キラキラ熟年恋愛映画『マチネの終わりに』感想文(悪口注意)

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《推定睡眠時間:20分》

予告編を見てどうやらパリ同時多発テロが関係する物語らしいというざっくり前情報が頭に入っていたので天才クラシックギタリストの福山雅治とAFP通信(的な)記者の石田ゆり子が運命の出会いを果たしたその日、「過去が未来を変えるんじゃなくて、未来が過去を変えるってことはあるんじゃないかな…」といかにも深そうに言っているが全然深くない台詞が福山雅治の口から飛び出してこれは! これはあれでしょうテロで石田ゆり子が死ぬフラグに違いない! 未来がどうとか言っていたからもしかしたら最近の邦画によくある(『九月の恋と出会うまで』とか)タイムスリップものかも! 福山雅治がテロを回避して石田ゆり子を救おうと奔走する的な!?

ってちょっとだけテンション上がったんですが全然フラグじゃなかったです石田ゆり子死にませんでした。死にませんでしたしテロあんま関係なかったです。パリのホテルで爆弾テロに遭遇しPTSDを発症した石田ゆり子が日本に帰国してきてホテルのエレベーター乗ったらちょうど雷が鳴ってゆり子パニック、その時に福山雅治が傍らに居てくれなかったからという理由で(理由はそれだけじゃないが)ちょっとイイ仲になりかけた福山雅治と石田ゆり子は疎遠になってしまうというわけで、いやそんな贅沢な使い方をするなよ同時多発テロを…とだいぶ予想の斜め上を行くテロ関連映画であった(関連映画なのだろうか)

しょせん同時多発テロなんか対岸の火事。地下鉄サリン事件で都市部のテロの恐怖を世界に先駆けて知ったはずの我らがジャポネーゼであったがそんな記憶もすっかり消えて今や薄っぺらい中年恋愛のバックボーン程度にしかテロが使われない。世界に誇るべき日本人の忘却力であるがその忘却力はなにも対象をテロに限ったものではないので埼玉県内でも成立するようなプロットのくせにやたら海外ロケを敢行、行く先々で天才クラシックギタリスト福山雅治が現地の人に尊敬され著名なソ連系映画監督を継父に持つ石田ゆり子は金持ち日系人の伊勢谷友介と結婚して金髪碧眼のメイドを雇ってマダムマダムと呼んでもらったりする。

令和ニッポンの国力を完全忘却した日本人スゴイっぷりに脱帽してしまう。そのためだけにパリで撮ったりニューヨークで撮ったりしているのだからゴォジャァスな映画である。さすが『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』を放ったフジテレビ製作映画。金の使い方が下らないしめっちゃ下品。

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それにしても悲しくなるのは海外ロケに行く予算は一応あるらしいがそれ以上のことをする予算はなさそうだったので石田ゆり子がテロに遭遇する場面なんかすごいことになっている。テロ、画面に映らないんである。こう書いてどれだけの人に伝わるかわからないが『マッドボンバー』でチャック・コナーズがホテルのパーティフロアを爆破しに行った時のあれである。石田ゆり子はエレベーターに乗って偶然テロから逃れるのだが、カメラは扉が閉まったエレベーターから一歩も出ないでテロに怯える石田ゆり子を撮り続けるのだ。

キャーとかワーとかいう被害者の声と画面揺れ(あと照明の点滅と断続的な爆発音)だけでテロを表現してしまうこの荒技! そんな無理をしてまでテロを物語に組み込んだのにゆり子が福山から離れる原因の一つとしてしか機能しないとかそれだったらテロいらなかったろ。なんなんだ。なんかすごいな。しかもPTSD設定出てくるの一回だけだし。さすがの忘却力である。

忘却力がさすがなのは登場人物も同じなので福山とゆり子はいい歳こいてLINE(的な)で仲良くなってLINE(的な)で疎遠になるのだったが二人ともそれを振り返ったりしない。ちょっと前に送ったメッセージを見返して誤解を招いたかなぁと反省したりすることもなければとりあえず一緒に飯でも行きましょう的に関係修復の機会を作ろうとすることもない。

お前ら中学生か。それとも加齢に伴う無意識的な忘却の結果なのか。そうだとすればまたちょっと話が違ってくるがそうだとしてもLINEで済まさず身体の相性を確かめるぐらいしろ。そういうの付き合う上でかなり大事ってわかるでしょうが大人なんだから。妙齢なんだから二人とも。

インスタ映え的なコントラストの強い映像も含めて、大人の恋愛映画というよりなんだか地方系学園映画のような感じである。スランプに陥った世界的クラシックギタリストとソ連の天才映画監督を継父に持ちテロの後遺症に苦しむAFP通信(的な)記者&ギタリスト命の盲目マネージャーの三角関係も大の大人が演じているとバカにしか見えないが、高校生ぐらいの俳優が演じていたらわりあい自然に受け入れられそう。ありますしねこういう超設定のキラキラ学園映画。

問題はなんでそんなキラキラ映画みたいなことを福山雅治と石田ゆり子がやっているのかということだが、それは、たぶん、掘れば掘るほど涙が湧き出てきてしまうので掘り下げないほうがいいだろう。
劇中に福山が作ったトリビュートCDをゆり子がCDコンポで聴くという場面があるが、そこからリラクゼーション効果の高いメランコリックなクラシック・ギターのサントラを売りたいという製作側の思惑と、サブスクとかでは音楽を聴かない層をメイン客層に想定していることが読み取れた、とだけ言っておく。

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マチネの終わりに世界の終わりがやってくると信じ込んだキッズが好きな女の子と核シェルターにこもる夢のような映画ですが俺主観によればこのキッズの方が大人の恋愛してました(肉体関係がどうとかそういう話ではなく)

↓サントラと原作


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