意外とダーク映画『コンビニエンス・ストーリー』感想文

《推定睡眠時間:25分》

主人公の成田凌が愛用しているドッグフードはその名も犬人間という珍名で劇中とくにその名の由来が語られるようなことはないのだが耳を疑うこと間違いなしのそのネーミングになんだこりゃと思った人は多いのではないだろうか。かくいう俺もその一人だが耳を疑った理由はおそらく他の人と少し違い、以前城戸賞という東映系の脚本賞に『アスカとアキオの犬人伝説』という脚本を送って最終選考10本に残ったのだが、それが犬人間の都市伝説を巡るシュールなコメディ・ミステリーなのであった。

内容的には全然違うしパクられたとは思わないが売れない脚本家×犬人間の組み合わせは売れない脚本家(志望)として妙な親近感というか既視感があり、そもそも変な映画だがそんなものを売店で売ってたアンズバーを食いながら観ていたら現実感覚が揺らいで通常の何割か増しで変な気分になる。件の犬人間脚本は上のリンク先から全文読めますのでお暇な方はぜひ読んでみてくださいね。変な気分になることうけあい。あとプロデューサーの人とかも読んで俺に脚本の仕事くださいマジで。

さて映画内の犬人間が何を意味するかといえば成田凌の置かれた境遇のメタファーと考えればおそらくよいのでしょう。有望株かどうかは大いにあやしいが貧乏でも華やかで活動的な女優の恋人(片山友希)と同棲してまぁまぁ可愛がられてはいるものの、それでいいのかという思いが売れない脚本家の成田凌にはある。これじゃあまるで飼い犬じゃないか、俺だって本当は才能ある脚本家なんだからバンバン仕事取ってきて相棒の脚本とかやって劇場版の脚本も手掛けちゃってそのうち大河とかにも抜擢されちゃったりなんかして…と想像しているかどうかはわからないがなんであれ現在のヒモ同然の生活に嫌気が差しているのは確かだろう。

そんな成田凌が欲しいものがだいたい売ってるけどすべてが売ってるわけじゃない中途半端な不思議コンビニを発見したのはちょうど恋人がイクラを吐き出して死ぬ役で有名監督作のホラー映画にキャスティングされた頃。こちらはこちらでだいぶ謎現場だが成田凌の方はもっと謎、なにせコンビニで買い物をしているうちにこの世ではない別の世界、山と荒野とコンビニしかない空虚な世界に入り込んでしまったようなのだ。なんだかよくわからないが二人はいったいどうなってしまうのだろうか…。

三木聡の監督作といえばゆるくてすっとぼけたシュールなコメディの印象が強いがこれはシュールコメディでもわりとダーク寄りで、雰囲気が似ているのは意外にもデヴィッド・リンチの映画。リンチほど蠱惑的な世界を作り出せているわけではないが笑って良いのか悪いのかわからない気持ち悪さ、殺意混じりのユーモアなどはリンチを彷彿とさせるもので、三木聡的ゆるゆるトーンによる若干の癒しを期待して観に行ったところもないでもない俺としてはこの乾いたノワール的な世界観に良い意味で困惑させられた(いやにギラついた映像はニコラス・ウィンディング・レフンの影響を感じないでもない)

面白いかどうかで言えばぶっちゃけ微妙なのだがしかしこの微妙さが三木聡映画独特の味。『コンビニエンス・ストーリー』だなんてカジュアルなタイトルに反してなんとも形容しがたい妙な映画だが、嫌いにはなれないねぇ。

【ママー!これ買ってー!】


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脚本家が謎世界に入り込んでいく映画といえば『バートン・フィンク』

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