【ネッフリ】『アナイアレイション ー全滅領域ー』

アナイアレイション -全滅領域-[Netflix]

《推定ながら見時間:50分》

「なにが起こるの…?」「Annihilation(全滅)さ」
とかいう劇中会話でフッと記憶の海から浮上したのは戦場と化した南極基地で携帯通話しまくるサラリーマンのCMもインパクト大だった『バイオハザード』&『遊星からの物体X』直球フォロワーのPS2ゲー『エクスターミネーション』だ。
植物から建物から人体からと物質という物質を侵食して変異・融合させてしまう粘菌状の謎生物(非生物?)をブンブン撃ちまくる操作も簡単な爽快ゲームだったが、中にやっぱりこんなやりとりが出てくる。
「なにが起こってるんだ…?」「Extermination(絶滅)さ」

そういえばゲーム的な意匠がある。隕石衝突かなんかで何が起こっているのかわからないが何かヤバそうなことになっているらしい謎領域《エリアX》に派遣された武装調査隊第二陣(第一陣の帰還者はおかしくなってしまっていたので)がatジャングルステージで変異ワニとバトるが、変異ワニなのでちょっとやそっと撃ったぐらいでは死んでくれない。

ダメだ食われる! 主人公の鼻先にまで迫ったワニが大口を開けた瞬間、「今だ撃て!」口内に銃弾をブチ込んで主人公は変異ワニを退治するが、俺このシチュエーション『ハウス・オブ・ザ・デッド2』でめちゃくちゃ何度もやりましたよ。ステージ3の蛇ボスね。TowerですTower。ボス前に可哀想なハゲおっさんが食われるやつ。

調査隊はこのあと変異ワニの死骸からワニの「歯」を入手するのだが、それもまたゲームっぽい。エリアXに散在する調査隊第一陣のブツ切り映像記録を追っているうちに徐々に事態の全貌が明らかになっていくストーリーテリングもサバイバルアドベンチャー系ゲームの常道だ。

ゲームだったらこの映像記録の部分、さっきまで操作してたカクカクポリゴンキャラが誰だかわからない超美形に急変貌する美麗プリレンダリングムービーになるんだろうな。発想がPS時代の旧人類ですが…。

あれこれ去来する記憶は昔やったゲームのものばかりだ。PS版『パラサイトイヴ』なんかも雰囲気近いんじゃないか。エリアXの変異生物に覚えた既視感の正体はミトコンドリアがどうとかってレベルじゃねぇだろみたいな『パラサイトイヴ』のシュールな変異クリーチャーだった。

あと不明領域と変異クリーチャーというとあれですあれ、『Dの食卓2』。『Dの食卓2』! テーマ的なところだとこれは最近な『真・女神転生 ストレンジ・ジャーニー』も連想するな。最近ってあれオリジナル版はもう十年近く前のゲームですけど…。
あぁ懐かしい。なんだかとても感慨深い。その感慨は作る側も想定してなかったと思うが。

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ゲーム的既視感は意図したものではないと思うが以前は『28日後…』の脚本家として、最近はアンドロSF『エクスマキナ』の監督として知られるアレックス・ガーランドの監督二作目が『アナイアレイション 全滅領域』だそうなので、原作ものでありつつのこの映像的既視感の乱れ打ちっぷりもむべなるかな、というところがある。

ジャンルオタクの人だもんなアレックス・ガーランド。『28日後…』だっていかにもオタクっぽい感じの古今東西ゾンビ映画サンプリングしまくりのマッシュアップで。
後から気付いて感動したよあれウンベルト・レンツィの『ナイトメア・シティ』もヴィンセント・ドーンの『ヘル・オブ・ザ・リビングデッド』もサンプリングされてるじゃないですか!
見捨てられたゴミ映画を積極的にリサイクルしていく姿勢はオタクの鏡。実際にサンプリングしているかどうかは知りませんが…

干潟に自生する水晶の木々、の絵面が鮮烈な『アナイアレイション』だったが、このへんJ・G・バラードなんかはやはり意識したところなんじゃないか思う。『終着の浜辺』とか『結晶世界』。あれが、あの光景が実際に映像になって眼前に広がるんだから素直にわぁってなる。
原作がそもそもそういう気があるのかもしれないが、隕石で変異といったらラヴクラフトの『宇宙からの色』が浮かび、不明領域への探検で人間の概念を崩壊させる驚異に遭遇するのは、牽強付会と言われても『狂気の山脈にて』がダブってしまう。

災厄なのかは知らないがこれが災厄と言えるなら災厄の震源地たる穴ぼこの暗黒は、ラブクラフトとかロバート・E・ハワードの地底探検ものに描かれるような、なにか原初的な怖さがあった。
この穴ぼこには『遊星からの物体X』の後半を重ねることもできるかもしれない。『遊星からの物体X』にしても『狂気の山脈にて』の影響が色濃く出ているわけだから、結局ラヴクラフトに帰ってはくる。
だいたい、エリアXから帰還した主人公が事の顛末を報告していく(そして正常ではないと判断される)回想形式が既にラヴクラフト的だろう。

抑揚の無いストーリーテリングはアクションとか恐怖とかそこそこ入ってるはずなのにエキサイティン感なし。なんだかえらい淡泊な映画。でも淡泊な映画でいいんじゃないですか、オフビートな人類の終焉って感じで。
ダメだこりゃもう人類に為す術ないねこりゃ、って気になってくるんだよマグロ演出。それが静かにじんわり恐ろしいという話。色々オマージュとかサンプリングしている映画に思うが、基調はバラードとかタルコフスキーの無言で死に向かう、でもその死が少し心地よく感じられてしまう世界なんだろうと思う。抵抗できない死の誘惑のおそろしさ。

奇怪だけれども奇怪の美といえるほど洗練されてない妙なB級感覚もなんか味。全然楽しくはないけど噛めば噛むほど沁みてきそうなスルメ型の面白い映画でした。

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『偽りなき者』とかのヒューマン社会派トマス・ヴィンターベアが撮ったヌーヴェルヴァーグ気味の変な終末系SF。なにがなんだかよくわからないが宗教画的な画がとてもよかったので脳に染みこむ。

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全滅領域 (サザーン・リーチ1)

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