『映画ドラえもん のび太の月面探査記』鑑賞記(多少ネタバレあり注意)

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《推定睡眠時間:15分》

パンフレットによると今回の映画ドラえもんはランタイム111分と2時間近いので長くても100分程度だった旧映画ドラえもんで育った身からすると若干長い気がしたが15分寝ているので体感的には変わらなかった。仕事帰りの映画、寝るよね。ぼくは仕事から帰らなくても寝る人ですが…。

それにしても111分。映画ドラえもんは一通り観ているとはいえ各作品のランタイムまでは頭に入っていないのであれですが、これ映画ドラえもん史上最長かそれに並ぶくらいのランタイムじゃないすかね。
時間が長いのは色んな要素が詰まっているからで、心がチャイルドだから素直に驚いてしまったが実はこれ月だけのお話ではなく…というかほぼ月の話ではないのだった。

F先生脚本&芝山監督時代の旧映画ドラえもんだったら確実に「ムーンウォーカーズ」と読ませたに違いないこのタイトル、月を前面に打ち出したポスター等々のキャンペーン、そして映画ドラえもんには月が舞台の話がなかったのでどうせ書くなら月でやってみたかったという脚本担当の小説家・辻村深月の発言…どれを取っても完璧に月に関する映画と思わせたが月は物語の中継点で、本丸は月から遠く離れたカグヤ星。

他の映画ドラえもんで言えばこのカグヤ星というのは『ロボット王国(キングダム)』のロボット星みたいなところ。
その星では権力を一手に握るミカド(そのデザインは『海底鬼岩城』のポセイドンのようであった)が恐怖で人民を支配し他惑星の侵略に熱を上げ、かつてカグヤ星に存在したとまことしやかに囁かれる伝説のウサ耳超能力者(エスパルと呼ばれる)を血眼になって広い宇宙に捜している。

カグヤ星が『ロボット王国』なら月は『ねじ巻き都市(シティ!)冒険記』といったところ。
映画は旧映画ドラえもん的にのび太のピュアな空想と大言壮語から始まって、月にはウサギがいるはずだいやむしろいてもらわないと困る! とのび太に泣きつかれたドラえもんが異説クラブメンバーズバッジを出してやるお馴染みの展開に。

身につけた人間の目には予め設定した異説が現実に見えてしまう危険度バリ高なこのひみつ道具で月にウサギがいるという「伝説」を事実にしてしまえば、のび太はジャイスネにいじめられなくて済む。
ということで月にウサギ王国を作るのびドラ。しかしそこには先住民のエスパルがおり、のび太たちはエスパルたちを狙うミカド軍と戦うことになるのだった。

『ロボット王国』と『ねじ巻き都市冒険記』、趣向の異なる二つのパートと二つの舞台を繋ぐ構成は『雲の王国』っぽくもあり、またミカドがかつては自分たちの星の者で今は月にこっそり住んでいるエスパルたちの捕獲に執心するあたりは『アニマル惑星(プラネット!!)』っぽくも『宇宙小戦争(リトルスターウォーズ!!!)』っぽくもある。
要するに今までの映画ドラえもんがやってきたことの断片をかき集めて一つの物語に組み込んでいるので、お話の密度は濃くランタイムは長くなるのだった。

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ややこしいのは異説と定説を入れ替える異説クラブメンバーズバッジを出しておきながらその異説空間の中に実際に月のウサギたちの国を箱庭的に作ってしまうところで、これは基になった『異説クラブメンバーズバッジ』の回でもドラえもんとのび太が地球空洞説の異説を現実にした上でその空洞に地底生物の箱庭パラダイスを作ってるわけですが(余談ながらこの回は後々大長編の『竜の騎士』や『雲の王国』に発展したりしている)、『月面』は舞台を月に移している都合バッジの意義が回りくどくてわかりにくい。

『ねじ巻き都市冒険記』みたいにバッジ使わないで直に箱庭楽園作って『雲の王国』みたいに外からは見えなくなるひみつ道具でそこをシールドしちゃえばいいのに…とかちょっと思い、このお話には月面探査が進んでいるという前提があるので一応バッジ着けて異説空間を作り出す必要はあるわけですが、そのわかりにくいところに異説云々とはまったく別にカグヤ星の話が入ってくる。
観てる途中、近くの席のキッズが「これドラえもん?」とクエスチョンを出して母親を笑わせていたが、あのキッズの容赦ない批評に俺は内心100回ぐらい頷いた。たぶん有村某より映画を正確に観てますねあのキッズ批評家は。キッズ恐るべし。

