クソ映画『クソ野郎と美しき世界』のクソ感想

《推定睡眠時間:0分》

エンドロールに入ったら製作:新しい地図と出てきたのでなんか混乱してしまった。あれグループ名じゃなかったのプロダクション名なの? レーベル? みたいな。
お笑いコンビの怪人社が立ち上げた芸能プロダクション名がオフィス怪人社とかそういう感じなんだろうか。知らないけどたぶん違う気がするよ。

とりあえずグループ名として理解しておくが良い名前ですよね新しい地図。グループロゴも含めてアイロニカルな反ジャニ・アナグラムという背景には特に興味は惹かれないんですけど翻訳調っていうか、なんか日本のポップグループっぽくない名前じゃないすか日本語で名詞+形容詞の組み合わせ。しかも全然パっとしない感じの。イモい感じの。

それ面白いなぁと思ってて。イモいっていうことは洗練されてないってことだし、洗練されてないっていうことは特定の文化とか文脈に乗れてないってことで、特定の文化とか文脈に乗れてないってことはコンスタティブで、翻訳性が高いってことじゃないすか。
Mr.Childrenの和製英語的なニュアンスの面白さみたいのはたぶん日本語文化圏の外に持ってったら単に脱色されてしまうと思うんですけど、新しい地図は語のニュアンスとかっていうよりは単純に語のそのままの意味をメッセージとして打ち出してきてるので、こういうのは何語に変換してもあんま印象が変わらないですよね。

あの名前にはそういう意図があるんだろうなぁっていうのが映画の…映画っていうかなんかよくわからんのですけど『クソ野郎と美しき世界』の冒頭見て思ったことで。
なんかイメージビデオみたいになってて、例の新しい地図のロゴの刻印された服を身に纏った人種も国籍も様々な人たちが、色んな場所を歩く。すげぇざっくりした表現ですけどでもそういう感じなので…。
でテロップが出る。正確には再現できませんが、なんか「愛と自由を手に、さぁ歩きだそう」みたいな。まぁ、これもめちゃくちゃダセェんですけど。

でもこういう種類のダサさの持つ可能性に賭けたいよねっていうことなんだと思いましたね。グローバルなものっていうのは基本的にダサくて野暮ったくてセンスがないじゃないですか。
ジャニ的なパフォーマティブな、特定文化圏の中でしか生存できない洗練よりも、これからはダサい無国籍性でグローバルに勝負するぜってことでしょたぶん。
それが上手くいくかどうかはぶっちゃけどうでもいいんですけど、試みとしては面白いすよね。多少の政治的アジテーションも込みで(このアジテーションを特定の対象に紐付ける退屈は避けたい)

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内容。稲垣さん香取さん草なぎさんそれぞれ主演のオムニバス三話+新曲披露のコーダ。馬場ふみかが胸を揺らしながら突っ走る稲垣さん編は監督:園子温。香取さんが歌を食う謎少女に遭遇するファンタジーは作・山内ケンジ。太田光が『バカヤロー! 4』以来となる監督を務めたのはヤクザの草なぎさんが地図を捨てて腕を探す話。

なんかエピソード紹介のピントを相当だいぶ外している気もするが、まぁよいとする。明確な紹介文というのもひとつの地図である。そんな地図は捨てなさい。
ちなみに新曲披露の章はまた別の人(児玉裕一)が監督にクレジットされていたが、いかにも園子温ぽいカーニバル的世界だったという以上に園子温の近作に欠かせないエキストラのBUTCHさんが空気を読まずに画面にモヒカンを突き刺していたため園子温がやってんのかと思ってました。なんだ欠かせないエキストラって。

あれだなこれは、おもしろいとかおもしくないとかではないな。これ新しい地図のメンバー紹介とマニフェストだな。なんかよかったですよ、気楽にやってる感じで。
そんな別に、映画界に殴り込みかけるぜ! とか。元スマップがついに反撃に出るぜ! とか。そういう気負い全然ないすから。

なんならこの映画単体で金稼ごうとも思ってないよ。香取さん編で背景に人払いしきれなかった通行人が映り込んじゃって、その人が「うわ香取だ!」ってなってるカットそのまま使っちゃってるぐらいで。
気付いた助監督の指示でも受けてそっと物陰に隠れるまで克明に映し出されていたからな。それぐらいの温度の映画だよ。肩の荷ゼロ。風に吹かれたらどこかに飛んでいってしまいそうだ。
文脈が云々コンスタティブが云々と言っておいてあれですがまぁ、やっぱり色々あった人たちの映画なわけだから、その背景に照らし合わせればこの脱力気味の軽さもそれなりに味ってもんでしょう。飛んでいってしまえ。

面白かったエピソードですが香取さん編ですね俺は。お話がどうこうとかではないんですけど古舘寛治のおもしろ顔と中島セナのふしぎ顔が見れたので。
あと香取さんの鬱屈芝居よかったんですよやっぱり。言いたいこともあるんだけど正面から言えなくてブツブツ独りごつ感じね。上手いなぁ。上手いっていうか地っぽいなぁ。

スマップとの関連性を一番強く打ち出したのもこれで、気が晴れないから大声で大ヒット持ち歌を歌おうとした香取さんが歌を喰われて「せか…」で声が止まってしまう。
©マークがすべてを飲み込む押井守の『ビューティフル・ドリーマー』が如し一編であった。香取さんの描いた絵がたくさん出てくるのもよかったですね。それは事務所の持ち物じゃないわけだ。

【ママー!これ買ってー!】


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新しい地図を手に飛び出そうと言っているのにSMAP勢揃いムービーのリンクを臆面もなく張るアフィリエイターの鏡にして人間の屑。

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