思ったよりもだいぶ手堅い映画『囚人ディリ』感想文

《推定睡眠時間:20分》

これは凄い! 片時も目が離せないタミル語映画ニュージェネレーションの爆発的傑作! とかそういう感じで無駄にアゲればインターネットの人たちにはウケるので俺も僅かばかりの広告収入を僅かの中の猫の額ほどでもいいから増やすためにそうしたいところではあったが普通に間延びしてたしわりと普通だったので自分の感情には嘘をつけない。普通だよ。『囚人ディリ』普通。面白いけどびっくりするような感じの映画ではなかったよ。

なんか辺境の警察がですね麻薬組織を摘発して大量に押収した麻薬を辺境の警察署にとりあえず保管するんですよ。そしたら麻薬組織怒るじゃないですか。情報をもらしたのは誰だー警察の犬がいるぞーってなる。でスパイの炙り出しと奪われた麻薬の奪還と麻薬組織の方が警察に送り込んだスパイを通じた麻薬取締班への報復が同時にスタート。麻薬取締班はまんまと出し抜かれて毒を食らい行動不能、スパイの面が割れるのも時間の問題っぽい、押収した麻薬を置いてる警察署はまさか襲撃されるなんて誰も予期してないので警備は激薄で武器もない。絶体絶命。

で、その絶望状況でかろうじて難を逃れた麻薬取締班のリーダー的な人に縄を解かれるのがちょうど護送中だった殺人犯の主人公ディリ。こんな状況だから悪いがお前も戦ってくれというわけですが、この人は実は朝が来れば釈放の予定で、釈放されたら即、孤児院に預けられてる娘を引き取りに行くつもりだったから争い事とか関わりたくない。でも戦わないと殺されるのは目に見えているので結局はしぶしぶ協力する。さぁ果たしてどうなるのでしょうか。早く治療を受けないと毒で死ぬ麻薬取締班の運命は、色々あって新任オッサン警官一人+大学生数人とかいう完全に頼りない面々が残された警察署の運命は、そして顔も知らないパパを待つ孤児院の少女の運命は。まぁ、なんとかなるだろインド映画だし。

このあらすじを読めば即座に『要塞警察』とか『導火線』とかが頭に浮かぶ映画には詳しくても人間的にはダメな人も多いでしょうがそういう面白い映画の面白い要素をいくつも重ねているのでさぞかし面白がエクスプロージョンしているであろうと思いきや案外そうではなく一つ一つの要素がキャラクターも含めてかなり丁寧に綴られているのがたぶんこの映画の特徴。勢いで突っ走る感じじゃなくてこうこうこういう展開なら必然的にこうなりますよねっていう段取りをちゃんと踏んだ作劇で、ディリが異常にタフすぎる点だけは多少の飛躍ポイントだとしても、ちゃんと神さまを信仰してるから強いし救われるというタミル映画的定番をやっているだけとも言えるので、むしろそう見れば別にすごいジャンプしたり銃弾を手で受け止めたりとかするわけじゃないディリのタフさはかなり普通人寄りな気配さえあったりする。

だから映画としてすごいちゃんとしてるんですけど、こういうストーリーなら勢いで突っ走ってほしかったっていうのもやっぱあった。場面場面の放つエネルギーはすごかったですけどしっかりと段取りを踏むからそのエネルギーが持続しないんですよね。それが間延びを感じるゆえん。でも段取りを踏むから面白いところも沢山あって、とくにギャグの部分は一個も外さない感じで、最後の方に出てくる銃撃のあれとかね…もう、散々引っ張って引っ張って引っ張って2時間以上引っ張ってそこでそのギャグ&カタルシスを持ってくるか! という。よく計算されてる映画ではあるんですよね。

そういう感じかなぁ。なんかだから、職人仕事の映画なんじゃないですかねこれは。アクションありコメディありサスペンスあり人情ドラマありの盛り盛りフル装備でも雑味なしみたいな。そういうものとして全然悪くはなかったと思う。

【ママー!これ買ってー!】


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こういうめちゃくちゃやってる前例があるとちゃんと真面目に作ってる映画がなんだか物足りなく感じられてよくない。このめちゃくちゃも何も天然でこうなってるわけではなくちゃんと完成されためちゃくちゃではあるわけですが。

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