監督は新映画ドラえもんのリメイクもの大傑作『新・のび太の日本誕生』を手掛けた八鍬新之介で脚本はドラえもんファンを公言する前述の辻村深月。
俺思ったんですが、たぶんこれそういう人たちのドラえもん愛がスパークした結果として収まりが悪くなっちゃってんじゃないすかね。
あれもやろうこれもやろうって色々詰め込んでるうちに軸がわかんなくなっちゃって、それぞれの場面はサービス全開でシンプルに面白いのだけれども通して観るとその面白さが物語への疑問符で結構曇っちゃったっていうか。

難しいっすよね。『月面』は全然つまらないわけじゃないし、竹取物語モチーフのカグヤ星のビジュアルは独特で良い(警備ロボットがこわい!)、うるさくない程度にアクションもユーモアもいっぱいある(のび太の全裸芸が!)、月のウサギ王国は楽しいし、のび太たちと敵のミカドを共に月の「異説」に憑かれた者として鏡像関係に置く構図もちょっとした皮肉が効いていてさすが本業小説家の人が書いたシナリオだなぁとか思う。

メリエスの『月世界旅行』から『竹取物語』『かちかち山』『因幡の白兎』等々、月とウサギをテーマに色々パロったオープニングも大変気が利いていた。アニメーションとしての充実度は新映画ドラえもんの中でも屈指じゃなかろうか。

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でもたとえば、俺は去年のドラ映画だった『のび太の宝島』が全然好きじゃないんですが、『宝島』は映画で何を見せるかっていうコアの部分がわりとハッキリしていて、だからその意味では作りとしては『月面』より遙かに粗くて独りよがりな『宝島』の方が映画観たなっていう余韻とかカタルシスがあったりしたわけです。

身も蓋もないことを言ってしまえば、こういうお話なら月パートを抜いて『宇宙開拓史』とか『宇宙小戦争』みたいにしてもよかったよなぁ。
月面探査が進んで月に住めなくなったエスパルたちが地球に逃げてきて、そこでのび太たちと出会ったところにミカドの魔の手が伸びてきて…っていう方が筋としては強引だけれども映画的には自然だよなっていうところがあって、これは完全に懐古主義者の戯言なんですけれどもやっぱ旧映画ドラえもんはそのへんの見せ方が巧かった、映画として完成されてたなぁとか思ったりした、次第、です。

あとエンドロール後の次回作プチ予告ですがいやびっくりした。毎度びっくりしているが今回はとくにびっくりしたかもしれない。
なんとドラえもんが恐竜王国行ってティラノサウルスに追われてました。仄めかしとか一切なし、もう来年のドラ映画は完全にドラ映画の定番、恐竜ものです。

新映画ドラえもんだと一発目に『のび太の恐竜2006』をやってるわけですが、今更恐竜もので新ネタがあるのだろうか…『竜の騎士』リメイクの可能性もあるがそうすると『月面』と微妙にネタ被りしてしまうし、最大の見所と言えるあのオチは2020年には通用しなさそうだし…『銀河超特急(エクスプレス!!!!)』か? 恐竜ものと見せかけて恐竜アトラクションのある宇宙テーマパークが出てくる『銀河超特急』か!? もしやVR的な恐竜ゲームの出てくる『夢幻三剣士』のリメイクか!?

いやぁ、来年のドラ映画も楽しみですね! どうかと思うところも色々あったけど今年も楽しかったよドラえも~ん!

【ママー!これ買ってー!】


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F先生の最後の仕事(未完)としても武田鉄矢の降板により矢沢永吉がエンディングテーマを歌った唯一のドラ映画としても記憶に残る『ねじ巻き都市(シティ)』を、『移動都市(モータル・エンジン)』の公開された今こそ。

↓あまり関連しない関連本


藤子・F・不二雄の異説クラブ<完全版>〔F全集〕別巻: 藤子・F・不二雄大全集別巻 (藤子・F・不二雄大全集 別巻)

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あああ

はじめまして。こんばんは。いつも拝見しております。
このブログの映画レビューは、単なる作品の感想ではなくてブログ主さんの人文系〜サブカルの知識を活かした作品解説といった趣きがあり、とても読み応えがあるので好きです。
文体もセンスあるし、ブログ主さんはプロの物書きの方なんでしょうかね?

