映画『ロイヤルコーギー レックスの大冒険』感想文

《推定睡眠時間:10分》

ロイヤルコーギーというのはバッキンガム宮殿で優雅に暮らす王室コーギーたちのことだそうで、王室情報なんか一切持ち合わせていないのでそんなの本当にいるんだろうかと思ってグーグル検索にかけると信じがたい微笑ましさに泣いてしまった。なんてあざとい。あぁかわいい。かわいいなぁエリザベス女王とコーギーズ。

映画の中でも主人公のロイヤルコーギー・レックスくんが自分のグッズをたくさん作ってもらったことを誇っておりましたがこれも実際に英国王室のオフィシャルショップで売ってるらしい。かわいい犬で点数稼ぎか。こういうところは本当に汚いですよね英国王室は。ほしいからハンカチとかぬいぐるみとかくれ。

ちなみ映画の中ではコーギーズが現役でしたが純血のロイヤルコーギーは最後の1匹が昨年ガンで亡くなってしまったとのこと。今も雑多な犬種のロイヤルドッグがエリザベス女王の文字通りの意味でお膝元にワンワンしているそうですが、なるほどそういう事情が映画の背景にはあったんですなぁと思うとまた涙が。
あの酷いオチ(褒めてる)も笑って追悼感が出るので意外と周到な映画であった。ただ本当に酷いオチだったとは思う。

それで映画のお話はというと今日も平和なバッキンガム宮殿にトランプ襲来、その傍若無人なトランプ仕草によりレックスくんは王室暮らしがちょっと嫌になって家出してしまう。犬の世界まで破壊する恐るべしトランプ外交である。
宮殿から飛び出したレックスくんは色々あってその高貴な血筋を知られぬまま野良犬保護施設に収容されてしまう。そこは人間たちから見捨てられた犬たちが夜な夜ドッグファイトに興じる暴力の世界。果たしてレックスくんは生き残ることができるのだろうか。そしてロイヤルコーギーの栄誉を取り戻すことはできるのだろうか…とこういう感じ。

3つ驚いた点がある。まずレックスくんは王室と保護施設しか行かないので大冒険じゃない。次にトランプのせいで王室(犬)がめちゃくちゃにというストレートなトランプディス。最後に下ネタ・パロディ・バイオレンスありのまさかのムショものジャンル。悪い意味ではないがそんな映画だとはまったく思っていなかった(この邦題から想像できるわけがないだろ)

去年トランプがエリザベス女王に会ったときにその非礼がメディアでネタにされていたので、そのへんの時事ネタからスタートした企画だったりするのかもしれない。それにしてもなんでムショものなんだろう。面白かったから別にいいが、なにやらギラギラしたところをコーギーのかわいさで隠し切れていない映画であった。

しかしこういうファミリィな映画でぶっ込まれるトランプディスは表現こそマイルドでも破壊力は高い。トランプ歴訪にはメラニア夫人も同行していて彼女がテキサス生まれの♀コーギーを連れてくるのだが、厚化粧のメラニアンコーギーを見てロイヤルコーギーたちうっへぇ不細工! とディスリミッターを一斉解除。

そんな直截的に言わなくても。だが容赦がないのは言葉の直截さよりも比喩としか受け取れない描写であった。権力志向のメラニアンコーギーはロイタルコーギーズのトップドッグであるレックスくんを見るやハート型のケツを振って超誘惑、どうぶつの求愛行動と言われれば反論はできないがいや反論するよこれコーギーの姿を借りたメラニアディスだろう厚化粧の件も含めて。

えぇって思ったよ。『サウスパーク』とかだったら当たり前の光景なので逆に安心感しかないですけどこっちは可愛いワンちゃんが大活躍するファミリームービーだと思って観に来てるから。可愛いワンちゃんが大活躍するファミリームービーと思っていた映画で急にそんな容赦のないディス入ってきたらそれはびっくりします。

王室晩餐会の席で隣に座った女(これは誰だったんだろう)に「誘ってるのかぁ?」とか言ったりする最低トランプの金玉をロイヤルコーギーに噛ませるとか犬だったらいいよねと言わんばかりの作り手の雑配慮がこわい。たしかにトランプが金玉を食われたら痛快でおもしろいのでこっちも笑って見るし作り手も笑いながら作ったと思うがその笑い顔はわりと敵対者をリンチして殺す時のメキシコ麻薬カルテルの笑い顔に近いのではないかと思う。マフィアとかカルテルの人は概して犬が好きですからね。勝手に概するな。

という点からすると、これはわりあい大人向けの映画だったのかもしれない。ムショに入れられたレックスくんが地下の「ファイトクラブ」でのドッグファイトに勝つべくトレーニングをする場面は『ロッキー』のパロディになっているが、そこでムショ仲間の一人が「『ロッキー』のように勝つんだよ!」と言うとツッコミ役のムショ仲間が「『ロッキー』は負けただろ」、そして「あぁ『ロッキー2』ね」ってそんな会話お子様がわかるわけないだろ。「ルール1、ファイトクラブは存在しない…」じゃねぇよ。なんで今更『ファイトクラブ』なんだよそれお前らの趣味だろ絶対。

ワンちゃんがいっぱい出てくるので見た目かわいいですがロイヤルコーギーズの権力闘争もえげつないしファミリー映画と油断してかかると殴られるなこれは。しかし殴って殴られて生を実感せよがファイトクラブ精神。馴れ合いとか同情なんて糞食らえだ。ある意味その精神に忠実などうぶつ映画だったので、まぁ基本スラップスティックコメディですからお子様が観てもそこそこおもしろいとは思いますが、そのへん客とお子様に媚びない映画であった。

あとエリザベス女王とフィリップの微笑ましい老夫婦っぷり、よかったですね。実はベルギー製らしいが英国的ブラックユーモアとひねくれた人情味が疲れたメンタルに効きました。ちなみに一番笑ったところは「何も見えません!」(子供なので)

【ママー!これ買ってー!】


英国Royal Collection(ロイヤルコレクション) エリザベス女王 バッキンガム宮殿 コーギーのぬいぐるみ&コーギーのキーホルダー

これ本物なのかなぁ。

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