【アマプラ】ドラマ感想『アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~』(シーズン1)

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《推定ながら見時間:わりとずっと分》

クリエイターのグレッグ・ダニエルズって誰よと思ったらマイク・ジャッジと一緒に『キング・オブ・ザ・ヒル』を作った人だそうで言われて納得の風刺SF、そう遠くない未来ではついに意識のデータ保存が可能になったので人は死んでも死ななくなった、肉体が壊れた人間は完全に壊れきる前に意識をハードドライブに落せばデジタル天国に即移行、何不自由もバグもたくさんあるが働くこともなく人間関係に煩わされることもなk…まぁそれもあるにはあるが、とにかく楽しいアフターライフを送れるのであった。契約容量次第ではね。

さてデジタル天国に急に送られてもどうしたらいいかわからないしなによりこれは慈善事業ではなく立派なビジネスですから天国住民には守護天使的な天国コンシェルジュが憑きます。この人がダブル主人公の一人ノラ。もうね、やる気なんかないですよ。どっかの金持ちが金に物言わせて天国ライフを謳歌してんのにこっちは汚い現実で税金と家賃と公共料金に追われ…いやそこまでは劇中では描かれていなかったが住んでる部屋も狭かったし金がないのは間違いない、毎日を生きるためにとっくに死んだ奴のお世話をしなければいけないのだから皮肉なもの、それはやる気だってなくなります。

そのノラにお世話をされるのがネイサンというデジタル人格、金持ちの女と付き合って革新的かもしれないアプリとか開発してリアルライフで前途有望な青年であったがポンコツ自動運転カーのせいで事故って肉死、意思確認もろくにされないまま金持ちの恋人によってデジタル天国に強制昇天されたのであった。それにしても最近の近未来ものに出てくる自動運転カーはよく壊れるナァ。このあいだの『アップグレード』っていうSF映画でもポンコツ自動運転カーのせいで主人公の人生が死んでいたので実に自動運転カーに乗りたくなくなる。ま、他人にハンドルを任せて自分は席で寝てるだけってんだったらタクシーも高速バスも同じなので自動運転カーだから危なそうだなんて旧世代バイアスに過ぎないんでしょうがね。AI差別! AI差別!

意識データはハードドライブにあるわけだからデジタル天国に長く居ればそのうち現実世界の技術が追いついて新肉体に意識をダウンロードし直せたりもするらしい。いわばデジタル天国とは仮想千年王国。景勝地のホテル型天国でゆるゆる楽ちん生活をエンジョイしていつかの再誕を待とうではないか! ヘイエンジェル! 飽きちゃったからなんかおもしろいことやれ! わかりました、ではおもしろいダンスを…守護天使のお仕事は大変だし、デジタル天国ライフもそれはそれで、大変。

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ぼくはもう脳が萎れてきているので長くて本格的なドラマというのは観れないのだがこのドラマが良かったのは初回などを除けば1エピソード概ね30分の短尺、内容的にもひじょうにシンプルというか良い意味でも悪い意味でもめちゃくちゃ直球なので頭を使わなくてたいへん気楽、スナック感覚で消費できるSFドラマというのは考えてみれば『ウエストワールド』みたいな本格派が主流の今では珍しい気もする。なんであれ珍しいというのは良いことだ。わかりやすいというのもまた同じ。

とにかくそのまんまなのである。何がと言えばたとえば、天国ではプランによって活動に制限が付くので一番安い2GBプランだとちょっと現世の人間と電話とかするだけで容量を使い切ってその月は活動が停止してしまう。そうなれば後はデジタルお墓参りに来た遺族とか友人とかが課金して1GBぐらい追加活動容量を買ってくれるのを待つばかりだ。2GBプランの天国ライフは悲惨なのでそのほかにも読める本が全部サンプル分の5ページまでしかないとかいうのもある。うう…つらい!

一方、容量無制限っぽい上位プランもそう楽しいことばかりではないのだった。なにせこのデジタル天国はまだまだ発展途上、大型アップデートを控えているとはいえフィールドが狭いからできることが限られているし、広告とかでは人で溢れかえっているように見えたがこれはあくまで「※画像はイメージです」、実際はサーバーが分れているのでかなり閑散としている上にわりと処理落ちしたりする。

なんか騙された気分でそこらへんをとりあえず散歩していると守護天使登場、○○のタコスは超ベリーなデリシャスでといきなりの口頭宣伝+ポップアップ購入ボタン、販売ノルマを達成できなければ評価に影響するし会社も広告収入に結構頼っているので向こうも必死である…ってなんだその世知辛い天国は! 全然天国じゃないだろ! 現実! それぼくたちが今生きてる現実! さすがマイク・ジャッジの共同作業者グレッグ・ダニエルズは風刺がダイレクトですね!

