右翼SF映画『ハード・コア』感想文

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すごいらしい原作は存在すら知らなかったんですけど右翼コメディっていうサブジャンルは日本映画に貴重すぎる気がしたのでカテゴリー最上位で邦画レッドリストに掲載したいが主演・山田孝之、共演が佐藤健と荒川良々で特別出演・松たか子って豪華すぎるじゃんね、そのくせ。
でも俺が観に行った回は休日でしたけど相当客席がガラってたからやっぱレッドリストに載せよう。現代日本に馴染めないし馴染ませてくれる相手もいない非モテ右翼の山田孝之と荒川良々を即刻保護。放っておくと絶滅してしまう。

ストーリー。耄碌した右翼団体代表の命により埋蔵金掘りに勤しむヤング右翼の山孝と良々が偶然スーパーロボットのロボオとお友達に。それで何をするかといえば別に何をするでもなく一緒に埋蔵金掘ったりキャッチボールしたりするのであった。オフビートに破滅に向かいながら。

ぼく山下敦弘の映画そんな見てませんがあぁそうだ、こういう殺意を孕んだゆるゆる空気の充満する、笑えそうで笑えない表情引きつり系の映画撮る人でしたよねとか思う。
その殺意の感覚が現代の閉塞感というのではなくてロマンポルノ的な男の鬱屈に根ざしたものに思われるから、エロの爆発的デフレ時代に生きる人間なんとなく乗れないが、これ乗らせる気も別にないんじゃないすかね。

時代錯誤と寄る辺なさをアイデンティティとして救われないことで救われようとする、孤独の中で自足する貧乏右翼のハードボイルドな悲哀と滑稽にそんな簡単に乗ってもらっては孤独の価値も安くなろうというものだ。
だから映画自体も現代を拒絶する擬古的な装いなんであったがその装いを自己言及的にネタとするようなところがあり、なんだかとても冷徹で批評的、ハードボイルドなシニシズムが全開。ロボオのキッチュに反して客を拒むような映画であった…いや、そこが良いっていう話なんですけど。

絶対に信じられない山田孝之と佐藤健の兄弟設定、ずるくて良いとおもった。そんなの普通におもしろいから。それに色気あるんだよ二人とも。佐藤健はこういう屈折した人間を演じる時がいちばん輝くな。抱いてくれ。
あと康すおんっていう山田孝之の右翼先輩がすげぇ右翼親父っぽくていい。好々爺風の見てくれから滲み出る卑劣が本気。長年政治団体とかやってるうちに思想が形だけになって世間知の塊みたいになってしまった人に特有のヤバさがヤバかった。

ロボットのロボオと同志の荒川良々と共にテロルを決意した山田孝之が自分も使ったことはない手榴弾の使い方を身振り手振り教えてやる。
「このピンをだな…まぁ実際に抜くわけにはいかんからそこは想像で補ってほしいんだが…抜いてこう投げると…これがまたスリルなんだが…」危険なネタを素知らぬ顔でやっちゃう俺おもしろいっしょ的な山田孝之のおもしろチャレンジからはちょっと距離を置きたい派ではあるがこれは笑った、笑った。

【ママー!これ買ってー!】


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何者かわからんまま就職した佐藤健のなれの果てが『ハード・コア』の佐藤健のように見えなくもない。山田孝之はこっちでは兄貴ではなく理系の院生の先輩でした(それはそれで絶対嘘だろってなる)

↓原作


ハード・コア 平成地獄ブラザーズ 1 (ビームコミックス)

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