邪道感想『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』

投稿日: カテゴリー 居眠り映画館タグ , , ,

《推定睡眠時間:0分》

ハリポ外伝とはいえ前作はまだ魔法ワールド初学者もついていきやすい間口の広い映画だった気がするが続編になったら急に狭い、あと癖がつよい。
その前作の方も大筋を忘れてしまっているのでロンドンの魔法霧の中ですっかり迷子になってしまったが、霧の向こうにチラ見えしたデヴィッド・サクライが灯台に。

デヴィッド・サクライといえば不思議ハンガリー映画『リザとキツネと恋する死者たち』で昭和歌謡を歌わない亡霊昭和歌謡歌手トミー谷を演じた人であった。
その亡霊昭和歌謡歌手がまずなんなんだという癖の強い映画で俺はこれ好きなんですが、物語の下地になっているのは日本の九尾の狐伝承ということで…なにもその神話動物・妖怪繋がりで起用されたわけでもないでしょうが、そういうわけで俺にとってはデヴィッド・サクライが馴染みのない魔法ワールドとのかすがいになったのだった。

九尾の狐は出ないけど河童出るしな河童。魔法動物がメイン出し物の見世物小屋の興行主が奴隷的下働きに「お前は河童に水をやっけてろ!」って言ってたから(何かヤバイ行為の隠喩かな…)と思ったら河童に水やってた、下働き。
その見世物小屋に映画の中ではズーウーと呼ばれる中国の神獣も囚われていた。ウィキを開くとこれは発音的にはスウグとかゾウユゥが近いらしく、漢字で書くと騶虞という大変難しくまた強そうな感じになるが、衝撃、なんと騶虞=ジャイアントパンダ説もあるらしい…。

あれだけ遠くに感じた魔法世界、急に距離が縮まって電車で行けるぐらいの身近さになってしまった。たぶん上野公園でカッパもパンダもどっちも見れる。不忍池の蓮をかき分けて探せばカッパの一匹や二匹ぐらい見つかるだろう。なんなら蓮の葉かと思ったら皿だったみたいな可能性もある。
これもすべてデヴィッド・サクライさんのおかげです。ありがとうデヴィッド・サクライ。ちなみにデヴィッド・サクライは超端役出演なので以上のことはあまり真に受けないように。

で、ですよ。俺としてはタイトルがタイトルだし妖怪とか神獣込みのファンタスティックな魔法ビーストがたくさん見れる楽しい映画のつもりで観に行ったんですが、お話はガッツリとハリポの延長、映画の主軸もそこに置かれていたので俺の期待した動物万歳映画では実はまったく全然なかった。
前作で記憶が消去されたはずのジェイコブさん(ダン・フォグラー)もひょっこり再登板しているのでじゃあ前作はなんだったんだみたいな感じになるが、それさえ比較的どうでもよい客寄せパンダ的扱い。

それはそれで楽しんだものの、あぁそういう映画だったのか…とはめちゃくちゃ思った。外伝とかスピンオフっていうかこれ完全にハリポの前日譚すね。

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動物よりも物語を見せる映画ということで事前知識まるでなしの前日譚鑑賞っていうのを差っ引いてもかなり込み入ったシナリオになっていたように思う。
登場人物やたら多い。やたら多い登場人物のそれぞれの過去と現在を並走させて描く。それに加えてニューヨーク、ロンドン、パリ、及びその人間世界と魔法世界と…てな具合でシーン毎の場所移動が激しいので動物目当ての子供なんかたぶん置いてけぼりである(だいたいラスト30分ぐらいは動物なんてろくに出てこない)

第一次世界大戦後の戦間期という時代設定は前日譚なのでハリポから逆算しての必然だとしても、前作ではレトロな風情の演出ぐらいな効果しかなかった気がするが、今回はシナリオを補強する重要パーツとして背景にしっかり組み込まれた。
ハリポ知らん勢にこれらがどう見えるかというとなんかハードボイルド・ミステリーっていうかレイモンド・チャンドラーのあの暗い、乾いた、錯綜する人間関係の間に諦観が充満する物語世界に見えた。

魔法動物よりもチャンドラー風のハードボイルドというものに作り手の関心は向いてたんである、と、である口調で断言したくなってしまうのは悪の魔法使いグリンデルバルド(ジョニー・デップ)の風貌が、性格が、行動が、そして演技が、いやこれは誰が見てもそう言うと思うが完全に『ブレードランナー』の逃走レプリカント、ロイ・バッティだったからで、バッティを追う主人公デッカードは“未来のフィリップ・マーロウ”として造形されたんであった。

『ブレードランナー』フォロワーやオマージュは枚挙に暇がないがこんなところで遭遇するとは思わなんだ。
ジョニー・デップのバッティ仕草ときたらパーフェクトで所々ルトガー・ハウアー本人にしか見えず、それがハリポシリーズの見方として良いことなのか悪いことなのかは置いておくとして、やっぱなんだかとてもニヤニヤしてしまう。

そういえば『ブレードランナー』原作の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』も動物のお話だよなぁ…それは妄想的牽強付会だが、原作の方のロイ・バッティの目論みはグリンデルバルドと同じように人間界の転覆なので、原作まで遡っての本気のバッティ感というのを確かにあのジョニー・デップは纏ってたんである。
纏ってたからなんなのか、と言われたらまぁ、ぼくブレラン好きなのでとしか言葉を返せませんが…。

2D吹き替えで鑑賞。3D前提の画作りは2Dで見ると実に奇っ怪、冒頭の魔法板『駅馬車』なアクションシーンはカッコいいが何が起っているんだかまるでわからないし、いくつかケネス・アンガーの前衛映画と見紛うばかりのショットがあり、逆に面白かったかもしれない。
エディ・レッドメインのスキャマンダー先生は浮世離れしたニヒルな雰囲気を漂わせて、これもチャンドラー的ハードボイルドの興趣を映画に与えていてよかった。

【ママー!これ買ってー!】


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本当に超バッティなんだって、ファンタビのジョニー・デップ。

↓こんなに癖が強くない前作


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