【ネッフリ】『ファースト・マッチ』の感想

ファースト・マッチ[Netflix]

《推定ながら見時間:40分》

出口の見えない貧困生活とダーティな人間関係の中で精神が荒廃していくばかりの粗野な若者が一縷の希望をスポーツに託す系のジャンル略してスポ困。の映画。
むかしむかしはレスリング界の期待の新星だった親父が何があったか(たぶんダメな奴が群がったんだろう)ムショへドン。

母親は死んでいたので残された娘は親戚だの里親だの転々とするが悪環境に馴染めずバッドアス的なガールに成長、すぐ人に殴りかかったりするのでラティーナの里親もソーシャルワーカーもどうしたもんかねと考えあぐねていたところに転機。
例の親父の影響でレスリング部に入部した幼馴染みの男子に触発されて、この鉄火娘(エルヴィル・エマニュエル)は男子レスリング部に殴り込みをかけるのだった。

さすがあの親父の血を引く娘! ということでいささか都合が良すぎるような気もするがエルヴィル・エマニュエルは男子レスリング部でめきめき頭角を現わして、こりゃスポーツ推薦で大学進学ワンチャンあるぞみたいな王道展開を突き進む。
持て余す怒りをトレーニングとファイトで発散するようになったのでようやく更正の道が見えたと周囲の人間はホッと胸をなで下ろすのだったが、やはり王道ということでいつの間にか出所していた親父が諸々台無しにしてしまう。

後から考えてみればよくあるパターンな気もするが、なんだか要領を得ないネッフリのあらすじが功を奏してそこから先にちょっとだけ驚く。
この親父はビッグなファイトマネーと引き換えに文字通り血反吐を吐きながら戦う地下ボクシングの世界に娘を送り込もうとするんであった。うーん、外道。

それにしてもこの娘と親父のどうしようもない関係が泣かせるなぁ。なんか恋人同士みたいな親密な距離感でちょっと心中ザワついたが、違うんだよ近親愛とかじゃなくて共依存なんですよね。
共依存だしお互いに人生をアップデートできてないっていう。娘にしたら今の落ちぶれた親父も昔の優しくて誇らしかった親父のままで、親父にしたら成長した今の娘もムショに入る前の女児のままで。

新しい友人関係とか擬似的な家族関係をお互いに中々築けないから、その現実と乖離した閉じたイメージの中で共依存するしかなくて、それで共に堕ちていくっていう状況が誰を批判するでもなく二人に寄り添うように描かれていて…そこすげぇ良かったですね。
でまた娘の関係者が声高に何か訴えたりしないところが。レスリング部のコーチもソーシャルワーカーもラティーナの里親も幼馴染みも娘が「こいつやべぇこと手を出してるな」っていうの薄々勘づいてるんですけど、たまにアドバイスを出しながら見守るだけで、正義とか持論を押しつけたり無理に親父から引き離そうとかしないと。

どんな進路を選ぼうがどんな人間関係を選ぼうがそれはその人自身が決めることだからっていうドライなヒューマニズム。なんとか娘を支えようとする人々と娘のささやかなふれあいの機微。
奇を衒ったりしないでそういうの真正面からぶつけてくるんで、これはええもん見たなって感じあったなぁ。
あと地下ボクシング界のクイーンの人、出番3分くらいですけど体温を感じさせない据わった目と見事な戦闘体型が超かっこいいしクイーンの貫禄たっぷりでたいへん好む。スピンオフ希望(ない)。

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金銭問題により望まない地下ボクシングを半ば強要される貧困女子がいたかと思えば空虚な日々からの脱出を夢見て自ら地下ボクシングに参戦する御曹司男子もいる。
人生いろいろ、地下ボクシングもいろいろ。

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