ちゃんと授業に出るキラキラ映画『胸が鳴るのは君のせい』感想文

投稿日: カテゴリー 居眠り映画館タグ , , ,

《推定睡眠時間:0分》

この一年の間にカミングスーン的なキラキラ映画の新作ポスターを他にあと二作品ぐらい映画館で見た記憶があるが観に行った記憶はないのでいつの間にか公開延期になってしまったらしい(公開されてれば観に行ってる)。キラキラ業界も新コロ禍でたいへんだ。考えてみればキラキラ映画を観るのも相当久しぶりな…と思ったがブログ内検索をかけてみたら今年の二月に『ライアー×ライアー』観てた。さすがキラキラ映画、流星のようにキラキラと輝いてすぐに視界から消えてしまう…。

流星といえば横浜流星くんが出演した『L♡DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』というキラキラ映画もありましたがこれは東映配給ということでやはり会社の血がそうさせるのか非常にこうフィジカルで泥臭いキラキラというかギラギラ映画、どことなくやさぐれ感の漂うロケ地や登場人物の欲望丸出しっぷりで他社配給のキラキラ映画と一線を画す東映キラキラを世界中で俺一人だけが東映ファンシーバイオレンスと呼んでいるが、『胸が鳴るのは君のせい』もその一本ということで春風のように爽やかなタイトルとは裏腹に主要イケメン浮所飛貴が映画開始五分で同級生を殴って停学というバイオレンス展開を見せていた。

修学旅行だか林間学校だか知らないがクラスでどっかのキャンプ場に行けば男子たちが他校の美少女(原菜乃華)を見てかわいー! と猿のように興奮して沸き勃ち夜になれば女子たちが当然のように禁止されている男子部屋行きを決行、あまり乗り気ではなかったが「間違いがないように」監視するため同行した主人公女子(白石聖)は見つかったら暴力指導間違いナシの生活指導教師(城島茂!)の接近を受けて一人の男子に布団に隠れるよう促されるが、どうしたものかとオタオタしているうちに同じ部屋にいた意中の人・浮所飛貴によって彼の布団へと引きずり込まれる。「お前、さっきの男の名前を知ってるのか?」「え…知らないけど…」「名前も知らない男と同じ布団に入るんじゃねぇよ」…これキラキラ映画の会話かね!

さすが東映ファンシーバイオレンス、随所にファジーというよりも絞り値を間違えているとしか思えないキラふわショットは入ってくるが、その過剰なキラふわ映像をもってしても思春期恋愛の生々しさと人間の業をまったく隠せていない。キラキラ映画の恋愛といえば性欲など存在しないかのようなプラトニックが基本であるが、ゆーてキス止まりとはいえ東映ファンシーバイオレンスの恋愛は性欲バリバリのアンチプラトニックである。なんというか非常にこう、正直でよい。

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とこんな風に書けばさぞ大学進学率の低い学校のお話なのであろうと思われるかもしれないが意外なことにこの映画は数あるキラキラ映画の中でもトップクラスで主人公やメインイケメンが授業に出ている映画である。いや別に他のキラキラ映画の登場人物だって授業には出ているんだろうが授業シーンをちゃんと撮る映画というのは案外ない。そんな退屈なシーンに時間を割くくらいなら地元の最新アウトレットモールとか駅前のタピオカ屋とか小洒落たカッフェでのデートシーンを入れて少しでもキラキラな雰囲気を醸そうとするのがキラキラ映画というものだ。

キャンプ場もこれといって特徴の無いっていうがぶっちゃけちょっと汚ねぇキャンプ場だしクラスメート有志でどっかの辺鄙な海岸に遊びに行く場面でも水着でバシャバシャはしゃぐのかと思ったら撮影時期的に無理だったのか砂浜でこぢんまりと遊んでうらぶれた(ように見える)海岸沿いの道路を歩くだけだしメインロケ地の高校もキラキラ映画によく出てくるディズニーランドみたいにカラフルでシャレオツな憧れ高校ではなくあちこちにガタが来ている普通の公立校だしでってなんだこの地域密着感は! 全然キラキラしてねぇ!

なんか知らんがちょっとだけイイ話感が出てしまった。近所にトレンドスポットがあるわけでもなく学校に先進的な教育とか素敵な制服があるわけでもなくこれといってドラマティックな出来事が起こるわけでもない郊外の退屈な高校生活をこの健気な高校生たちは精一杯謳歌しようとしているし、しかも退屈な日常にサジを投げることなくちゃんと授業に出ている…停学を食らった浮所飛貴くんもそれでグレたりなどせずその後は普通に学校来てる…偉くないか。いや偉いぞ君たちは!

ここまでストーリーにはほぼほぼ触れていなかったがこれはどのようなお話かといえば同級生の浮所飛貴にキュンした白石聖が勇気を出して告白するも「ごめん俺友達としてしか見れないわ」と定番の破談、しかし白石聖は「わたし君のこと好きでい続けるから!」と笑顔で宣言して高校最後の夏に突入するというお話である。主人公は好きだと思ったら素直に好きと言うし断られてもウジウジと悩んだりグチグチと文句を言ったりはしない。主人公に告られた側もそのことでうろたえたりいちいち距離感を測ったりはしない。そこに二三のキラキラ的定番お邪魔キャラや噛ませキャラなどが絡んでくるがドラマティックにドロついた感じには決してならず、多少の屈折はあっても「高校生活そんなもの」という具合で等身大のドラマから逸脱しない。色々あってもなんとなくみんな平和に共存してそしてちゃんと授業に出るのである(ここ重要)

いささか飾り気がなさすぎるロケ地の数々もこんな屈託のない高校恋愛の背景にはむしろちょうどよかったかもしれない。白石聖のあっけらかん高校生っぷり、噛ませイケメン板垣瑞生の負け犬の色気っぷり、あそれから序盤に出てくるキモイ顔をしているので主人公に対してやることもキモイというまことにわかりやすく(演出的に)容赦のない悪役モブ男子高校生が終盤の学園祭のシーンでは何事もなかったかのように主人公と同じ教室で学園祭の何かを作ってるのが映り込んだりするの、平凡な公立高校生活って感じで良かったです。地に足のついたキラキラ映画だねこれは。

【ママー!これ買ってー!】


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そういえばこれも横浜流星が出ていた東映ファンシーバイオレンスの代表的一本。キラキラ映画なのにファーストシーンが雨の中の不良の喧嘩というのがらしいところです。主演は平野紫耀&平祐奈。

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