ロシア思弁SF映画『アンチグラビティ』感想文
せっかくのゲーム的設定があまり活かされないのはもったいないなぁと思うがまぁ、ロシアな異世界を味わう映画ということで。わりと面白かったです。
アンチ・シネフィルなゆるふわ系にわか映画ブログ。
せっかくのゲーム的設定があまり活かされないのはもったいないなぁと思うがまぁ、ロシアな異世界を味わう映画ということで。わりと面白かったです。
これ、映画館で観てたらどう感じてただろうか。家で観てもこれだけサプライズがあったのだから映画館で観たらもっとビッグサプライズになっていたのだろうか。驚きの大モザイク祭り映画。
も~うアシッド。最初から最後まで全トリップ。バッド多め。虫は出るわ内蔵は出るわ肉体は変容するわでもうね、とにかく、超ニューエイジな西海岸アニメでした。
奇才ホドロフスキーの精神分析療法ドキュメンタリー。これを観るとホドロフスキーの映画に出てくる様々な暗喩や象徴的行為の含意がするする読み解けるので、いかにも怪しげな臭いがしますがむしろホドロフスキー映画の入門編としても観れる。
女性主人公の変形西部劇構造はコーエン兄弟の『トゥルー・グリット』、アボリジニの青年とのロードムービー的な側面は『WALKABOUT 美しき冒険旅行』、と言っている人がいてなるほどと思ったが、俺としてはそれに加えて「最初っから特別完全版の『地獄の黙示録』」と言いたい。
短い中にもショウビズ業界の裏表、ハリウッドの功罪、くるくる変わるスタアと観客の関係、そこにある一抹の救いを描き切って、ラストは慎ましくも荘厳にハリウッドに殺された大女優ジュディ・ガーランドを追悼。実にすばらしい『スタア臨終』映画でしたね。
泣いたよ。上映中何回も泣いた。泣き笑いだけれども既にぐしょぐしょの手で拭うその涙はあたたかかった。
ジャンクアートな美術も力強い色使いも素晴らしいしノイジーで繊細なサウンドトラックだって素晴らしい。あぁ、映画はこれでいいんだ。これが映画なんだ。なんでもないシーンでも泣いてしまうよ、こういう映画は。
島根の刑務所にカメラが入った…と聞けば中島貞夫×松方弘樹の『暴動島根刑務所』が否応なしにも頭に浮かんでしまうわけですが全然そんなんじゃなかったです。メンタルヘルス系の人間再生ドキュメントでした。
ギリアム死ぬのかなって思ったよ。でもこれが遺作なら文句ない。たしかにつらかった。物語の結末は極めてビターに見える。けれども本質は違うと思った。あれはドン・キホーテを演じドン・キホーテとして笑われながら生を終えることを決意したギリアムの生涯逃走宣言で、ギリアムの逃走のススメなのだ。すばらしいね。