鬼才の道はまだまだ遠い映画『鬼才の道』(『鬼才之道 ~冥界タレント協会』)感想文

《推定睡眠時間:30分》

俺のいい加減な記憶が部分的にでも正しければこの映画たしか台湾の有名な賞を受賞したかなんかしてたはずで監督はホラーゲームを映画化した『返校 言葉が消えた日』が話題を呼んだジョン・スーということもあってなかなかすごい映画なんじゃないかと地味に期待するところがあったのだが、そんな肩肘張った映画じゃなかったね、ははは。

なにせこの映画の舞台は死者の世界、死者の世界といっても見た目は現世なのだが、ほら幽霊っているでしょう、あの幽霊というのは成仏せずに現世をうろついてる死者の霊魂が生きてる人の視界に入っちゃったりしているものなのだそうな。成仏イコール霊魂の消滅なので成仏するとその上の天国とかそういう場所はナシ。で霊魂は生きている人たちによく話題に出されたり法事をやってもらったりなんかすると成仏しないで霊魂のまま遊んで暮らせるというので、忘れられそうになった霊魂は積極的に幽霊になって人を脅かしたりするらしい。ディズニー映画の『リメンバー・ミー』がなんかそんな感じだったよな。

そんなわけでこれは砕けた設定のコメディであった。主人公は冴えない霊魂女子、目つきの悪い友人とダラダラと霊魂生活を送っていたが、いよいよ生者から忘れられそうになってきて危険が危ない。てことで霊魂として生き続けるために幽霊タレント事務所のオーディションに出てみた主人公は金城武臭のする謎のマネージャーに拾われ人気に陰りの出てきたベテラン女優霊の弟子になることに。そんな折、下剋上を目論む新人女優霊とベテラン女優霊の人間脅かしバトル企画が持ち上がり、さぁ幽霊界は大盛り上がり、はたして主人公はこのバトル企画でいっぱしの恐怖幽霊となることができるのでしょうか…なんか深夜アニメにすごくありそうストーリーである。

風呂から出てきたら壁一面に呪いの写真が! という怪奇現象は実は幽霊の美術さんが匠の技でものすごく頑張って手動で写真を貼っていたとか、人気配信者をダシにした二大幽霊の脅かしバトルがスポーツ中継風の演出されるとかそういうジョークは面白いけど、全体としてはあるべき所にあるべき物が収まった映画という感じで、ちょっとのイイ話感も含めてウェルメイド。幽霊は大変というネタもさすがにあの手この手の幽霊ネタが氾濫する今の世では新味が薄く、突き抜けたユーモアなり残酷描写なり展開なりがないのでどうにもここはという見所に乏しかった。だからとくに書くこともない。いや、決してつまらないわけじゃないんだけど、誰でも楽しめるライトなホラーコメディってことで別に嫌いじゃないけど、感想を聞かれたら面白かったね~で終わっちゃう映画なんですよ。

『鬼才の道』なんてタイトルなのにウェルメイドとはこれいかに。といってもこの場合の鬼才は幽霊の才能みたいな意味らしいが。

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