俺のドゥームズデイ映画『新感染半島 ファイナル・ステージ』

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《推定睡眠時間:0分》

4年も経てば色々あるので前作のゾンビパニックで韓国完全崩壊したらしいです。他の国には基本的に飛び火してない不思議。このゾンビウイルスなのかなんなのか知りませんがとにかくこのシリーズのゾンビ現象は『28日後…』タイプなので感染から発症までが爆速。新型コロナでわれわれ現生人類も死ぬ系のウイルスはすぐ発症しちゃうからむしろ広がらず地味に潜伏してたりする方が国境とか越えて広がりやすいからウイルス的には都合がいいとかそういうのを学びましたが前作も世界崩壊の序曲と見えて案外そうではなかったっぽいです。

だが韓国にゾンビを封じ込めたことで世界は助かったが韓国人は助からなかった。なんとか国外に逃げ延びた人はよかったが元韓国に取り残された人もたくさんおり、逃げ延びた人の方も難民として底辺生活を余儀なくされあいつも発症してるかもしれないから店になんか入れるんじゃないなどとゾンビ差別を受けているので結構悲惨である。というわけでそんな境遇に置かれた香港在住の元軍人主人公は香港黒社会の闇仕事を請け負う。国境封鎖された元韓国にこっそり侵入して死蔵状態の米ドルを持ってくれば金持ちじゃんというわけである。酷いシノギもあったものだ。

症状からすれば死者が蘇ったゾンビというよりは『28日後…』的ないわゆる「感染者」のように見える韓国ゾンビであったが4年経ってもまだまだ元気、元韓国は今も現役のゾンビ天国であった。とはいえ主人公はかつて全力ダッシュの韓国ゾンビと戦った元軍人、ドル奪取に同行した他のメンバーもなかなかの腕利きで、まぁ武器も一応支給されているしわりあいアッサリと目標のブツを発見する。だが彼らが発見したのは大量のドルだけではなかった。放棄された元韓国でゾンビをぶっ殺しながら終末王国を築き上げた同胞たちの変わり果てた姿がそこにはあったのである…。

この導入部からオタク監督ニール・マーシャルが持てる趣味のすべてを注ぎ込んだ終末闇鍋映画『ドゥームズデイ』を想起しない人間はいないだろう。いるとしても『ドゥームズデイ』信者なのでいないことにしなければならない。前作から続投の監督ヨン・サンホ、絶対に『ドゥームズデイ』を観ている。観て確実にチクショー! って思っているしウオー! とも思っている。俺だってやりたいでしょうが『ドゥームズデイ』みたいの! 『ニューヨーク1997』とか『28週後…』とか『死霊のえじき』とか『ランド・オブ・ザ・デッド』とか好きなやつ全部ぶち込んだの!

これはもう確実にそういう動機でシナリオが書かれているね。『ドゥームズデイ』のパンク食人族のボスはソルといったがこっちに出てくる『死霊のえじき』のローズ大尉みたいな風貌の悪役ボスはソ大尉というぐらいだからな!

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今回そういうやつなので現代ゾンビの父ジョージ・A・ロメロに倣った鋭利な社会風刺を基調にしつつもまさかのゾン泣き映画であった前作よりだいぶ偏差値が下がっていた。ゾンビ韓国で鍛えられた年端もいかない戦闘少女がギャンギャン車を駆って『ワールド・ウォーZ』ばりに群れるゾンビをD3パブリッシャーのアイディア一発ゲー『ゾンビVS救急車』の如く轢き殺していくところが序盤の見所と書けばそのボンクラ加減が伝わるだろう。今回そういうやつです。クールな戦闘少女にゾン勃ち! 勃つな。

でも絶対これでもまだ偏差値下がり足りないよな。ヨン・サンホはそれぐらいで満足する映画ボンクラではないですよ。あの元韓国取り残され組の基地とかな、あそこでやってる残虐ゲームのバカっぽい絵面からするとあそこもっと尺足してもっともっと世紀末な感じにしたかったんじゃないか本当は。舞台はボンクラですけどトータルで見れば前作踏襲のゾン泣きイイ話にはなっているのでバランス取れてるんですよね。『ドゥームズデイ』はバランスを取るつもりなんかそもそもなかったからな…そこが人によっては美点だろうし、また別の人にとっては歯がゆいところなんじゃないかと思った。

ロメロに始まるアポカリプス系のゾンビ映画というのは移動手段の確保がひとまずの物語上の目標になるし、極論アポカリプス系ゾンビ映画は乗り物についての映画だとさえ言える。で前作『新感染』は原題が『釜山行き』の意というぐらいだから乗り物のお話だったわけですが、ゾンビ映画にとっての乗り物とは何か…という批評性があってこれはすごいなと目から鱗。

『新感染半島』の方はゾンビ映画としてそこまでの批評性は感じないが『ゾンビ』の有名なシーンがヒューマニスティックな解釈で引用されており、とにかくヨン・サンホがロメロとか大好きすぎることはよくよくわかったが、安パイといえば安パイと言えなくもないし、作家的にというより興行的にそれぐらいの作りが限界だったんだろうという気もする。

それぐらいの作りといったところでカーアクションもガンアクションもボンクラの拘りを感じる超本格派でめちゃくちゃ面白いゾンビ映画には違いないので観ている間はテンション爆上がりだったわけですが。ゾンビを使ったカーチェイスとか斬新。アドトラでゾンビの気を引くの最高。まーたあーいまーしょう~の電飾マンも大好き。群体ゾンビはもっと出番欲しかったよね~。

偏差値が下がったからお話はシリアスでもユーモアが増していて、そのへんヨン・サンホが前作と今作の間に撮ってNetflixで配信されたコメディ調のSFアクション『サイコキネシス -念力-』を思わせるところですが、まぁ、しかし、こう間口が広く面白いと(本当は観客の目とリアリティを度外視して『マッドマックス 怒りのデス・ロード』っぽいバカかっこいい改造車とか作りたかったんじゃないだろうか…)とか、あるいは逆に(本当はもっと『死霊のえじき』っぽい緊迫感のある密室人間模様をやりたかったんじゃないだろうか…)みたいなことを思ってしまうので、映画というのは難しいものです。

なにも監督本人だって嫌々やっているわけでもないだろうがやっぱ泣きがあった方が売れるっていうお金を出す人あつめる人の判断は続編を作るに当たってあったんだろうし、それで損なわれたものもあったんじゃないだろうか。ゾン泣きの呪縛に屈せずがんばれ、ヨン・サンホ。在韓ゾンビがみんな寿命で死んで世界中に散らばった難民韓国人たちが韓国に再入植するも一人の生き残りゾンビが発見されたことから新韓国が崩壊する続編も期待してるからなっ!(そりゃ『28週後…』だ)

【ママー!これ買ってー!】


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『ドゥームズデイ』だって泣きを入れてればもう少し売れたかもしれないのにな。そういう問題ではないか。ないな。

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