《推定睡眠時間:0分》
ねこの動画をだいたい70分にわたって観るだけの映画である。かわいかった。どうしよう感想がそれだけで終わってしまう。とにかく本当にそれだけの映画で、というかたぶんこれは正確には映画ではなく、インターネットにアップされた世界中のねこ動画を集めてきてアクションとかコメディとかドキュメンタリーとかゆるくテーマ分けしてまとめた動画集であるから、おそらく使用されたすべてのねこ動画は削除されていなければスマホで見られるわけで、映画作品といえるほどのまとまりとかバリューとかは限りなく低く、映画館でねこがたくさん見たい、もうただとにかくその欲望を叶えるだけの映画ならざる映画なのである。
平均すれば一本あたり20秒程度のねこ動画を70分、ということは1分あたりねこ3匹だから70分で210匹。ねこ210匹の大行進とくれば壮観な気もするがそんな印象は微塵もない。あぁねこかわいいあぁねこかわいいあははねこおもしろーいで脳が強制的に麻痺させられるのである種のドラッグによってチルい状態で幻覚を見続けているような気分である。したがって始まりもなければ終わりもない。映画館が明るくなってからあれなんだ終わったのかと気付くような感じである。いったい何を魅せられていたのか?
とはいえこれだと感想としてあんまりなのでプロの素人映画感想書きとしていくつか印象に残ったねこを挙げると、これだけ例外的に尺が長いというのもあってストリートの病気ねこを保護して病院連れてって里親見つけて元気なねこちゃんに戻すまでのミニ・ドキュメンタリー動画のねこちゃん(と人間)はよかったな。このねこちゃんダニノミで全身が疥癬だらけになってて石像みたいになっており、目も疥癬がひどくてほとんど見えてない。歩く姿も元気がなくかわいそうなのだが、それを保護して病院で治療したらもう見違えるように元気なねこちゃんになってしまった。泣けるイイ話、イイねこである。
個人的には大きな犬がちいさなねこちゃんたちの親代わりをしている動画など大好物なので涙腺爆発であるが、なにせトータル210ねこも出てくるわけだからねこ動画はバラエティに富んでおり、中にはねこのWEBアニメもあるし、ねこの出した音をサンプリングして作った音楽の動画などもある。このへん人によってはコレジャナイと感じられるかもしれないし、俺としても「いや、動く本物のねこちゃんが見たいんです!」と思うところがないでもなかったが、いやまぁでも別にちゃんとした映画じゃないし、そんあことを言っても仕方がないだろう。今の日本だと映画館はある種厳粛な場となってしまっているが、たぶんこれ本当はねこちゃん連れて一緒におかしとか食べながら上映途中に自由に外に出たり入ったりしながらゆる~く観るやつだよね。日本の映画館で(というか普通は日本以外でも)そんな上映ができる場所はまず存在しないと思うが、たとえば昨今流行りの野外上映などでこれを流せばねこちゃんと一緒に観ることもできるかもしれない。ねこちゃんは一切画面に関心を示さずどこかへ行ってしまうかもしれないが、まぁそれもよいではないか。
ねこちゃんはかわいいしねこちゃんはたのしいよな。いつも本気で素っ頓狂だったり身勝手だったりすることをやるのが愛おしい。そのように感じるのはねこちゃんは人間に対して基本的に無害という前提があるからなわけで、おおきなねこちゃんことライオンに対しては行動が完全にねこちゃんだとしても大抵の人はねこちゃんと同じようにはかわいがったり面白がることはできないだろうと思えば、無害なねこちゃんの奮闘を人間が上から目線で楽しむことにはちょっと罪悪感があるのだが(だから俺は人間を殺せるわんちゃんの方がペットとしては好きである。わんちゃんはその気になれば人間を噛み殺せるので罪悪感がない。平等な関係性に感じられるのだ)、とはいえそんなことを真面目に考えるような映画でもなく、とにかくねこちゃんがかわいい、たのしい、ただそれだけの至福の70分間であった。