燃えよ忍者映画『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』感想文

《推定睡眠時間:0分》

いったい誰がこんな事態を想像できただろうか。現在ハリウッドに空前の土下座ブームが巻き起こっており、(映画オタクを中心に)絶賛公開中のハリウッド超大作『DUNE 砂の惑星』『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』にはどちらも主人公の土下座が登場するが、この『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』にもやはり主人公スネーク・アイズ(ヘンリー・ゴールディング)の土下座が出てくるのである。シネコンの大スクリーンを埋めるハリウッド超大作の全てで主人公が土下座をしているというこの異常事態。2021年10月ほどシネコンでの土下座遭遇率が高い月はもう二度と来ないのではないだろうか。来たところで別に得する感じとかも一切ないので来ないでもまったく構わないのだが。

そんなことよりも日本版ポスターのこの惹句ですよ。見ました? 「未曾有の忍者テロを阻止せよ!」だって。未曾有の! 忍者テロ! 日本の洋画宣伝は賞賛されることよりも映画オタクからバカにされて叩かれることの方が圧倒的に多いが(邦画宣伝はどんなにバカでも映画オタクは無視するので不公平だ!)忍者テロとかいう言える機会があるなら言いたいけど大人の日常生活の中では絶対に言える場面が存在しないワードを大の大人が老化した脳みそを絞りに絞ってかろうじて生きていた一滴の小学生脳細胞から捻り出したわけですからこれは宣伝さんに土下座しながらニンジャリガトーだ! ニンジャリガトー! ジュードー! サムラーイ! しかも本編を見たら別に忍者テロの映画ではないのだからすごいよな!

じゃあなんなんだと言えば忍者テロではなく魔法ヤクザとハイテク忍者の抗争の映画でした。すごいつよい魔法ヤクザの悪いやつが目を付けたのはお馴染み地下闘技場で命を削って生計を立てている一匹狼のファイター通称スネーク・アイズ! もちろん父親は幼い頃に悪者に殺され復讐などを誓っている! そんな捨て鉢スネーク・アイズがすごいつよい魔法ヤクザの仕事を受けて(報酬はもちろん父親殺しの犯人捜しだ!)潜入したのは都心までバイクで十分ぐらいのところにある日本の忍者城! そこには太陽の女神とかいう具体名はやんごとない感じなので出さなかったのかもしれない神さまが残したたいへんな魔力を秘めた宝玉が隠されており、その秘宝を魔法ヤクザは欲しがっていたのだ!

果たして勝つのはどっちだろう! 顔はめっちゃ悪いがバイオレンス能力的にはそんなでもなかったし一山いくらの斬られ役ヤクザしか擁していない魔法ヤクザか…それとも忍者だけどマレーシアの達人イコ・ウワイスとガーナの達人ピーター・メンサーを部下に擁している忍者城の嵐影一族か…まだわからないだろうが!!!

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なんかこういう映画ばっか映画館でやってたら人類は平和になると思ったよ。いいよね、とりあえず忍者城関係者にコンタクトを取れっていうんでスネーク・アイズがサンフランシスコの魚市場に潜入して中身をくりぬいた魚の中に銃を隠して密輸するなどのヤクザ犯罪に手を染めていたらそこにいた忍者城関係者のトミーさん(アンドリュー・小路)と秒で意気投合して迫り来る一山いくらのヤクザの群れをぶっ倒す!

忍者は道に迷わないからこの恩返さずにおくべきか精神が燃え上がってしまい次の場面でもう富士山が背景に見える知らない空港に到着してそのまま忍者城に連れていかれて潜入目的のスネーク・アイズ的にはしめしめ感もあるとしてももはや拉致に近いスピード感なので戸惑っていると頭領(石田えり)との謁見の場で出ました土下座をしていたら横にいたトミーさんが何の相談もなく急に頭領に向かって「彼は三つの試練を受けます!」「失敗すれば死ぬぞ!」「はい!」とか言い出してしまいさすがに内心のエッ! を隠せずに質問ぐらいはいいだろうと声をかけると「あのこれは一体――」「黙れ! 彼はハードマスター…試練を受けるのだ!」見たらそのハードマスターはイコ・ウワイスでした。