今の世をそのまま投影しただけのなんの捻りもない現代風刺の近未来像はSF的興奮なんか微塵も呼び起こさないが捻りがない分ありったけのアイデア投入、ウーバーのセックス版みたいなアプリでチンポ用の男を呼ぶとしきりに要求される5つ星評価、セックススーツを介した仮想セックスでデジタルチンポが勃たないとデジタルチンポに向かって女が叫ぶ「カスタマーサービス!」、子供の頃に死んだのでアバターは子供のままだがデジタル天国で実に十数年も過ごしているのでいい加減チン毛ぐらい生やしたいと思い悩む天国住人の…チンのネタばかりじゃないか!

いやいや、いま俺の頭に浮かんだのがたまたまチンネタばかりだったというだけで実際はチンネタばっかやってるわけじゃないので大丈夫。残ってた若い頃の綺麗な写真が白黒だったからデジタル天国でも白黒の女とか。安直なネタだなぁと思うが物量で勝負である。

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これこれのバカネタ下ネタ風刺ネタをマキビシの如くばらまきつつストーリー展開的にはノラとネイサンの切なプチ恋愛を軸にデジタル天国の人間模様、天国バグをどこからか見つけてきては「脱獄」を繰り返すハッカー気質の男、チン毛を生やしたいキッズ、よくわからん怪しげ大富豪、容量無制限プランの連中と違って豪華な部屋をあてがわれることもなく地下倉庫みたいなところに押し込まれた2GBプランの人々…等々を皮肉たっぷりに描きつつ、すごい暇な人が興味本位でネイサンの死の真相を探っていったり、アップロード時に何故か欠落してしまったらしいネイサンの記憶を回復させようとノラが奔走したり、そんな彼ら彼女らに陰謀らしきものの魔手が迫ったりする。

チンいやテンコ盛りの大忙し、言うまでもなくこんなアレコレ詰め込んで1エピソード30分×10回で終わるわけもなく、このシーズン1はストーリー面では登場人物紹介とか世界観の提示に留まる。諸々の謎とか登場人物の行方は全部シーズン2以降に持ち越しで、ユーモラスな風刺SFではあるが案外スケールのでかいドラマなのである。なんかモノホンの天国を信じて反デジタル天国活動を展開する宗教過激派(?)っぽいものの存在も仄めかされたりするしな。見てくれは冗談のようだが物語のコアは案外ハードというあたりはオルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』っぽいのかもしれない。

それにしても思うのはアメリカのSF映画/ドラマが最先端のものとして提示する未来像は神話であるとか天国のイメージをツギハギにしたものばかり。『ブレードランナー』はタイレル社の本社ビルがピラミッドみたいになっていたし『マトリックス』は作を重ねるごとに神話色が濃くなっていく、『ターミネーター』シリーズの背景を成すのは黙示録をメインにした聖書世界だし、『インターステラー』だってなにやら科学用語で理論武装をしているが煎じ詰めればあの世とこの世のお話であった。

アメリカのSF映画/ドラマは天国を描くし、その最先端の映像テクノロジーはカギ括弧付きの天国を造り出すためにあると言っても過言ではない。技術の発展で天国(※ユートピアではなく)を実現できると考えるのがプロテスタント国家アメリカ流なんじゃないだろうか。あのイノベーション信仰の根っこには肯定的な形であれ否定的な形であれ聖書のイメージが横たわっているんだなぁと思えば、『アップロード』、お気軽風刺SFに見えて案外アメリカの本質に迫ったドラマなのかもしれない。

※ちなみに一番おもしろかったところはアップロード/ダウンロード時に頭部が『スキャナーズ』みたいに爆発四散するところでした。爆笑。

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最近の映画で路線が近かったのはこれなんですがこれもやっぱ聖書の話になるわけですよ、最終的に。アメリカ人めっちゃ聖書好きだよな。

↓配信エピソード1のリンク


アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~ (字幕版)
アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~ (吹替版)

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