『グレート・アドベンチャー』の感想(若干のネタバレは気にしない人用)

《推定睡眠時間:15分》

映画冒頭の刑期を終えてシャバに出てきたアンディ・ラウは俺の中で過去最高のアンディ・ラウ。あの苦虫を嚙み潰したようなツラに宿る深い憂愁が久々にスクリーンで見たら一層深度と鋭さを増していたから良い歳の取り方をしてるよ。健さん化が著しい。
どこから見ても天涯孤独のアンディ・ラウなので出迎える人間もいないだろうと思われたが、ただ一人彼の出所を心待ちにしている男がいた。
それが元大泥棒のアンディ・ラウと因縁浅からぬ一匹狼の刑事ジャン・レノっていうんだからもう、ノワール臭が。4DXでもないのに映画館ちょっと臭かったですよノワール臭で。それノワール臭じゃなくて居酒屋臭だと思いますけどね新宿武蔵野館で見たから(テナントの関係か、いつ行っても場内がほんのり臭い)。

これは確実に渋い。黒い色気むんむんの絵面にハートが震えたが、でも5分後にはアンディ・ラウがモモンガスーツで大空を滑空して秘宝奪取に向かってましたから予想通りだけど予想と違って別の意味で震えた。
いや確かに『グレート・アドベンチャー』の邦題から想像されるのはこういうやつなんですけど…しかし最初に出てくる絶対に抱かれたいアンディ・ラウとのギャップが…。
グレートとか盛っているが英題は『THE ADVENTURERS』で、この場合のアドベンチャーが指すのはおそらく『冒険者たち』的なものだろうから冒険映画っぽく宣伝してるが中身はノワール風味の可能性大、と踏んでいたが端的に言って『冒険者たち』じゃなくて三期目以降とかの『ルパン三世』でしたね。

なんかスーパーガジェットの数々と洗練度低めの窃盗テクを駆使してですねアンディ・ラウ、スー・チー、トニー・ヤンの泥棒チームがたいへん価値のあるという宝石シリーズを奪ってくんです。
盗み先はみんな盗人にやさしいザル警備なのでポンポン盗れる。大きな鉄扉で強固にアルソックされたはずのオークション保管庫の壁にものの数分で穴が開いてしまうとかどうなんだと思うが(でも本当は物凄く堅い壁でスーパーガジェットのおかげで破れたのかもしれない。いやそうだとしても誰か気付けよというツッコミ点があるが)、コミック的な軽い調子のケイパーもの又はピカレスクと受け止めればええんである。つまりやはり初期のでも最近のでもない『ルパン三世』。

アンディ・ラウ逮捕に執念を燃す刑事ジャン・レノはさしずめ銭形警部。ムサイ顔立ちもなんかジャンルが近い。
じゃあお色気攻撃で窃盗ターゲットの懐に飛び込むスー・チーは峰不二子だな。スー・チーが不二子か。うーん。スー・チーが不二子か…。
それはともかくスー・チーが一瞬だけ完全ビョーク化する場面は見物。あれもうビョーク本人よりビョークだった。

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いやでも絶対ノワールしてるじゃんみたいな俺のファーストインプレッション実は間違ってなかったからね。そこは強調しておくから。だってアンディ・ラウに宝石奪取を指示する黒幕がエリック・ツァンなんだもん。
アンディ・ラウ本当は恋人のチャン・チンチュー(透明感があってたいへんうつくしい)と平和に暮らしたかったから泥棒稼業やめようと思ってたんですけど、でもエリック・ツァンはそれを許さなくて親の恩を忘れたか的な儒教的パワハラで盗みやらせるっていう構図これ完全に『インファナル・アフェア』じゃねぇかよ。

確信犯だ。これは確信犯だ。ジャン・レノとアンディ・ラウのメキシカン・スタンドオフまであるから確信犯だし、ある意味『仁義なき戦い』シリーズみたいなパラレル感だ。回想大量挿入で伏線を豪快に回収していく後半の展開とかものすごく『インファナル・アフェア』である…。
ていうわけで大して面白くない『ルパン三世』的秘宝奪取アドベンチャーは途中で方向転換、やっぱりというか最後は大して面白くない暗黒街の住民たちの騙し合いと銃撃戦に収束する。
銭形的役割のジャン・レノはそうなったら居場所がないのでいつの間にか画面から姿を消していた。なんか丁寧なところと雑なところがハッキリした香港映画らしい潔い作劇。

毒にも薬にもならないしグレートでもなければそんなにアドベンチャーもしない、遺跡とか謎の孤島とかに入ってったりもしない、こう、ゆるいユーモアとおもしろガジェットと風光明媚な観光地の景色なんか散りばめながら恋愛ドラマとか仁義ドラマとか適度な謎の提示と回収とか一通り見せていく丁寧なストーリーテリングがなされているので堅実だけれども、面白くないわけではないのだけれども、しかし実にケレン味のない映画だなぁというのがベース印象なんですけど。
でも一つの映画に『冒険者たち』と『ルパン三世』と『インファナル・アフェア』が入ってるって考えたらお得感はあるんじゃないすかね。ノワールだってフレンチノワールと香港ノワールの二種類味わえるんだぞ。

こういうのは悪く言えば中途半端で節操がないということかもしれませんがー、ともあれ激渋アンディ・ラウとエリック・ツァンの同窓会的再会が見れただけでまぁ、あんま面白くないけど元は取れたなっていう感じはありましたね俺は。

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同窓会的再会というよりこれはノワール的呪縛。むしろノワール無間地獄。なんか久々に見たくなったよ『インファナル・アフェア』の最終章。三部作で一番好き(一番救いが無いので)。

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