『カメラを止めるな!』雑感(完全ネタバレなし仕様)

《推定睡眠時間:0分》

なんでも『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八が『桐島』の前田くんが撮ろうとした映画だとかなんとか言ったという。前田くんが撮ろうとした映画というフレーズの多義性はひとまず置いておくとして一義的にそれが指し示すのは『桐島』ラストに置かれた前田くん撮影のリアルPOVゾンビホラーでしょうが、その撮影を見て「ダイアリー・オブ・ザ・デッドじゃん!」と喜んでいた前田くんの相棒・武文こと前野朋哉がまるで『桐島』後の武文を演じたような『エキストランド』という邦画がそういえば去年あったと思い出す。

ざっくり『エキストランド』がいかなる映画かといえば前朋ら映画大好き人間たちが手弁当で映画を作っているうちに倫理を失い理想を失い目的を失い情熱を失い方向を見失い映画の呪印に囚われた映画ゾンビとして業界内をふらふらしながら近づく者をエサとしつつゾンビにしていくちっとも笑えないコメディ映画で、こうして並べてみると『カメラを止めるな!』とはネガポジという感じがある。

どっちも俺の観た回は舞台挨拶があって監督も登壇していたが『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督は関西ノリのバイタリティ全開な人。
一方『エキストランド』の坂下雄一郎監督は多少キャラを演じている部分もあったような気もするがビビるくらいの超ローテンションだから作る側も正反対というこれは一体。
だいたい上田慎一郎と坂下雄一郎ってなんだその字面の双対性は。ちょっとおもしろいな。

映画が終わって劇場を後にする時の心境もわりと真逆で『エキストランド』ときたらそれはそれはお通夜気分でその後ろ姿は完全に『サンゲリア』風のうつむきゾンビと化していたと思うが『カメラを止めるな!』はたとえゾンビだとしても『死霊のはらわた』みたいな活力ゾンビだ。やるぞ! 俺だってまだいけるよ! いけないとしてもいくんだよ! そういう感じになる。

怨念がない。邪気がない。映画を作るよろこびだらけ。映画地獄に堕ちた勇者どもの怨念と邪気がゲージオーバーで漲る『エキストランド』を脳内併映しながらこのふたつの映画作り映画の、このふたりの映画監督の分水嶺はどこにあったのだろうと考え…いや一応フォローしておきますが俺『エキストランド』の陰々滅々とした空気も別に嫌いじゃないんですよ。
もう本当に、もう本当に見終わった後ゾンビになるんですよ。それが良いんですけどでも面白くはないんですよ。あれはそもそも監督だって客を面白がらせようとしてないだろうたぶん。血を凍らせようとしてますよ。

『カメラを止めるな!』の話。ズームイン・アウトのダサカメラワークが貧乏ホラー特有の見たらいかん感じを醸していて好き。助監督ゾンビのでくのぼう的ゾンビ仕草がこれまた素敵なチープで大好き。ちゃんと怖いしね。
そうなんだよチープなんだよ。チープの骨までしゃぶり尽くす映画。チープの中で何ができるかということとチープだから何ができるかということの両面を突き詰めたチープ映画(制作者)のホープ。
これはすごいな。『エキストランド』で傷心の武文くん(※役名違いますが)にも観て元気になってもらいたいと思いましたよ。頑張れ武文。違う映画の話になっちゃった。

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人里離れた農家か孤島でホラー自主映画撮影中のクルーがふざけてゾンビの呪文を詠んだら死体ポコポコ出てきちゃって大変。びっくりするほど全然面白くないから観ている方も大変(しかしその監督ボブ・クラークはたった二年後に今やホラークラシックな大傑作『暗闇にベルが鳴る』を放っているのだから映画はおもしろいですね)

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