復活して速攻大炎上であります映画『新劇場版☆ケロロ軍曹 復活して速攻地球滅亡の危機であります!』感想文

《推定睡眠時間:15分》

一体何があったのかはわからないが公開直後に配給のバンダイナムコが『進撃の巨人』のパロディはしないでほしいと諫山先生が言ってましたがスタッフへの伝達不足でパロディが残ってしまいましたという声明を出したらしい(『新劇場版☆ケロロ軍曹 復活して速攻地球滅亡の危機であります!』 制作過程における不手際についてのお詫び)。当たり前のことだがパロディが怒られるのはたまにあることで、木多康明のパロディ漫画『平成義民伝説 代表人』は「必殺・大人の事情」により連載打ち切りに追い込まれたことで有名だが、全編に渡り狂ったパロディが展開される電気グルーヴ「cafe de 鬼(顔と科学)」の天久聖一による傑作MVもまた、オリジナル版に登場したジャイアント馬場とキツネ目(グリコ森永事件のやつ)の『妖怪人間ベム』が現在流通している修整バージョンではそれぞれ遠藤ミチロウと『エースをねらえ!』パロディに差し替えられており、水面下で怒られが発生していたと思われる。

こういう場合まぁ結局アレだよね会社にさ謝る役の人っているじゃないですか、その謝る役の人が菓子折持ってパロられたことに怒ってる人んとこ行って土下座するわけですよね。いや実際に土下座するわけじゃないケースも多々あるでしょうけどまぁイメージとしてはっていうか。それをさわざわざ「こんなパロディで権利者の気分を害しました」なんて公表することって普通はないよね。だからうわこれもしかして復活して速攻封印作品に最悪なるかもって焦りましたよ。封印作品にはならないとしても配信とかソフト化の際には電グルのMVみたいに『進撃の巨人』パロディが別のものに差し替えられて……とか。『ケロロ軍曹』は漫画もアニメもまったく観たことがないし脚本と総監督でクレジットされてる福田雄一の映画もいつも面白くないなぁと思ってるからこの映画も最初観る気なかったですけど、今後観られない映画かもしれないと思ったらそりゃ観たくなっちゃうよね。つーことで行ってきました。

感想。かわいくておもしろかった。ケロロ軍曹というのは地球を征服しにきた宇宙人だが地球人の子供と仲良くなって居候することになり、だんだんと地球征服など忘れてプラモ作りとか遊びほうける毎日を……つまり『ドラえもん』とか『忍者ハットリくん』とかの居候ギャグ漫画か。話は逸れるがこう考えると今も続き愛される居候ギャグ漫画という日本漫画おそらく独特のフォーマットを創造した藤子不二雄両氏えらすぎるだろ。でケロロ軍曹はケロロ小隊というのを率いていてその仲間には怒りっぽくて頭のカタいギロロ伍長とか陰湿だが天才的な頭脳を持つメカニックのクロロとかそういうのが5人いてということなのでそのへんは『オバケのQ太郎』。『オバQ』もやはり藤子不二雄の作なのだから藤子不二雄両氏えらすぎるだろ(リプライズ)

前回の映画版が作られたのは2010年で実に16年前ということでこうなると『ケロロ軍曹』の存在すら知らないという人も多いことだろう。いや存在を知らないどころか、居候ギャグ漫画であるからしてメインターゲットは子供のはずだが、前回が16年前ならメインターゲットである子供はその頃生まれてさえいないわけである。そのへんを考慮してか今回は日本各地にいろんな人気漫画やアニメのキャラクターによく謎の侵略ロボットが現れ、ケロロ軍曹と仲間たちがそれを退治する中で一人ずつそのキャラクターの人となりを見せていくという親切設計。そのため『ケロロ軍曹』を観たことがない俺でもふむこういうキャラなのかふむこういう世界観なのかとヌルッと入っていけたので、なにやら悪の巣窟ツイッターで人々が荒れ狂っているようだが、完全新参者の俺からすればなかなかありがたいシナリオであった。謎の敵がパロディ攻撃ばかり仕掛けてくるっていうのもちょっと切ない理由があったりしてそのへん良く出来てたし。

福田雄一の映画をそれなりに観ている俺からすればこの人の映画の何がつまらないかといったらギャグがスベってるとかではなく(スベっているのだが)役者のアドリブ芝居をテレビのコント番組のノリでダラダラと流し続けるのでテンポが悪いというところにあり、そのテンポの悪さはギャグのスベりを生む要因にもなっていた。今回それをほとんど感じなかったので近年の福田雄一映画の中ではいちばん面白かったのだが、それもそのはず、たしかに福田雄一には脚本に加えて総監督のクレジットも与えられているが、監督でクレジットされているのはフィルモグラフィーを見たらこれまでずっと『ケロロ軍曹』のキャラクターデザインとか作画監督をやってきた追崎史敏という人であり、演出家というよりはアニメーターが本職かもしれないとしても、アニメのプロであり『ケロロ軍曹』をよく知る人であることには変わりない。

総監督という肩書きは便宜的なもので映画の現場にそういう決まったお仕事があるわけではないから、これは俺の推測だが、おそらく実質的なディレクションは追崎史敏で、脚本執筆を除けば福田雄一は上がってきた作品を観て意見を出す程度のアドバイザーに近い役割だったのかもしれない。『妖怪ウォッチ』や『進撃の巨人』などのアニメに加えて今回は『勇者ヨシヒコ』、それから実写版の『HK/変態仮面』『銀魂』という福田雄一映画のセルフパロディも含まれているので、そのへんは福田雄一自身がアフレコの現場に立ち会ったり演出の指示出しをしたりしたんだろうと思うのだが、ともあれそのようなわけで従来の福田雄一映画にあった無駄な間延びがなくサクサク進んだので(それでもやはりトータル109分と長いので福田雄一には誰か映画には編集でいろいろ切る必要があると教えてあげて欲しい)、次々繰り出されるパロディネタも『劇場版 僕とロボコ』みたいな爆発力はないとしてもほどよく笑えるし、キャラクターもかわいくて魅力的だしで(だってキャラデザの人が監督なんだもの)、よほどシリーズに思い入れのあるファンは違うのかもしれないが、シリーズに思い入れがない俺には充分面白い映画なのであった。

あと懐かしかったしね。『ケロロ軍曹』は観たことがないんですけどキャラデザがさ、やっぱゼロ年代前半にスタートしたシリーズだからその時代の秋葉原系キャラの感じっていうか、でじことかああいう。そっちもそっちで別に思い入れはないんですけど、でもあーこんなだったなー目の描き方とかデフォルメの方向性とか、って風にはなったよね。そういうあの頃感を出しつつ適度に今っぽい要素も取り入れようとした結果がこれなのだとすれば、まぁインターネットにアンチの多い福田雄一の起用は興行的な観点から言えば製作陣の判断ミスだったとは思うんですが、少なくともインターネットの匿名の陰に隠れてクソミソに貶すような映画ではないだろう。

Subscribe
Notify of
guest

1 Comment
Inline Feedbacks
View all comments
りゅぬあってゃ
りゅぬあってゃ
2026年6月28日 9:37 PM

今作だとナレーターがうるさすぎる問題がありましたね。テレビや以前の映画だとナレーションがそもそもないので。

あと劇中のパロディも、元々のアキバ系アニオタとも食い合わせが悪かった印象。たぶん福田作品を見たことない人も今回は多かったんじゃ?