、すなわちビデオスルー相当の映画であると見切ってマインドセットをVにスイッチできれば楽しめること請け合いのキアヌ・リーヴス最新作ですがいや『アイ,ロボット』って。2004年の映画じゃないか。

予算規模が違うのは言われなくてもビシビシ画面から伝わってくるがロボットCGで2004年の映画に負けるってあるんですか。誰ですか技術の世界は日進月歩と言ったのは。普及すればコストも安くなるから10年も経てば誰でもあれぐらいのレベルのCGは使えるようになるって聞いたのに! 聞いてませんが。

だがシナリオの方はもっと時代を遡っており、まるで80年代サイバーパンク・ムーブメントの中でSF雑誌に一回訳出されたきりの時代の徒華的SF短編の如し。
別に悪い意味で言ってないがそれにしても今2019年ですよ…と思いながらクレジットを見ると製作にキアヌ・リーヴスの文字が。

確信犯だ。確信犯的に懐古的サイバーパンク映画をやろうとしている。そうだよな、『マトリックス』にも『JM』にも『スキャナー・ダークリー』にも出てるもんなキアヌ。最後のはサイバーパンクじゃないだろうとの反論が予想されるがジャンル論はひとまず置いておくとして、この人サイバーパンク的なテーマとか道具立てが本当に好きなんだろう。

デジタル化された意識とか。シミュレーションされた現実とか。肉体破壊と培養組織とか。二重化される自己と統一された身体に基づく人間性の更新、世界の変容。
書き出すと超おもしろそうだがそこらへんは風呂敷だけやたらでかいV級なので何を見てもVだなぁVだなぁと結局なってしまうが、でもまぁ逆に言えばVなのにAを志向する志の高い映画というか、V予算の中にA要素を無理くり入れようとするV級映画人の矜持のようなものも感じ取ろうとすれば感じ取れなくもないので、面白バロメータはVで止まっているが好感度バロメータはA突破。なんだかんだ好きな映画であった。

キアヌ・リーヴスは大手製薬会社に雇われて死んだ人間の意識をロボットに移し替えるフランケンな研究をしているマッド科学者。
そんな彼を悲劇が襲う。その状況で運転無理だろうと誰もが思うに違いない暴風雨の中で車を走らせていると案の定事故発生、同乗していた家族が全員くたばってしまう。

俺になにができる。俺はなにをするべきだ。俺は科学者、マッド科学者…家族の死を受け入れられない博士キアヌは家族を被検体にした意識転移実験に手を染めてしまうのだった、が。

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面白かったポイントとしてはシナリオ、良かったよね。いや一応言っておきますけど繰り返し言っておきますけどVだから。明確にV。でもVだからとこじんまりまとまろうとする気はない。
二転三転するシナリオはそれがどれほど使い古されたもののリサイクルでしかないとしてもサービス精神に溢れていて楽しめたし、新時代の夜明けを感じさせる結末は絵面が貧乏な『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』みたい。サイパン感テンコ盛りである。

テンコ盛りといえばジャンクでパンクでチープなSFガジェット。これが中々おもしろいものが揃っていて、なかでも一番は意識抽出器。
どういうものかと言うと頭部に取り付ける拷問器具じみた奇っ怪な装置で、こいつを装着するとセンサーが眼球周辺をサーチして意識吸引(恥)のできそうなポイントを探し出す。で、機械がここだと判断したところに付属のぶっとい吸引針がブシュっと刺さる。痛い。

いや痛いって基本はまだ脳に意識の痕跡が残ってるホヤホヤの死体に使う装置なので使われる側は痛くないのですが絵面はめっちゃ痛い。あと死体の眼球周辺に針ぶっさしてるのが倫理的にやばい。ちょうど眼球を傷つけないで(死体向けとはいえ)痛覚もないようなところに刺してるっぽいのが逆にロボトミー手術みたいな感じで生理的嫌悪感がある。

これ良いガジェットでしたね。予算的な貧乏感は隠しようがないが、こういうケレンの利いたガジェットの存在が画面の貧乏感であるとか、チープな印象に直結しかねないシナリオのツッコミどころや掘り下げの甘さをだいぶフォローしていた(と俺は思うのだが)。
タッチ式のホログラムディスプレイを使って空中で手術をするように意識データを操作・移行するっていうのもアホらしさの一歩手前でギリギリの格好良さ。映画版『フランケンシュタイン』のツギハギ手術を換骨奪胎したと思しきナイスアイディアだ。

あとはやっぱりキアヌ・リーヴスですよね。キアヌが良かった。視線の定まらない不安定な状態で安定してしまっている挙動に漲るサイバー狂気。何事もなかったかのようにレプリカント家族と食卓を囲むキアヌの今にも崩れそうな幸せフェイスの怖さと切なさ。表情を変えることなく娘の生存をLINE(的な)で偽装するとか地味にやばい人なのだがー、例の事故で死んだ娘の残した落書きを消しながら涙を流す下りで見せる不意の人間らしさとかグっとくるところ。

キアヌの不安定な存在感はまたレプリカント家族のいる光景にバーチャルリアリティないしは妄想の余地を残して、物語後半の半ば破綻した怒濤の展開もその崩壊を思わせるところがある。
なんせキアヌは記憶をデータ化して編集したりする人なのだから彼が見ている光景というのも本物の記憶と結びついた現実である保証はない。家族の喪失を嘆くあまりクローン人間さえ造り出してしまうのだからその肉体が本物である保証はない。

単純チープに見えて案外一筋縄ではいかないV級映画だ。超面白かったとまで言うとさすがに嘘になるのでV面白かったと言うに留めておきますが、推す。

【ママー!これ買ってー!】


エンブリヨ – Embryo –

全然サイバーパンクじゃない古典的な試験管ベイビーものですがなんとなくトーンは似ていた。監督ネルフ・ネルソンの『まごころを君に(アルジャーノンに花束を)』に続くSFドラマ。

500
ナナシ

いっぱいこの映画のレビューを読みましたが、こちらのレビューが一番共感出来て一番好きでした。自分の感想を言語化してくれてありがとうございます。と言う気持ちで思わずコメント失礼しました。