ヤズディ映画『バハールの涙』感想文

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《推定睡眠時間:0分》

ISと戦う主にIS被害者から成る女性志願兵部隊に戦場ジャーナリストが密着、みたいなお話ですがまずどこの国の話なのかがよくわからず(冒頭でテロップ出てたと思いますが…)ISって言ってるからシリアの北の方かなぁと思って観てましたがイラク北部でした。ひどいと思うが仕方が無い。知らないからそういうの。
どこの次はだれですがこれもぼんやりと、ISだからあんま見境なく襲ってるんだろうと思っていたら主人公バハールはヤズディ教徒、IS的には異教徒なのでそれでこの人たちの村は標的になった、らしい。

…一睡もしないで観たのに俺ぜんぜん理解できてない。なんかやばい。ヤズディ教徒とか何やってる人だか完璧に知らないし。
やばいので検索するとこんな大変よい副読記事があったので超助かってしまった。理解が捗るのでちょっと引用したい。

宗教的・民族的な少数派であるヤズディの信仰はゾロアスター教、イスラム教、ミトラ信教、キリスト教などに通じ、口承で伝えられてきたと言われている。
(…)
ヤズディはクルド人だとされる報道が多いが、私が出会ったヤズディは、
「私たちはクルド人ではない。ヤズディは宗教であると同時に、独立した民族としてのアイデンティティをもっている」
と話していたのが印象に残っている。
イスラム国に「性的暴力」受け追われた少数民族「ヤズディ」の悲劇

なぁるほど、それでバハールは戦いに際してなにやら神話的な歌を歌っていたのか。ありがとう大衆受けしなさそうなニッチ悲劇の記事をちゃんと載せてくれた現代ビジネス。ありがとう記事を寄せてくれたフォトジャーナリストの林典子という人。
記事の中にはバハールと同じようにIS誘拐→逃亡後クルド人女性兵士部隊に参加という経歴の人も出てくるので、俺のように映画を観て五里霧中状態の人は目を通してみるとよいです。映画のだいたいの背景がわかる。

それで映画の感想なんですが結構エンタメに寄る。音楽も演出もドラマティックに盛り上がって、狂言回し役の女戦場ジャーナリストなんて黒アイパッチで決めた戦士ルックスで、かなり戦争アクションとして乗れる感じ。
いかにも社会派然とした映画なんだろうなぁというのが予告編を観ての印象だったからこれは意外。といっても題材が題材なので別に気楽な映画ではないのですが、映画の文法はグローバルに抽象化されたハリウッド的娯楽映画のそれなのだった。

おそらく女たちの悲劇をどう客に伝達するかという点を重視したからだろう。劇中の出来事が特定の民族や宗教ではなくて誰にでも起こりうることとして感じられるように、観ている誰もがバハールに感情を乗せてその戦いを自分たちの問題として考えることができるようにという工夫。
奇しくも『七つの会議』と同じ独白スタイルのエンドロールがそのへんの意図をストレートに伝えていたように思う。英語、フランス語、あとなんとか語が入り交じる多声性もその表れかもしれない。

面白かったがちょっとそっち方面に寄せ過ぎた観もある。事情に通じてない人が言っても甚だ説得力がないが、上の短い記事を読むだけでもヤズディの受難はたいへん複雑かつ多面的なものとわかるので、寓話的な趣の戦争アクションとして乗れるのはいいがヤズディとその受難の固有性にもう少し物語の面で立ち入って欲しくもあった。
そう思わせることを目的とした映画だろうからそれでいいのだろうけれども。

【ママー!これ買ってー!】


ヤズディの祈り

ISに故郷を追われたヤズディたちに取材したこの写真集の刊行に際して寄稿されたのが上の記事らしい。

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