世界は悲惨でいっぱい映画『ナイチンゲール』感想文
女性主人公の変形西部劇構造はコーエン兄弟の『トゥルー・グリット』、アボリジニの青年とのロードムービー的な側面は『WALKABOUT 美しき冒険旅行』、と言っている人がいてなるほどと思ったが、俺としてはそれに加えて「最初っから特別完全版の『地獄の黙示録』」と言いたい。
アンチ・シネフィルなゆるふわ系にわか映画ブログ。
女性主人公の変形西部劇構造はコーエン兄弟の『トゥルー・グリット』、アボリジニの青年とのロードムービー的な側面は『WALKABOUT 美しき冒険旅行』、と言っている人がいてなるほどと思ったが、俺としてはそれに加えて「最初っから特別完全版の『地獄の黙示録』」と言いたい。
ヒーロー映画的な面白さとしては普通、とにかく普通としか言いようがないのだが、面白さとは別に好感を抱くポイントが多い映画でした。
ロバート・B・パーカーの探偵スペンサーもの(原作者はエース・アトキンス)の映画化。へぇこれがあのフィリップ・マーロウとかと並ぶとか並ばないとかいうハードボイルド・スタアのスペンサー。ブックオフの海外文庫コーナーに行けばどの店舗にも必ず何冊かは置いてあるが今まで読んだことはなかったからこれがスペンサー初体験になってしまった。
CGワンちゃんのバーナードくん、中に人間が入っているようかのように動くのでハリソン・フォードの出演を念頭に置いて観るとハン・ソロとチューバッカの出会いをチューバッカ目線から描いたスターウォーズの外伝に思えてしまう。
目に光のない窪田正孝、こんなところにハマるとは思わなかったベッキーがハマり役、歌舞伎町をダッシュするブリーフ一丁マン、どこか気の抜けたシナリオが逆に味、後半の乱戦は少しだけ『殺し屋1』風味で、慎ましくもうつくしいラストは三池の歌舞伎町映画らしからぬハッピーエンド。良い映画だった。
観たこともないような光景を見せてくれるのも映画の醍醐味かもしれないが、観たことしかないような光景を見せてくれるのもまた映画の醍醐味だ。こういうのが観たかった。映画館ならよくできた佳作、午後のロードショーなら傑作なニコケイ映画。
金曜の仕事帰りに観たのになんと118分のあいだ一睡もできませんでした。そんなに面白いわけじゃないのに寝かせない! そのへん、微妙にして絶妙な仕事帰りムービーでしたね。
走ることはあらゆるアクションの基礎であるとか言ったり言わなかったりするが、人が走るだけでこんなに胸が躍ったのは久しぶりだし、カメラが切り取る世界をただ眺めているだけで感情が持って行かれてしまう戦争映画というのも久しぶり。傑作だと思うなこれは。
火薬量はまったくまったく物足りないが映像はかっこいいし安易な人死にには笑わされるしローレンスには和まされる、そしてスミスの若作りに泣かされたりもするたのしい映画だった。
もうちょっと整理してほしかった。2030年の近未来日本を舞台にしたAIサスペンス巨編、無理でしょハリウッドじゃないんだし。でもそれだったら撮れないところはすっぱり諦めて撮れるところだけSFビジュアルとかSF設定をちゃんと作り込んだら良かったんじゃないですかね。そうしてたら多少は見れたと思う。