寝ても面白い映画『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』感想文

《推定睡眠時間:40分》

Netflixで配信された前作は大して面白かった印象がないので一応観ておくかぁ時間もちょうどいいしぐらいな感じの期待値ゼロ状態で臨んだらええっ全然前作より面白いじゃんこれ! しかも冒頭30分に加えてその後も断続的に睡眠中断が入った上での面白印象なのだから結構なものだ。おそらく序盤の見せ場と思われる『ブルース・ブラザーズ』のカーチェイスを人死にと薬莢をたっぷり加えてアレンジしたような爆裂カーチェイスですら半覚醒で観ておりどこで何が起こっているのか誰が何を言っているのかよくわからないという状態で観ているからな。この映画はそれでもちゃんと面白いのだ。

途中で寝るタイプの映画はかなり寝てもストーリーがわかるが(極端なことを言えば起承転結のうち起結だけ観れば十分なわけである)序盤で寝てしまうタイプの映画の場合は睡眠時間は少なくてもストーリーがわからないことが多い。というわけでこの映画もどんなお話だったのかいまひとつよくわからない。前作は観ているといってもあんまり面白くなかったから一時間ぐらいはスマホを観ながらの鑑賞で気付いたら終わっており、主要キャラは一応続投していてもストーリー的な繋がりはないとはいえ、これもストーリー把握のマイナス要因だ。

とはいえ後半の展開からすればあんまり精巧なストーリーがあるような映画でもないだろう。なんかね凄腕の殺し屋のサミュエル・L・ジャクソンがいるんだわ。でこいつが依頼人を殺しまくるせいですっかり自信を失ってノイローゼになってしまったボディガードがライアン・レイノルズ。前作はこの殺し屋の護送かなんかをレイノルズのボディガードがやることになってたまにヒューマンドラマ要素と軽いアクションありな感じの珍道中みたいのが描かれたと思いますけど、今回はスパイ映画的な悪い奴おった。

序盤は寝たといっても本当に序盤の序盤のだけは一応観ているのだがその限りではギリシャの犯罪王的な? 知らんけどそういうやつがEUがギリシャに無理難題押し付けたとかなんとかで怒ってしまってじゃあEUぶっ殺すわテロっていうのを企てたっぽい。っていうんでほいきたボディガードと殺し屋&その妻(サルマ・ハエック)の出番だ! 今度は戦争だならぬ今度はスパイ映画だって感じで犯罪王をやっつけに行くわけだが殺しなら本業だからマクレーンに無理やり付き合わされてた『ダイ・ハード3』の時と違ってサミュエル・L・ジャクソンもノリノリってまたたとえが古いな!

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でもテイスト的にはちょっと『ダイ・ハード3』っぽくもあるんだよ、ライアン・レイノルズのくたびれ感がなんとなくマクレーンと被ったりしてね。たぶんそのへんは監督がアクションオールスター感謝祭映画『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』のパトリック・ヒューズだから意識的にやっててさ、パロディとまでは行かない楽屋オチっていうか、ここなんか笑えるところですけど悪い奴がマザーファッカーって言うとサミュエル・L・ジャクソンが「お前にマザファッカを言う資格はねぇ! マザファッカ!」って決め台詞みたいに言うんだよ。

サミュエル・L・ジャクソンはマザーファッカーの言い方が業界一巧い俳優として知られているから…いやマザーファッカーの言い方が巧いってなんだよっていう当然の疑問はエーゲ海に投げ捨てていただいて! とにかくそういう楽屋オチ、業界ネタが結構入ってる。でもそれがわざとらしい感じじゃなくて自然に入ってるのがこの映画のいいところです。あちなみにサミュエル・L・ジャクソンにマザーファッカーがなってねぇと怒られる悪い奴はアントニオ・バンデラスでした。あとサミュエルのマザファッカは単独ファッカではなくサルマ・ハエックとせーので声を合わせてのダブルファッカだったのでジェンダーバランスも考えられてましたね! これがハリウッド本気のポリコレだ!

でまぁそういうところがこれはジョン・ランディスの映画を思わせるんですけれどもランディス感はそこだけじゃなくてアナーキーなギャグもランディス的な下町コメディの世界で、いや~これはなかなかヒドイ映画です! だって悪い奴を撃ち殺す場面をいちいちギャグにしちゃうんだもん! 『インディ・ジョーンズ』に剣で戦いを挑むアラブの人をインディが面倒くさいから銃で撃ち殺すっていう人でなしギャグがあるじゃないですか。ああいうのを至る所で連発しまくる。最高だったのはエンドロール後ですよ。アメリカ映画のエンドロールって制作中に死んじゃった人とかに捧げる「in memory of」ってのが最後に出たりするじゃないですか。この映画それをネタにしてウソの「in memory of」をやるんだよ! 不謹慎だな~でも笑っちゃうよな~まったくしょうがない映画だな!

ってな感じで銃撃たくさん不謹慎ギャグたくさんキャラクターのテンションは常時高めでレイノルズのひたすら可哀そうな巻き込まれっぷりにも大いに笑わされつつなんだか知らんが最後はえらい強引にわけわからんハッピーエンド(?)になってしまう見事な娯楽作が『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』なのでした!

【ママー!これ買ってー!】


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大ヒット作のシリーズ三作目はなぜか冷遇されがちな日本だが『ダイ・ハード3』はニューヨーク映画の傑作だと思うしジョン・ランディスの『ビバリーヒルズ・コップ3』は毒々しくてキッチュな佳作だと思うんだよな。

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