『空海 ーKU-KAIー 美しき王妃の謎』見てきました感想

《推定睡眠時間:0分》

さしもの染谷将太も慣れない撮影環境で本領を発揮できなかったか、とアマチュア評論家ぶって上から目線で冷静に映画を分析しちゃう俺を気取ろうとしましたがわぁってなったから無理でした。
わぁ。長安のオープンセットすげー。華美な美術すげー。エキストラの数がすげー。ファンタスティックVFXの洪水すげー。なんかわかんないけどなんかすげー。
早くも来たかネクスト『バーフバリ』枠。俺は『バーフバリ』見てないからわかんないですけど。あとやっぱり染谷将太はめちゃくちゃ馴染めてなかったです空海。染谷将太が、空海!(漫☆画太郎の漫画に出てきそうな顔をしている)

それでその空海が一休さんだったという話なので長安の平和を脅かす怪奇黒猫の謎を宮廷詩人(?)と追う伝奇ミステリーになっていたのですが俺はそのへんの背景事情まったくわからないからね。
時代区分がまずわかってないから。日本史もわからないし西洋史もわからないのにいきなり古代中国の伝奇ミステリーとかハードル高すぎるでしょ。まあ普通に義務教育を受けた人ならいきなりではないのだろうが…。

でも問題なかったというのはあんまりストーリーを考えさせる映画ではなかったから。綾はあるんだよストーリーに綾はあるんですよむしろ過剰なくらいで…えらい回りくどくて入り組んだ話だったんだけど、順序立てて論理的に理解させる気はあんまりないよなこれ、客に。
空海ネタとか阿倍仲麻呂ネタは添え物みたいなもんで、本ネタは楊貴妃だったよね。ていうことは俺は知らないけど中国のお客さん的には言わずもがな的なエピソード取り上げてファンタジック異説として出してきてるわけでしょ。日本に置き換えたら信長じつは本能寺で死んでませんでした何故なら信長エスパー宇宙人だったから説みたいなことだよねたぶん。

わかりきった物語背景をいちいち説明しねぇよっていうスタンスだから異文化の目から見ると世界が遠い。が、その距離感をダイナミック中華美ジュアルとチャイニーズパッションで無にしてしまうから最後まであんまりよくわかってないけどなんかよくわかったよ。
なんかあれだな、悲哀。悲哀だな! かなしい! 楊貴妃かなしい! たいへん! 長安がなんかたいへん! よかった! なんか最後平和に解決してよかったです!

馬鹿か。いや、これは自分に言ってるから映画の悪口じゃないですからマジで…。

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やたらストーリーの理解に難儀するのは超高速編集のせいとかもあるので本当は文化の違いとかそういう問題じゃあなく例えばここ十年ぐらいのハリウッド系アクション映画の潮流としてやたらカットを割ったり画面を暗くしたりするから何が起こってるのかよくわからないというのがあるが、問題圏としてはそちらの方に近いんだろうな。

流れるようなカメラワーク、みたいな常套句が凡庸な映画評によくありますけど『空海』ずっと流れてましたからカメラ。これは比喩じゃないからずっと流れてるから。一時期のトニー・スコット映画ぐらい流れてたから。なにがなんでも静止状態で会話とかさせないから会話は歩きながらさせるからそれが無理ならカメラの方が静止状態で話す人間のまわりをぐるぐる回ったりするから。

どうですかこれ。想像するだに疲れるでしょう。でもその疲れるカメラワークと構図の中にさらにですね山崎貴三人分くらいのVFXが常時暴れ回ってるんですよ。山崎貴のジェットストリームアタックじゃないですか。
CG出てこなかったショットこれ一つもねぇかってくらい実セットも実エキストラも分量的にはすげぇんですけどCG量も半端なくて…しかもそれがワンカットっつーね。
人間が分身したり歩きながら鶴(?)になったり、猫が化け猫になって大立ち回りを演じたりお部屋が突然無重力状態になってお皿とかぶわーって浮いたりっていう…そういうのをだよワンカットで全部やってしまうんだよカメラを横に上に後ろに前にずーっと動かしながら!

それは脳、追いつかないわ。監督がチェン・カイコーでしょ。それで撮影監督が『ココシリ』のカオ・ユーっていう人じゃん。『ココシリ』って壮絶な高地ロケ撮影が話題になったやつだよねこれ確か。チェン・カイコーの壮麗ケレンとカオ・ユーの縦横無尽ダイナミズムがドッキングしちゃったらもう、大変だよ。
並のスーパーヒーロー映画より全然スーパーヒーロー映画してた感じ。バロック的な構図といい猥雑な風俗描写といい天上から差し込む光だとか雲海を突き破る山々の突端の表現だとか、なんかルネサンス以降の西洋絵画みたいな大胆イメージの画がぐわんぐわん動いて矢継ぎ早に場面を変えていくことのアクション的興奮たるや。これには『ドクター・ストレンジ』もきっとびっくり。

美的センスは持っていないが無駄に意識だけは高く持っている人だったら怒り出しそうな細けぇことはいいんだよ系映画に見えなくもないが、色々と早すぎたり情報力が多すぎるっていうだけで細かい部分はむしろ過剰に作り込んでるぽい感じなので、ともかくその画ぢからで説明の暇もない超速強引詰め込みすぎストーリーをなんとなく納得させてしまうんだから堂々立派なおもしろい映画だとおもいますた。

【ママー!これ買ってー!】


恐怖!黒猫 [DVD]

原題『妖猫傳』で英題『LEGEND OF THE DEMON CAT』なんだからこれもう完全に空海とか蚊帳の外ですよ。そのうえ「楊貴妃」って言わないで「美しき王妃」に言い換えてるんだから配給の人も色々大変だとはおもうのですが、なんか邦題だけ馬鹿みたいじゃねぇかこれじゃあ。
空海じゃねぇよ黒猫だよ。黒猫の妖怪が襲ってくる映画だよ! っていうことでエドガー・アラン・ポーが大好きなテンサイ監督ルチオ・フルチの、好きなくせに冒涜としか思えないポー原作『恐怖! 黒猫』を貼っておきます。

↓その他のヤツ

47 Ronin (字幕版)
47 Ronin (吹替版)
※テイストの近い多国籍系歴史ファンタジーだが出来は雲泥の差。へっぽこな味はないとも言えない。

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一~巻ノ四 映画カバー合本版 (角川文庫)
※原作だそうですが映画に原作再現感はあんまりないんじゃないだろうか、なんとなく…。

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komo

ムビチケを購入していてそろそろ行かないといけないなあと思いつつ、あまり気乗りしていなかったのですが、ものすごく見たくなりました!!

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