映画睡眠感想文『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』

《推定睡眠時間:65分》

なんでそんな思い込みをしていたのかわからないのだが俺これドキュメンタリーだと思ってて映画が始まってからもしばらくは再現ドラマのパートとドキュメンタリーのパートを交互にやるタイプの映画かなとか考えていたものであるから「あ、違うんだ」と気付いた瞬間のテンションだだ落ちっぷりときたら今年最大級、そりゃ勝手に勘違いしてたこっちが悪いとしてもビリー・ホリデイの曲も人物も知らない俺としては教養的な面白さを期待して映画館に足を運んだわけだから想像した内容と実物のギャップに下がったテンションを上げることができず自分に対する苛立ちを解消すると共に体感的に少しでも早く映画を終わらせるべく積極的に寝てしまったのであった。

そんなわけで頑張っても眠れず起きていた時に観た断片映像に関しては基本的に不満ばかり、いやぁだってですよこれはもうこんなもん題材に寄せる気がなさすぎるじゃねぇかっていうか、まず絵作りが安っぽいっていうのがあるわけですけれどもそれはまぁカバーできる脳内補正でなんとかなる、如何ともしがたいのはアンドラ・デイ演じるビリー・ホリデイですよ。これがもうね、普通に今の人なんだよ。普通に今のラップの人かR&Bシンガー。見た目も性格も行動も全部。それは萎えるでしょ。吹き替えおそらくなしで歌を披露して薬物中毒(ヘロイン)の演技もやって激しいベッドシーンもこなしてビリー・ホリデイの栄光と転落を一人で演じきってるわけですからすごい熱演だなぁとは思いますけれどもいや熱演の方向性が間違ってねぇかなこれ。ホリデイがベッドの上で愛人にケツを突き出して投げやりに「ヤったら」って言うと愛人の男が顔を近づけて「そうじゃない、こうだ…」とキス、そこから熱烈なモザイクありセックスが始まり彼女は初めて本当の愛と性の喜びをってこれなんなんだよ!

でしかもですよ、これはブラックムービーっていう感じなんで出てくるのは黒人俳優メインで白人はモブか竹を割ったような悪人なんですけど、その悪人白人が牛耳るところのユナイテッド・ステイツとビリー・ホリデイの戦いがあんまり濃くは描かれないんだよ。なんだよそれタイトルに偽りありじゃんいや俺けっこう寝てたから言えたことではないけど! ま正確に言えば戦うは戦う、FBIだかCIAだかがホリデイのプロテストソングを危険視してどうにか歌うのを止めさせようとするんですけど、これはブラックムービーの美点でも難点でもあるところで白人が単なる記号的な悪人でしかないからその悪人側がどうしてそこまでホリデイに拘るのかとかよくわかんないし、そのバトルも緊張感がやたらと薄い。そういう意味でスパイク・リーの『ブラック・クランズマン』とか上手い映画だったと思うよあれは。

絵面が安いのは脳内補完で…とは言ったけれども察するに予算的な問題で当時のアメリカ社会がよく描き込まれた映画とは言いがたいのもガッカリするところで、それがあればこそホリデイが一曲のプロテストソングに込めた思いも重くのしかかってくるのだと思うが、ないんだもんなぁ、ないっていうかあっても薄いんだもんなぁ本当。ただまぁね! 俺一時間寝てますからこの映画! 目をバッキリ開けて全部観ればいやいやそんなことはない素晴らしい映画じゃないですかとなるかもしれません! まそういうことでひとつ。

【ママー!これ買ってー!】


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名作らしいがそういえば見たことないので今度見ます。

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