壮絶映画『ポリス・ストーリー/REBORN』感想文(ネタバレあり)

《推定睡眠時間:0分》

ちょっと自分が何を見たのか整理したいので順を追って画面の中で起きた出来事を書いていく。
映画が始まるとまず中国語圏映画名物の大量ムービングロゴ、続くタイトルバックは険しい表情で車を走らせるジャッキー・チェン。
入電、あるいはジャッキーから病院に電話。どうも難病らしい最愛の娘が危篤、現在手術中らしい。

アクセルを踏み込むジャッキー。渋滞に巻き込まれると通行人も気にせず歩道に進出、赤信号なんかもちろん完全無視だ。
開始5分も経たないうちに誰を追うでもなく始まってしまったカーアクションに呆気に取られていると再び入電、今度はかっこいい女性SWAT隊員エリカ・シアホウから。「大変ですジャッキー。証人として召喚予定の博士が開発した人造人間が脱」待て。

そこはさすがにジャッキーも人造人間!? 的な反応をしてくれたので少しだけ胸を撫で下ろしたが下ろしたのも束の間、娘の命を医者の手に託して泣く泣く隊長として現場に直行したジャッキーが目にしたのは近未来プロテクトスーツで武装した人造人間と彼らを率いるバットマンで言うところのベイン的なアルビノ怪人であったから見ている側としても安堵などしていられない。

間髪入れずに始まる大銃撃戦。圧倒的強さを誇る人造人間軍団にSWAT隊とはいえ一介の人間が敵うはずもなく、一人また一人と隊員たちは倒れていく。
ならばこれでも食らえ! 敗北を確信した生き残りの隊員たちが選んだのは手榴弾による特攻であった。カットバックで手術中の娘の心電図(もちろん危険な感じの警告音が鳴っている)なんかも入ってきちゃったりしてジャッキー早くもめちゃくちゃ悲惨な感じであるしあと早くもクライマックスで追いつけない。

部下の犠牲によりプロテクトスーツの人造人間たちは倒れた。残るはベイン的な人造人間軍団の頭目・アンドレのみ。うぉぉぉぉぉ! 部下たちが死んだのなら自分だけ生きてはおれぬと決死の覚悟でアンドレに向かっていくジャッキー。そして爆発。
ジャッキィィィィィ! もしかしたらそんな絶叫はしてなかったかもしれないが俺の心には確かに聞こえたSWAT隊唯一の生き残りエリカ・シアホウの悲嘆の声。

画面にテロップが出る。脚本:レオ・チャン、ツイ・シウェイ、エリカ・シアホウ…えこれまだアバンタイトルだったの!? あとエリカ・シアホウ脚本も書いてるの!?
もう映画三本分ぐらい観たような気がしたがここでようやくタイトル、『BLEEDING STEEL』が出るのだった。ていうか『ポリスストーリー』じゃねぇじゃん!

テロップ、「13年後、オーストラリア」。場面変わってテレビのトークショー、女ホストがゲストの小説家を紹介中。「○○氏の『BLEEDING STEEL』はハリウッドでの映画化も決定され」マジかよ! あぁあれ劇中劇だったのねアバンタイトルの人造人間云々の下りは!
どおりでおかしいと思った! おかしいと思ったよ冒頭からあんなクライマックスアクションと超展開! なぁんだ!

だがトラップであった。この小説家、13年前の人造人間事件と人造人間を作り出した博士の研究成果のあらましをどこからか買い、それを元にオリジナルとして『BLEEDING STEEL』を執筆していたことがコールガールに変装して小説家のペントハウスに侵入した謎のギーク青年ショウ・ルオによって暴かれる。

タイトルが出る前にもうこの展開に食らいつくのは無理だと諦めていたが、メタと見せかけてメタではなかったメタメタ構造に感嘆符と疑問符が飛び出すぐらいには感情が残っていたから映画趣味者はかなしい。捨てきれない。この驚きは捨てきれない。最後まで捨てきれなかった。

ショウ・ルオが小説家を眠らせてパソコンで情報を漁っているところへダースベイダーみたいなというかなんというかともかくすごい服装の人造人間軍団ナンバー2の女が例のプロテクトスーツマンを率いて登場、同時に窓から黒タイツで顔を隠したジャッキーも乱入してきたらやっぱり驚いてしまうんである。なにがどうなっているんだかわからなすぎて。

ショウ・ルオが盗み出したデータの中には一人の少女のプロフィールがあった。詳しいことはわからないがこの少女オーヤン・ナナがどうやら、実は今も生きていてどこかの上空を飛んでいる巨大宇宙船型研究所に居を構えたアンドレに繋がる鍵。人造人間軍団ナンバー2とジャッキーはこの少女を巡って闘っていたようである。

巨大宇宙船型研究所も気になるがそんなことにいちいちかかずらっている余裕はない。ナナは悪夢に悩まされていた。そのことで精神科医に通っていたが、あまり改善が見られないため医師を変えたところ余計に悪夢が悪化。
「あんなやつは魔女さ。精神医者じゃない」ルームメイトの口が悪い人が言うがナナは気にも留めない。俺も気にも留めない。魔女はねぇだろは魔女は。それはいくらなんでも言い過ぎです。

壁という壁、床という床、天井という天井がグラフィティで埋め尽くされた『ファイナルファイト』以上の最悪治安アパートの中に居る精神科医をナナが訪れるとそこは様々な仮面や骸骨や呪術具で装飾され照明は何十本も立てられた蝋燭に頼るスタイルのクリニックであった。魔女だろ! 少なくとも絶対に精神科医ではない。

果てもなく続く衝撃展開にどんどんと記憶が上書きされていくのでその部屋で何が起ったのかとかもう覚えてないが、その後ファイナルファイトなアパートチンピラにナナが絡まれてアクションシーンに入ったらこのアパートチンピラたちがパルクールの使い手だったこと、ナナの正体はみんな気付いているかもしれませんがジャッキーの娘だったこと、ナナは人造人間博士が作ったメカ心臓で生き延びたサイボーグだったこと、ジャッキーとの戦いでアンドレは細菌に冒されて(?)無菌室から出られなくなったのでナナのメカ心臓が作る正常な血液(??)を欲しがっていたこと、そしてジャッキーは掃除夫や用務員や学食の人や通りすがりのおじさん(!)等々に化けてずっと影ながらナナを見守ってきたことなどは辛うじて覚えているがなんなんだ。なんなんだろうこれ。

もう色々わかんないので結局書いても咀嚼できなかったが、ともあれなんかすごい映画を見た感はあった。
ちなみに一番衝撃を受けたところは恒例のNGシーン集の最後にあるクランクアップの場面でジャッキーが言い放つ「続編も撮ろう!」です。

【ママー!これ買ってー!】


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諸々の無茶をただジャッキー映画であるという一点でオール納得させてしまう最近のジャッキー映画、やばい。

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