美学校映画っぽすぎるだろ映画『Polar Night/ポーラーナイト』感想文

《推定睡眠時間:0分》

案外というのも失礼なのだが案外この映画は前から気になってて都内の上映館シネマカリテで宣伝担当かなんかの人がチラシ配りをしていた時にはチラシの受け取りを拒否し「大丈夫です、観に行きますので!」とドヤ顔をしようとさえ思ったぐらいだが(※無言で受け取りました)、それというのは予告編を見るにどうも河野知美という役者さんが吸血鬼?を演じるホラーっぽかったからで、高橋洋の近作で魔女的な役柄を何度も演じているこの人は実際に見ると小柄で華奢な中国人形みたいな人なのだが、映画の中ではなんとも知れん威圧感を放っており、その相貌も鋭い眼差しと厚い唇が小さな顔にいささかアンバランスに収まった結果、得体の知れない邪悪さがある(そういう演技をしているときは)。最近の邦画ではこういう強い個性を持つ若い役者さんはあまりいないので、河野知美魔女シリーズの前作『ザ・ミソジニー』も良かったし、これは面白そうだなと思ったのであった。

ということで観に行ったのだがうむ、これは美学校映画。高橋洋率いる映画学校・映画美学校の人が修了作品として作ってる感じの映画であった。美学校は出資こそしていないものの監督の磯谷渚という人は美学校修了生、スタッフにも美学校OBが数多く入り、脚本は高橋洋との共同執筆、CGは美学校講師で現在CG勉強中らしい映画監督の古澤健という、めちゃくちゃ美学校な映画であった。リアリティがどうのとかそんなものは度外視して色んなジャンル映画的な見せ場を繋ぐ越境的かつ見世物的な作りも美学校の人がめっちゃ作るやつであった。

美学校映画は基本的にお金がない。限りなく美学校映画に近いこの映画もまたお金がないので諸々苦しさが画面から滲み出ていたが、それでもホラーともファンタジーともサスペンスともはたまた異形の恋愛映画ともつかない奇妙なものがたりは面白く、シチュエーションを成り立たせるための説明とかで無駄な時間を使ったりしないので、ずっと面白いというわけではないにしても退屈するところがないのは、かなりの低予算映画なのに立派だなぁとか思う。

それはいいのだが演出に緩急がないので全体的にのっぺりとして盛り上がりに欠ける点はちょっとアレがアレな感じである。吸血鬼ではないのだが血を吸わないといけないという妙な強迫観念に苛まれている絵画教室の先生を演じた河野知美の異貌なんかもっとベタにクロースアップとかで強調してもよかったような気がするのだが、引きの画面が多いのでそれも思ったより目立たず、吸血河野知美に惹かれて観に行った俺としては若干そんなものかぁとなるところであった。

こう、なんというか、ここはこういう構図でとか、こういうライティングでという画面設計ばかりを優先してしまって、役者の芝居であるとか、編集のリズムであるとか、そういう映画の呼吸をあまり気にしていない映画だったかもしれない。でも美学校映画に毛の生えたようなものだしなぁ…と思うとそう悪く言う気にもなれず。よくない、よくないなこういうのは。こんなもんだろうという評価がいちばんよくないと思うんですよ映画の感想として! そういうよくない感想は俺も書きたくないので、えー、この映画の監督の人は次回作を作るなら俺みたいな客席でふんぞりかえってる客にほっほっほっ、まぁこんなもんでしょうな、などと偉そうに言わせないために、もう少し、スタッフとかは美学校の人で別にいいので、内容面でもう少しだけ美学校修了作品っぽさを抜いていただけると、わたしもあなたもみんな幸せになれると思います…!

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