映画の感想:『映画 クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ』

《推定睡眠時間:0分》

関根勤がゲスト声優枠に入っていたが誰役だろー? と実は見てる間には気付かなかったが最強のカンフーぷにぷに拳の師匠役です。ウソッ! ウソでしょ!?
確かに声だけ記憶から取り出して再生してみれば関根勤の顔が出てくるが。確かに役柄からいって関根勤を声優としてハメるならそこしかないよなとも思うが。

でも春日部の中華街で幼稚園児相手に阿呆なカンフーを教える老師にあの声が被ると関根勤の顔は雲散霧消してしまうんだよ。
これはタレント声優界に激震が走ったな。パンツ丸見えの台詞をこんなにも表現力豊かにキャラクター自身の言葉として読めるタレント声優は他にいないよ。

でこの老師にマサオくんが師事するというのが今回のお話の発端。映画開始まもなく不良園児に絡まれるマサオくんだったがどうもいつもと様子が違う。いつもなら泣いて逃げ出すはずなのに、なんと怯むことなく眼光鋭くカンフーの構えを取ったではないか…。
恐れをなしてというか理解不能な光景にドン引きして退散する不良園児たち。一体マサオくんに何が。かすかべ防衛隊がこっそり後を尾けると、ゴキゲンな調子で『プロジェクトA』のテーマなんか口ずさみながらマサオくんは中華街に入っていく。

マサオくんが中華街に足を運ぶのは老師の貧乏飯店でカンフー修行をするためだったが、この中華街は最近べつの事情で人の出入りが激しい。食べたら病みつきの明らかに毒入りブラックパンダラーメンが開店したんである。
というわけで今回の悪い奴はラーメン屋です。ラーメンばっか食ってるやつは凶暴になる! ラーメンが切れたら両手を前に突きだしてラーメンを求めるラーメンゾンビになる!
ラーメンを巡って店員と喧嘩になった客が店内で店員を蹴り殺す事件も二年くらい前にあったはずだからあんまり間違ってないんじゃないかという気もしなくもない。

こどもアニメの悪の組織にしてはブラックパンダラーメンの経営戦略はやたら地に足がついているので、クレーマーと食べログで星一点つけるやつをぶっ殺すマシーンなどを開発する傍ら最初の一杯無料キャンペーン(食ったらゾンビになる)を積極的に展開してお得&クリーンなイメージを打ち出すなどリアル志向かつリアル思考だ。
こうしてラーメンゾンビと化した客をフランチャイズオーナーとして抱き込み瞬く間に春日部をチェーン店で埋め尽くしてしまうブラックパンダラーメンだったがいやそれ悪の組織っていうか一般的な…ゲフン!

これは一石ではないな空前のラーメンブームに岩石を投じているな今回のしんちゃんは。某野郎がラーメン食べ放題パスポートとかいうトチ狂った常識破りのサービスを発表したことも記憶に新しいのでなんか大丈夫なのかと心配になってきてしまう。
劇中のブラックパンダラーメンCMはブラックパンダラーメンよりもブラックであった。「ブラックパンダラーメンを食べたら過払い金が戻ってきました!」爆笑だが大丈夫か。

でこのブラックパンダラーメンがブラックパンダヒルズなるラーメンの殿堂を建てるというのでマサオくんの通う貧乏飯店も地上げターゲットにされてしまう。
かくしてラーメンチェーンと貧乏飯店の抗争勃発。飯店を経営する老師と一番弟子のカンフー女子のコンビに、流れでマサオくんと一緒にぷにぷに拳の修行をすることになったかすかべ防衛隊も加勢するんであった。

…というのが実はストーリーの半分で。いやにアップテンポだし竹を割ったようなシンプル王道シナリオでこりゃあ肩肘張らずに見れていいなぁぷにぷに拳とか超下らなくて笑えるしと思っていたら全然映画が終わらない、し、段々道を逸れていく。
あれよあれよと地理的にも物語的にもそこどこなんだよ的なところに向かってしまってわけわかめですよこっちは。
いやほんとにわけわかめなんですよ。なんか変なの出てくるんですけどあれほんとになんだかわかんないんですよ。なんだったんだろうね。まぁなんだっていいか。いいんだよ!

そのような暴走混乱展開がしかしこの場合は少し肩の力を抜いて考えてみよう的な映画のメッセージそのものであったから、ちょっと今年のクレしんは気合いの入り方が違ったな。
別に前のが悪いとかそういうことを言いたいんじゃないんだよだいたい去年の見てないし。そうじゃなくてですね作りの方向が違うってことで、いつになく風刺が強めで世相にダイレクトアタックしてる感があるんだこれは。

子どもたちの成長がとか友情がとか家族愛がとか…『オトナ帝国の逆襲』みたいな例外を除けば風刺ネタを織り交ぜつつもシナリオの核になってるのは結構パーソナルな視点とか関係性っていうのがクレしん映画のイメージだったんですけど、分断と硬化の進行する世界の現況への眼差しっていうのが今回はシナリオの核になってる気がして。
そこちょっと驚くところだったし、非常に面白かったですね。クリティカルなことやってるなーってなりましたよ表面的な風刺だけじゃなくて。いや表面的な風刺もすごいんですけど。

あとおにぎりね。おにぎりが泣かせるんだよ今回は。ずっと頑張ってカンフー修行してんですけど所詮おにぎりはおにぎりだからそんなカンフーとかできないわけですよ結局。
でもそういう人が必要なんじゃねぇかっていう、そういう人の視点こそが右か左か否定か肯定かみたいな二項対立の隘路を切り開くんじゃねぇかっていう、無能な人のかなしさと必要性をおにぎりが切実に訴えかけてきたからもう、やばいよ。だだ泣きだだ泣き。

テンポは早いしギャグのキレは鋭いしシナリオは相当ぐねぐねとフラヌールしてるうえにあれこれ詰め込みまくった過積載も目的地は明確だからカタルシスがあるし、それにアクションも…アクションは敵がそんなに強くないからカンフーを謳ってるわりにあんま面白くなかったんですけど、そこも含めてすげぇ良い映画だったなぁ。

【ママー!これ買ってー!】


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