これでいいのだ。最後まで勢いとカッコよさとなんとなくの忍者的雰囲気だけで突き進むので登場人物が何を考えているのかなどほぼほぼよくわからないし手持ちカメラと足をゴリゴリに動かしてアクターをドキュメンタリー的にワンカットで追っていくアクション撮影は臨場感抜群でカッコイイけどどんなアクションをしているのか逆にあんまりわかんないしサイバーパンクNIPPONにデザインされたエンドクレジットはご丁寧にもクレジットがビカビカにネオンカラーの日本語で背景表示されるので逆にクレジットがどれ一つ頭に入ってこないがそんな細かいことにこだわっているから君たち非忍者人間は争ってばかりいるんです! 忍者は細かいこと気にしない! 気にしてたら城壁の前で城壁の柄の風呂敷を広げて敵ヤクザからステルスする隠れみの術など怖くて使えないだろうが! しかもガーナの忍者マスターが!

人間には2種類しかいないんだ。忍者か、ヤクザか、一般人か。どれを選ぶかという話でしょうが。忍者でしょう。選ぶとしたらそれは。僕も忍者だし君も忍者なんですよ? それでいいじゃない! そういうことです! それが『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』という映画いや! これはむしろ映画というよりも忍者! 忍者なのだ!!!

※忍者なのでスネーク・アイズもなんかコソコソと忍者ファッションで城内のあちこちを移動し情報を嗅ぎ回るというステルス要素・スパイ要素が結構あり、たしかにそれは忍者の仕事だがヤクザの鉄砲に対して手裏剣ジャジャジャーとかそっちじゃねぇんだ的な微妙なリアリティラインになかなか困る。忍者城とかいうファミコン全盛期の小学生の頭の中にしか存在しない場所が舞台にも関わらずその中にあるバイクガレージだけは異常なレベルで普通にバイクガレージで整備工も普通に整備工とかいう掴みどころの無さである。でも掴みどころがあったら忍者失格なので映画としてどうかはともかくこの映画は忍者として完璧に合格です。あとヘンリー・ゴールディングの屈折した忍者っぷりはかなりカッコイイので次のジェームズ・ボンドやってほしい。駄菓子的な味わいではこの『G.I.ジョー』シリーズも『007』みたいなものですが。

※※書き忘れてたんですがイコ・ウワイスのハードマスターが酒の席ですごい睨んでくるのでスネーク・アイズが「…なんであいつ睨んでくるの?」ってトミーさんに聞いたら「睨んでるんじゃない、近眼なんだ」ってびっくりするほど真面目なトーンで言われるところだいぶ笑った。

※※※土下座土下座と書いてますがあれ座礼と言うそうです。トンデモ忍者映画を作る人たちより日本文化を知りませんでした。

【ママー!これ買ってー!】


超飛びジャンボ黒ひげ危機一発

こういう感じのシーンがありました。

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ディック・バチェラー
ディック・バチェラー
2021年11月3日 6:45 PM

ワタシ、ニンジャ大好キデース!ダカラ、コノ映画、エンジョイ、シタヨネ!コノ映画独特ノ、日本ハ、素晴ラシク、現実ノ日本モ、コウダッタラ、イイノニ!思タネ。日本デ、ロケ、シテタノモ、イイネ!シブヤ、アサクサ、ドコカノ倉庫、謎ノ銭湯・・・ネオンギラギラ、フジヤマ、スカイツリー、ナドノ観光地メイン、ナノガ、邦画ト違ッテ、面白カタヨ。チョト『ブラックレイン』ポイ。サムペキ監督ノ『キラーエリート』ニモ忍者出テタケド、忍者ト侍、混同サレガチ。ナニガ原因カ?ワタシ、プレステゲーム『ブシドーブレード』思ウ。
トコロデ、一族ヲ抜ケル時、アンドリュー・小路ガ言ッテルコトハ、別ニ、間違ッテナイヨネ、ト思タヨ。組織ニ尽クシタ見返リヲ、要求スルノハ、当然ノコト。条件アワナケレバ、去ルノガ、正シイ。
ニシテモ、コノ映画、明ラカ、続編前提ノ、終ワリ方ダケド、メッチャコケタラシインダヨネ。続キアルカ心配ダヨ・・・