【ネッフリ】『カーター』ヤバすぎるだろ感想文

《推定ながら見時間:25分》

人間が感染すると凶暴になって他人を襲うウイルスがおそらく北朝鮮発祥で世界的に蔓延、韓国は封じ込めに成功したっぽいものの北朝鮮はえらいことになっているようだという情勢下の韓国で目を覚ました主人公は記憶なし、俺はいったい誰なんだと問う間もなくCIAの実働部隊の強襲を受け銃口を突きつけられる。「この動画を見ろ! ワクチン開発の鍵を握る博士を拉致したのはお前だ!」だが主人公が目覚めたホテルの一室に博士の姿はなく、自分の寝ていたベッドの掛け布団をどかしてみるとそこには人一人分の血痕が。そこへ”声”が届く。「私の声はあなたの頭部に埋め込んだ通信装置から発せられている。敵には聞こえない。そこはあと10秒で爆発するから窓から逃げなさい」。

オープニングから既にフルスロットルで飛ばしすぎているがまだまだ飛ばしは終わらない。主人公が窓を突き破って隣のビルに飛び込むとそこはふんどしヤクザ御用達の巨大サウナ。中ではヘロインでトんでいるような全裸の女たちと何者かを拷問中のヤクザたち×50人ぐらいがいる。問答無用で主人公に襲いかかるヤクザたちを主人公は超人的な身体能力で殺していく。50人全員は殺していないとしてそのキルカウントの更新速度は映画史上最速ではあるまいか。説明もへったくれもない。とにかく殺す、殺す、殺す! どうせヤクザだ容赦する必要などなし! そんなことはないだろうと思うが記憶のないまま脳内の声に操られる主人公には人を殺すことしかできない。ヒーロー然としているが結構やばい人である。

ここまでで映画始まっておよそ15分。どう考えても15分の情報量と殺傷量ではないと思うのだが、むしろ本番はここから。50人ぐらい死んだヤクザは物語上まったく意味がなく単に主人公の通行の邪魔をしたからというか主人公がかなり勝手にそう判断したから通り魔的に殺されただけであり(おい!)、その後主人公は囚われの娘を救出しCIAの追っ手徒歩×20人+バイク×20人+車×10人=計50人ぐらいを殺しながら声に導かれるまま北朝鮮に向かいその途上の南北両工作員の乗り合わせた飛行機内で裏切り者捜しに巻き込まれスカイダイビングしながら敵要員と殺し合いを繰り広げ着地した北の地で川に流され車に積まれ運ばれてくる感染者の群れを片っ端から殺していき…盛りすぎだよ! いくらなんでもオモシロを盛りすぎ! あと殺しすぎ! シュワルツェネッガーの全フィルモグラフィを通した殺傷数にたった一作で迫ろうかというものすごい映画である。

広告

だがすごいのはそれだけではなく、なんとこの映画、すべてのシーンが繋がった疑似ワンカット映画。しかもドローンカメラをメインカメラに採用しておりアクションの最中にも上下左右360°自由自在にカメラが飛び回る。なんという突拍子もない作品か。未だに日本映画と韓国映画を比べて日本映画は負けているとかなんとか言う経済大国ジャポンの幻想を抜け出せないリベラル映画オッサンなどが存在するが、そんなマヌケの顔面にはこの映画を叩きつけてあげればいいだろう。はっきりってもはや比較にすらならない。演出とかシナリオとかの問題ではなく技術力がまったく違う。だがあえて言えば、こんな酔狂なアイディアを実行に移せる映画人はアメリカにだって中国にだってインドにだっていないだろう…少なくともアクション撮影の技術面において、韓国映画界は今や世界をリードする存在なのである。

と絶賛したそばから悪く書くのもなんだか気が引けるが、さすがにここまでアクション撮影にステータスを全振りされるとぶっちゃけ白けてしまう。そもそもの話として俺は今公開中の『ボイリング・ポイント/沸騰』を筆頭に『ハードコア』とか『ヴィクトリア』みたいな全シーンワンカットが売りの映画というものが基本的にそんなに好きではなく、POVとかも同じなのだがワンカット映画はその撮影スタイルにシナリオを強引に合わせることになる都合、どうしても展開や人物描写に作為性が出てしまうと同時にストーリーが弛緩してしまう(その特性を夢の世界の表現として利用したソクーロフの『エルミタージュ幻想』は発想の勝利)

POVはそれでも編集が使えるがワンカット映画はそれもできないわけで、『カーター』の場合はその弱点をひたすらアクションと殺戮の連続でカバーしようとしているが、逆に全シーンでアクションで殺戮が続くことにより各アクションシークエンスに「またか」感が出てしまって、せっかくの燃えるアクションも開始20分ぐらいで早くも飽きを感じてしまう。加えてこの映画はドローンによる縦横無尽なアクション撮影を成り立たせるためにとくにカーチェイスの場面で大胆にCGを導入しており、その結果なんだか画面がゲームめいて逆に緊張感が削がれてしまうのであった。インタラクティブ・ミュージック風の劇伴もゲームっぽいし。

でもね、いいじゃないすか。これはもう韓国映画界のアクション撮影見本市だと思って。ノれるノれないはともかく革新的なアクション撮影を行った映画であることは間違いない。俺映画館でこれ観てたらあのやけっぱちなオチに感服して一人で拍手してた可能性あるよ。多少空回りの気はあるとしてもこれほどまでに全編に渡って映画を面白くしようとする意志の漲る映画というのもそうそう無い。っていうか今までに観た記憶がない。辛うじてスタンスが近いとすれば『死霊のはらわた』だが、あれでさえ最初の15分くらいは退屈タイムであったことを思えば、『カーター』がいかにヤバイ映画かよくわかる。まその退屈タイムが後の見せ場を盛り上げてるわけだからそれも善し悪しですけど。

ともかく! アクション好きならこれは必見。これを見ずに現代アクションを語れないんじゃないかというぐらいの、とんでもない映画が『カーター』なのでした。そんなにすごい映画ならもっとすごそうなタイトル付ければいいのにね! なんかもったいない!

【ママー!これ買ってー!】


『1917 命をかけた伝令』[DVD]
『1917 命をかけた伝令』[Amazonビデオ]

厳密には全シーン疑似ワンカットではなく昼パートと夜パートに別れた疑似ツーカットなのだが、疑似ワンカット系のアクション映画で俺がほとんど唯一といっていいほど素直にのめり込めたのがこれ。めちゃくちゃ面白かった。

guest
0 Comments
Inline Feedbacks
View all comments