よくわからん感想『君の名前で僕を呼んで』

《推定睡眠時間:0分》

先に言っておきますけど俺にはよくわからなかったよ。北イタリアの片田舎に居を構えるインテリ上流階級の優雅な…もわからないし、恋愛とは即ちセックスである、という身も蓋もなさが主に。
だいたいこれは恋愛だったのかという話であって、抑圧された性の捌け口であるとか、出自差別に屈してひた隠しにしてきた自らの血筋の、その偽りのアイデンティティーを破壊する試みに過ぎなかったのかもしれず、という風に余白に好きなだけ解釈を書き込めてしまうからつまりわからない。

そういうものなんですか恋愛というのは。みなさんあの余白に思い思いに書き込むなにかがあったりするのですか。しらばっくれてるんじゃないよ本当にわからないんだよ、素人童貞なんだからこっちは。もうまったくこういう、性愛を軸にした揺らめく人間関係の経験がない。
素晴らしい自慰行為が出てくる映画だったのでここで描かれる性に関して俺が共感を持ち得るのはそのへんぐらいで、この少年のようにオーガニックでビューティフルなものではないが、確かに引きこもっていた中学生の頃にはよくクイックルワイパーの柄を肛門に突っ込んでいたなと懐かしいかほりがする。

思えばあの頃の自慰は冒険心に富んでいた。自慰のひとつひとつに全身全霊を傾けていた。情熱があったが、翻って今はどうかと言えば、もはやエロ動画の類さえ要さないほど達観した自慰であった。
ごはんを食べる。おトイレに行く。お仕事に行く。自慰をする。家に帰ってお風呂に入って寝る。単に生活の一部に溶け込んで、毎日の食事や排便に感動を覚えることがないように、毎日のつまらない単調な労働が重荷でしかないように、今の自慰には色がない。

なにか自慰の順番がおかしい気もするが、ともかく今の俺の自慰は生活を維持するための生理的要求以外の意味を失ってしまったわけだ。
今はもうクイックルワイパーの柄を肛門に差し込んだりはしない。後ろに入れようが入れまいが前から出してしまえば一緒である。経済的合理性と社会的要求が性を管理する。これが馴致というものだ。
あの情熱を仮に恋愛と呼ぶなら俺の恋愛はクイックルワイパーの柄とともに失われたのだ。喪失は悲哀の中では完結しない。それで別に困ることがないと感じる平穏こそが喪失なのだ。

これ、なんなんですかね。勢いで自分なりに余白を埋めてみましたがこれなんなんですかね…まぁ、そういう映画だったと思うよいや、みなさんはどうか知りませんが俺にとってはそういう映画だったよ…!
クイックルワイパーが! クイックルワイパーの柄にサランラップ巻いてサラダ油かけて! 入れて! 怖くなってトイレに流して詰まらせて!
母親にトイレには流さないでと一言だけ言われたあのクイックルワイパーとサランラップの映画だったんだよ。

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ジェームズ・アイボリー脚本のインテリ的インテリ批判と反動的リアリズム(みたいなやつ)はまったく俺の肌には合わないもので、そんな俗世から隔絶された無時間的な理想化された空間で神々の戯れみたいの見せといて報われない愛がどうのとか言われても逆にクィア時代の人困るよ、と急にちゃんと映画の話になりますがわりとそういう感想。
したがって、かどうかは知りませんが時代背景は1981年なのだった。ある時代の証言というよりこれは過去であることが重要だってことでしょう、たぶん。

冒頭、北イタリアのどこかと出る。名称も不要だ。ポコっと浮上する悠久の彫像が大学院生とティーンのなにかを狂わせてしまうというかあの場を永遠の幻で包んでしまうのだ。マヌーサだ。『ドラゴンクエストⅥ』の上の世界だ…。
ということでリアル社会なるものの存在をすっかり忘れてしまった二人はその幻の中で自分を縛り付けていたものにフッと気付いてしまうのだった。
永遠の中ではなんでも可能だ。なんだってあり得るんだ。鎖を引きちぎれ。それが本当の自分の姿だ…ある意味、テクノロジーの介在しない『レディ・プレイヤー1』だろう。いやほんとにほんとに。

なんにせよ幻は幻だからそのうち空気の読めないリアルが割って入ってくる。どんなアバターも選び放題と思えた人生ゲームは課金制であった。マジかよ。あれ無料体験期間だったの?
ラストに至って気付かされるのは大学院生&ティーンの情熱的な恋愛というのは触媒であって、鼻持ちならない脚本書きやがってクソ、とは思いつつもその普遍性にハートを抉られることはやはり抉られるのは、しょせん人生は一本道のクソゲーだからという死ぬほどつまらない教訓を叩きつけられるからだった。

用あってチャリで町へ出た大学院生とティーンが単調な一本道の帰路を涙ぐましいまでに迂回しまくり道草を食いまくる場面の胸の高鳴りは、結局は家に帰らなければいけない厳格な現実の見せる儚い幻覚だったのだ。
あとテーマ曲、超いいっすね。

【ママー!これ買ってー!】


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なんかこんなのばっかやってませんかジェームズ・アイボリー。

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さるこ

こんにちは。神々の戯れ、はは、確かに…って、睡眠0分ですか!私、二人が絡む直前、少し記憶がないです。桃のシーンは好きです。私がオトコじゃないからかな。

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