ところで、私は最近ノーザンソウルという映画を観たのですが、これがちょっとどう観ていいか分からない感じの映画で、そんなに映画に詳しくない私にとってはなんというか消化しきれないものがあってモヤモヤしています。
リクエストというわけではないのですが、もしブログ主さんがノーザンソウルご覧になっていたらぜひレビューしていただきたいなと思いました。
(ドラえもんと関係ないコメントですみません。とりあえず最新記事にコメント残そうと思ったので……)

よもぎ

テレビ放映は見なくなって久しいですがドラ映画は毎年観に行ってるオッサンファンです。
本作は個人的に好きな二大良リメイク『大魔境・日本誕生』を監督された八鍬監督の作品とあって期待していたのですが、正直ちょっと微妙な感じでしたね。
書かれてる感想と被りますが、月面探索とタイトルしているにも関わらず月がほぼ空気。月面環境も最初から最後まで地球相当でしたし、他所の星のゴタゴタも出てきてどっちつかずな感じでしたね。
宇宙兄弟で描写されてましたが、重力1/6・空気無しの環境だとメジャーリーガーみたいな投球が出来るとか、折角ドラえもんで月に行くならそういう月面環境を楽しむシーンがあれば子供の興味を作品だけでなく『月』というサイエンスにもひく事が出来るんじゃないかなと思いました。
やはり月文明を作るというのと、他所の星の問題を解決するという、関係ない二つの要素を詰め込んだ弊害でしょうかね。どっちか片方に纏めるべきだったかと。
あと根本的な問題として、テレビや漫画のワンエピソードならともかく、映画のメインに据える道具としては異説クラブメンバーズバッジの『楽しそう』感が弱いですね。
もしもボックス、雲固めガス、絵本入り込み靴、夢見る機etcと、映画のメインになる道具は子供が一見しただけで自分も使ってみたいと思える道具が多いですが、異説バッジは子供にはどう使えば良いのかよく分からないでしょうし、大人から見ても制限や効果範囲がよく分からんので妄想が広がりにくい難しい道具ですし。
作品全体として悪くは無かったんですが、一つ一つの要素全てが消化不良な感じで勿体ないと感じた映画でしたね。
恒例とも言えるED後の来年の内容チョイ出しではガッツリ恐竜映して来ましたね。最近リメイク作ってないのでそろそろ過去作のリメイクだとすれば、恐竜メインなのは『のび太の恐竜』か『竜の騎士』。『恐竜』は一回リメイク済みとは言え2006年の話で間が空いてるし新元号一発目に大長編一作目のリメイクというのを狙ってくる可能性も無くは無いですが、やっぱ本命は『竜の騎士』ですかね。ちょっとだけ恐竜出てくるのまで含めると結構選択肢ありますが。
個人的に竜の騎士、創世日記、ひみつ道具博物館みたいな倒すべき悪の親玉が居ないタイトルが好きで、竜の騎士は特に好みなのでリメイク来るならとても楽しみです。

まみっぺ

こんにちは。昨日見てきました。モヤモヤするので、いろいろな方のレビュー拝見して、ようやく同じような方に出会えました〜。映画見終わって、小2の息子が「結局ムービットたちは存在するの?しないの?ルカたちはバッジつけただけだから、外せば元どおりだなら力は消えないんじゃないの?お風呂に入るとき、バッジどうするの?」

私もそう思う!と、2人で話したんですが結論出ず。「ま、いっか。アニメだからね〜」と、息子の方が大人な発言してまとめてましたね。

今回一番肝心な道具が曖昧なことが残念でした。粘土で作らなくても、異説だから月の生物は見えるはずですよね。地動説のように。

それでもおもしろいところや感動することはたくさんあって、楽しめました。まさかのスネ夫に泣かされたり。でも…やっぱりなんか惜しい映画でしたね。