森バカンス映画『秘密の森の、その向こう』感想文

《推定睡眠時間:60分》

秘密の森のその向こうにはいったい何があるのか…ぜひとも感想に残しておきたいと思ったが大変なことになった。主人公少女がおそらく秘密の森と思われる森に入ったその瞬間、秘密の森の妖気なのか強烈な睡魔が俺を襲い、必死の抵抗もむなしく森の場面はほぼすべて寝てしまった。ときおり思考を伴わないまま覚醒しその部分部分は目撃しているが白昼夢のようでどこまで映画でどこまで俺の夢か判然としない。二人の少女がカヌーでギヨーム・ブラック『宝島』にも出てきた水上ピラミッドに入っていくシーンははたして現実か? いや、現実ということにしよう。とりあえずそういうことにしないと話が始まらない。

あの水上ピラミッドは『宝島』と同じ場所でロケをしたものか、それとも両映画の撮影地フランスでは比較的どこにでもある建造物なのかはわからないが、『宝島』の方はバカンス映画であり、暇な若者どもが水上ピラミッドで遊んでいたから、この『秘密の森の、その向こう』もある種のバカンス映画なのかもしれない。寝ていたので画面上で確認したわけではないが予告編などによれば秘密の森で主人公少女は彼女と同年齢の母親に遭遇したらしい(二人が森で遊ぶシーンは断片的に見てる)。日常ではあり得ないことが起こる日常世界のモラトリアムとしてのドリームタイム=バカンス。いずれそれは終わりを告げることがわかっているのだが、その間はどんなことでも可能に思える。

この映画の監督セリーヌ・シアマは『トムボーイ』や『燃ゆる女の肖像』でもモラトリアムを描いており、とくに『燃ゆる女の肖像』は女性画家が孤島に渡ってそこでモデルの女や小間使いの女たちと女だけの時間を楽しむ点でバカンス映画の一種と言えなくもない。いずれ島には男主人が戻り女たちは隷属的な立場に戻る。主人公の画家も本土の社交界で決まり切った役割を演じることになる。でもそれまでは…なのである。この「でもそれまでは」は『秘密の森の、その向こう』のラストにも見られたものだ。

73分中の60分を睡眠に費やしている俺がこの映画について言えることはもう多くない。というか、無い。まぁなんか楽しい映画だったんじゃないでしょうか。バカンス映画ですからねなにせ。しかしだからこそ切ない。親友でありお互いがお互いの鏡像でもあるような母娘の関係というような幻想は、娘の成長と母親の変化によって脆くも打ち砕かれるだろう。娘は娘、母親は母親として別の人間、別の人生を生きるだろう。あの秘密の森に帰ることは二度とできないだろう。でも、それまでは…の、映画なのだ。

【ママー!これ買ってー!】


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「秘密」繋がりで思い出した映画だが内容もまぁまぁ似てる。

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