格闘大戦争映画『トリプル・スレット』感想文

《推定睡眠時間:0分》

大興奮。出演俳優の名前だけでこんなに胸が躍った映画は『エクスペンダブルズ』以来かもしれない。アジア版『エクスペンダブルズ』じゃないですかこんなの。トニー・ジャー、イコ・ウワイス、タイガー・チェン、ジージャー・ヤーニンにアメリカ勢マイケル・ジェイ・ホワイト、マイケル・ビスピン、そしてスコット・アドキンス!

ひとりだけ知らない人が混ざっているがタイガーだしチェンだし絶対強いに決まっているよな。なんかスタントマン出身の人らしいですタイガー・チェン。スタントに加えてカンフー振り付けとかもやるらしく『マトリックス』にも参加。その縁でキアヌ・リーブスが監督したカンフー映画『ファイティング・タイガー』で主演張ったりしている。キアヌ・リーブス監督してたのかよ! まぁ、それはどうでもいいとして。

お話。トニー・ジャーとタイガー・チェンは地下格闘技で飯を食う捨て犬コンビ。詳しい事情は知らないがどこかの特殊部隊が作戦遂行に当たって現地ナビゲーターが必要だっていうんでスカウトされた(元々特殊部隊の人だったのかもしれないがそこらへんはざっくりしてるのでなんかよくわからない)

部隊が辿り着いた先はジャングルの奥地にひっそり建てられたMI6だかの収容所。そこには事情がよくわからないがイコ・ウワイスも恋人と一緒に居合わせていた。作戦開始。無情なる特殊部隊によって収容所は戦場と化し、ウワイスの恋人はなにかセリフを言おうとしたら眉間に流れ弾を食らって死亡。怒りに燃えるウワイスはとりあえず目に入ったジャーをぶっ殺しに行く。肉体こそが俺たちの言葉。それ以外はなにもいらない!

一方そのころチェンは異変に気付いていた。どうもこの部隊はおかしい。呼ばせた収容所(そもそも収容所なのかもよくわからない)のボスを捕縛するのかと思ったら即撃ち殺していたし作戦前には捕虜を解放するようなことを言っていたが助けるのはMI6の人(かどうかもよくわからない)が思想犯だぞ! と警告するヒゲモジャのスコット・アドキンスだけ。ほかに収容されている連中は助けないで爆破装置を仕掛けてしまう。

ジャーとウワイスの東南アジア最強決定戦はグレネード・ランチャーをメイン・ウェポンとする部隊の紅一点ジージャー・ヤーニンの横槍で中断、ウワイスはどっかに逃げてジャーとチェンはアドキンスの入ってた臭い房に入れられてしまう。

爆発まであとたぶん1分ぐらい。これで証拠は残らないと自信満々に去って行く部隊だったが房に入って5秒でジャーとチェン外に出てきてしまって収容された他の連中を全員救出して無事逃げ出したしウワイスも爆発時にちょっと爆風浴びる程度の被害しか受けてなかったのでむしろ証拠しか残っていなかった。否、証拠と復讐心であった。

それから舞台はガラリと変わってタイのスラムみたいなところでなんかよくわからないお金持ちの慈善家とかその父親のよくわからないが偉そうな人とか最後まで正体がよくわからない黒幕の女とかが出てきていろいろよくわからない展開になっていくわけですがそんなストーリーなどぶっちゃけどうでもよい。

アクション。とにかくもう怒濤のアクションの連続。格闘超人そろい踏み映画であるからして拳ファイトがお腹いっぱい用意されているのは当然のこと、アドキンス率いる実は特殊部隊ではなかった最強傭兵軍団(ジージャー・ヤーニン、マイケル・ジェイ・ホワイト、マイケル・ビスピン、ドミニク・ヴァンデンバーグ)が白昼の市庁舎や警察署で堂々マンケル・マンもかくやの大銃撃戦を始めてしまったりするので尋常ではない。

この銃撃戦はすごい。すごい火薬量とすごい死傷者数。とくに弾着周りが素晴らしかったですね血の飛び方とかショットガン浴びた時の吹っ飛び方とか。アドキンス傭兵軍団の目的は慈善家暗殺なのでそんな派手にやる必要はまったくないし警察署に至ってはアドキンスの現場判断でついでに壊滅させていた(そして依頼主からちょっと怒られていた)のでその破壊の無意味さというのがまたすごい。意味はなくても銃撃戦。正しいにも程があるだろうアクション映画として。

っていうか基本的にアクションにストーリー的な必然性が全然ない映画でしたね。アドキンス傭兵軍団もジャー&チェンも銃持ってるのにたとえモブ相手でも一対一になるとみんな礼儀正しく銃を捨てて各々の得意な技斗を披露してくれる。なんて優しさと思いやりに満ちた世界! あくまでアクション映画的にではあるが!

それ当たってるじゃねぇか死ぬだろと毎回思うジャーの飛び膝蹴り。ウワイスのぬるぬるシラット。チェンのさすがスタントマン兼カンフー振付師という感じの正確でブレのない演武的な美カンフー。大いに眼福。
おもしろいのはこれそれぞれのアクションの型がキャラクターの性格になってるんですよね。ジャーは烈火の如く、ウワイスは何を考えているのかどう出るのかわからない、チェンは生真面目で堅実。

その意味ではアクションこそがストーリーと言えるし、そこをとにかく徹底的に見せるからカンボジアの未舗装路みたいに穴でボコボコのシナリオのくせになんだかちゃんとしたイイ話に感じられてしまう『トリプル・スレット』なのだ。そのアクションへの信頼は感動的でさえある。

出自も目指すところも異なるジャー、チェン、ウワイスがラジオから流れてくる音質の悪い昭和歌謡をバックに桃園の誓いを立てる場面に泣き、迷彩フェイスペイントから性悪クソ眼を覗かせるダークサイド落ちジージャー・ヤーニンがサディスティックにグレネードランチャーをぶっ放しまくる姿に萌え、待ってましたのジャーVSアドキンス戦での見事な足技の応酬に大興奮、恋人の復讐を心に誓っているわりにはせこい立ち回りばかりしている明らかに信用できないウワイスの漫画でよくある定番のあいつあっち逃げたぞ発言を真に受けるアドキンスには大失笑。

完璧。文句なし。100点花丸金一封。俺がアクション映画に求めるものの99.9%はここにあった。今年観たアクション映画で超ダントツでいちばんおもしろかったですね。シナリオの適当さもダントツだけどね!

追記:あとジージャーの最後が壮絶。

【ママー!これ買ってー!】


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アクションスタァ勢揃いのオールスター映画とはいえスタァの高齢者比率が高いので技斗少なめ銃撃決着多しな『エクスペンダブルズ2』に比べれば『トリプル・スレット』はみんな若いのでみんな自らの肉体で相手を殺す。その点においては超えたな『トリプル・スレット』、映画史上の傑作『エクスペンダブルズ2』を。
『エクスペンダブルズ2』で敬愛するヴァン・ダムを失ったアドキンスの映画を超えたリベンジマッチとしてスピンオフ的に見れるあたりもポイント高し。

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